ナスダックは連日で最高値更新も不安定な株高の土台、次の焦点は米CPI
S&P500種株価指数とナスダックは先週、連日で最高値を更新する展開となった。9月の利下げ期待が高まる状況を考えるならば、今週の米国株も上値トライを意識する展開が予想される。しかし、今の株高は一部の銘柄に依存した不安定な状況にある。今週11日の米消費者物価指数(CPI)次第では、下落リスクに直面する可能性があろう。ナスダック100、今週の見通しは?注目のチャート水準は?
この記事のポイント
・S&P500とナスダック先週、連日で最高値を更新した
・主力株と米長期金利の低下が、今の米株高を支えている
・今週もナスダック100は、上値のトライを意識する状況が続くだろう
・だが今の株高は一部の主力株に依存しており、米CPI次第では下落相場を警戒したい
ナスダック100、今週の見通し
連日で最高値を更新
多くの機関投資家が運用のベンチマークとしているS&P500種株価指数(SPX、以下SP500指数)は、連日で最高値を更新する状況にある。ハイテク株のトレンドを示すナスダック100(NDX)も同じ状況にある。
2つの株価指数に共通しているのが、半導体大手エヌビディア(NVDA)を除いた他のマグニフィセント「6」の買いである。
先週はテスラ(TSLA)の27%上昇を筆頭に、アルファベット(GOOGL)以外の主力株がナスダック100のパフォーマンスを上回った。そのアルファベットもSP500指数の上昇率を上回った。
マグニフィセントセブンと米株価指数の動向:先週の騰落率(7月1日~5日)
ナスダック100、注目の上値水準
上のパフォーマンスチャートが示唆するとおり、SP500指数(SPX)よりもナスダック100(NDX)の方がマグニフィセントセブンの影響を受けやすい。
そのナスダック100は現在、節目の20,000ポイントを維持している。日足のMACDはゴールデンクロスへ転じ、かつ上昇基調にある(日足チャート、緑矢印を参照)。RSIは買われ過ぎの水準まで到達しているがMACDと同じくゴールデンクロスの状況にあり、ともに地合いの強さを示唆している(日足チャート、赤矢印を参照)。
これらテクニカルの動向に加えて、米債市場で10年債利回り(長期金利)が再び低下基調へ転じていることも考えるならば、今週のナスダック100も上値トライを意識する展開が予想される。
目先の焦点は、IG米国株レポートで何度も取り上げているフィボナッチ・エクステンション161.8%の水準「20,558」レベルのトライおよびブレイクアウトとなろう(日足チャートを参照)。
ナスダック100のチャート:日足 今年1月以降
出所:TradingView
ナスダック100が20,558をトライするシグナルとして、2つの上値水準の攻防に注目したい。ひとつは、先週5日の高値20,407である。この水準を上方ブレイクすれば、次の焦点はフィボナッチ・エクステンション161.8%の水準「20,459」の攻防となろう(下の1時間足チャートを参照)。
ナスダック100が20,459をも上方ブレイクすれば、20,558のトライを意識する展開を予想する。
ナスダック100のチャート:1時間足 6月以降
出所:TradingView
20,000ポイントの維持
日足と1時間足のRSIはともに買われ過ぎの推移で推移している。1時間足のストキャスティクスも短期的な相場の過熱感を示唆している(上の1時間足チャートを参照)。これらオシレーター指標がデッドクロスへ転じ、かつそれぞれの指標が買われ過ぎの水準を下抜ける場合は、ナスダック100(NDX)の反落シグナルと想定したい。
ナスダック100が下値をトライする局面では、節目の20,000ポイントの維持が焦点となろう。この水準を目指すシグナルとして、目先は直近高安のフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準「20,210」と38.2%の水準「20,089」の攻防に注目したい(上の1時間足チャートを参照)。
後者の38.2%水準を難なく下方ブレイクする場合は、6月28日の高値20,017ポイントの攻防が焦点として浮上しよう。この水準がサポートラインへ転換する場合は、20,000ポイントの維持を意味する。このケースでは、地合いの強さを市場参加者に印象付けよう。
逆にナスダック100が20,017ポイントを完全に下方ブレイクする場合は20,000ポイントの下方ブレイク、そして10日線まで下落幅が拡大する展開を警戒したい(上の日足チャート、青ラインを参照)。
ナスダック100、注目のチャート水準
レジスタンスの水準
・20,558:フィボナッチ・エクステンション161.8%(日足)
・20,459:フィボナッチ・エクステンション161.8%(1時間足)
・20,407:7月5日高値
サポートの水準
・20,210:フィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準(1時間足)
・20,089:フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準(1時間足)
・20,017:6月28日高値
・20,000:節目の水準
・19,850:10日線(7/5時点)
米金利の動向にも注目
マグニフィセント「6」の買いの他に、今の米株高を支えているもう一つの要因が、アメリカ10年債利回り(以下では米金利)低下である。
7月以降の動きを確認すると、米金利は4.5%手前まで上昇した後、再び低下基調へ転じている。注目すべきは7月3日以降、米金利の低下幅が拡大していることである(下の1時間足チャート、黒矢印を参照)。
今月3日に発表された6月のADP雇用統計とISM非製造業景気指数はともに市場予想を下回った。特に後者のISM非製造業景気指数は48.8と前月の53.8から低下し、景気判断の分かれ目である「50」を下回った。そして5日の6月雇用統計では、4月と5月の非農業部門雇用者数が下方修正された(合計で11万1000人の下方修正)。さらに失業率は4.1%まで上昇した。
これら重要指標でさえない内容が確認された後に米金利が低下基調へ転じる一方、米株高が進行した状況を考えるならば、今週以降もさえない経済指標が続けば、短期的な株高の要因となろう。
アメリカ10年債利回りのチャート:1時間足 6月28日以降
出所:TradingView
不安定な株高の土台
しかし、今の米株高の土台は不安定な状況にある。上昇した株数から下落した株数を差し引いた状況を確認すると、先週はSP500指数(SPX)で22銘柄の売り越しとなった。ナスダック市場では96銘柄の売り越しとなった。
この状況と上で述べたエヌビディア以外のマグニフィセント「6」の上昇を照らし合わせると、現在の株高はごく一部の銘柄の買いに依存していることが分かる。
ゆえに米金利の急反発など、アメリカの株式市場に対する何らかのネガティブなイベントが発生すれば、ナスダック100(NDX)は下落リスクに直面することが予想される。
上昇株数と下落株数の差分:週間ベース 年初来
焦点は米消費者物価指数(CPI)
今週、米金利が低下のトレンドを維持するのかどうか?この点を見極めるうえで、重要となるのが11日に発表される6月の消費者物価指数(CPI)となろう。注目はコア指数の動向である。現時点での市場予想は、前月比と前年同月比でともに5月から横ばいの見通しにある(下のチャートを参照)。
コア指数だけでなく、FRBが注視する「スーパーコア」のインフレ率(住居費を除いたサービス価格)でもインフレの粘着性が示される場合は、米金利に再び上昇の圧力が高まることが予想される。このケースでは、上で述べた米国株の下落相場を警戒したい。ナスダック100(NDX)は20,000ポイントの維持が焦点となろう。
現在、短期金融市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が9月と12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを行う可能性を意識する状況にある。6月CPIのコア指数とスーパーコアでインフレが鈍化の傾向にあることが確認される場合は、年2回の利下げに対する思惑がより強まることで米金利の低下が予想される。
インフレ鈍化による米金利の低下は、米国株の下支え要因となろう。。このケースでのナスダック100は、20,558レベルをトライそしてブレイクアウトの展開を想定しておきたい。
アメリカ消費者物価指数(CPI)の動向:23年6月以降
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