調整の米ドル売り インフレリスクを意識する米債市場 / ドル円の注目ポイントについて
外為市場では米ドル売り優勢の状況が続いている。ユーロとポンドは対米ドルで上昇。それぞれテクニカルポイントのトライが焦点となっている。一方、米債市場では金利が上昇基調を維持している。米金利の動きを考えるならば、現在の米ドル売りは「調整売り」と想定しておきたい。ドル円の焦点は?目先のチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
調整の米ドル売り インフレリスクを意識する米債市場
【サマリー】
・7日の外為市場では10月雇用統計後の米ドル売りが続く展開に
・ユーロとポンドが対米ドルで上昇 ポンドドルはレジスタンスの1.1620台が再び視野に
・米債市場ではインフレリスクを意識する動きが見られる
・米金利の動向を考えるならば、今の米ドル売りは「調整売り」と想定しておきたい
・ドル円のチャートポイントについて
・米ドル売りにサポートされユーロとポンドが上昇
7日の外為市場は、10月米雇用統計後の米ドル売りが続いた。
この日は株高も米ドル売りの要因(リスク性の高い新興国通貨の買い要因)となった。米ドル相場のトレンドを示すドルインデックス(DXY)は、昨日のレポートで指摘したサポートラインまたは100日MA(108.88レベル)を目指すムードが高まっている。
ドルインデックスのチャート
米ドル売りにサポートされ7日の外為市場ではユーロとポンドが上昇した(対米ドル)。
この日発表された9月のユーロ圏鉱工業生産が予想以上となり、センティックス投資家信頼感も-30.9と前回の-38.3から改善した。米ドル安と良好な経済指標の内容がユーロ買い要因となり、ユーロドル(EURUSD)はパリティ水準(1.0)の突破に成功。高値1.0034レベルまで上昇した。
テクニカルの面では、100日MA(1.0040レベル)が意識される展開となった。今日も米ドル安が続く場合、ユーロドルは100日MAを突破し、10月下旬にレジスタンスポイントとして意識された半値戻し1.0075レベルのトライおよびブレイクが焦点として浮上しよう。このテクニカルポイントのブレイクにも成功する場合は、1.01台の攻防へシフトすることが予想される。
ユーロドルのチャート
一方、ポンドドル(GBPUSD)も米ドル売りにサポートされ高値1.1541レベルまで上昇し、レジスタンスポイント(フィボナッチ・リトレースメント61.8%)の1.1625レベルを目指すムードが高まっている。
ポンドドルがこのレジスタンスポイントの突破に成功する場合、次はサポートからレジスタンスへの転換が確認されている1.1750レベルのトライおよびブレイクが焦点として浮上しよう。
なお今日現在、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準には89日MA(1.1623レベル)が推移している。これらテクニカルポイント(半値戻しと89日MA)が意識され、ポンドドルが1.1620台の突破に失敗する場合は、反落リスクを警戒したい。
ポンドドルのチャート
・米債市場はインフレリスクを意識する動き
7日の米債市場では利回りが上昇した。米金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りとドル円(USDJPY)のトレンドに影響を与えている5年債利回りは小幅に反発。
一方、10年債利回り(長期金利)は続伸基調を維持し、4.2%台の水準へ再び乗せてきた。この長期金利の動きはインフレリスク、具体的には今週10日に発表される10月消費者物価指数(CPI)の上振れリスクを意識した動きと捉えることができる。
この点は、短期金融市場でも意識されている。政策金利(FFレート)の予想推移を確認すると、ターミナルレートの水準が11月の連邦公開市場委員会(FOMC)後のそれとほとんど変わっていない。
米国 政策金利の予想推移
また、12月FOMCの利上げ予想についても、50ベーシスポイント(Bps)と75bpsで割れている。
先週4日の米雇用統計後、米金利には低下の圧力が強まった。しかし10月米CPIが米債市場の参加者にインフレリスクを意識させる結果となれば、米金利の上昇または高止まりのトレンドが続くだろう。ゆえに現在の米ドル売りは、重要イベント前の「調整売り」と想定しておきたい。
12月FOMCの利上げ予想
ドル円の焦点とチャートポイント
・上昇局面でのチャートポイント
米ドル売りに圧され、7日のドル円(USDJPY)は戻り売りの展開となった。
先週3日以降の動きを確認すると、147.60レベルがサポートからレジスタンスへ転換するムードが見られる。よって、ドル円の反発局面では、まずこの水準(147.60レベル)のトライおよびブレイクが焦点となろう。昨日の欧州タイム以降、相場の戻りを止めている146.80レベルの突破は147.60トライのシグナルと想定しておきたい。
ドル円が147.60レベルを完全に突破する場合は、148円台への上昇が次の焦点となろう。148.00レベルで反落する可能性はあるが、3日の欧州タイムから4日の東京時間にかけての動きを考えるならば、148.40レベルの方がレジスタンスとして意識される可能性が高い。
上で述べたとおり米金利は上昇基調を維持している。この動きにサポートされドル円が上昇する局面では、上で述べたレジスタンスポイントをトライする可能性があろう。だが、市場参加者の関心は10月米CPIに集中している。この状況を考えるならば、ドル円が反発しても米CPIの発表までは148.40レベルまでの上昇が限界となる可能性がある。
・下落局面でのチャートポイント
一方、ドル円(USDJPY)の下落局面で注目しておきたいチャートポイントは、146.10レベルである。昨日はこの水準で相場がサポートされた。また、先週のFOMC(パウエル会見)で下振れた際も相場をサポートする局面が見られた。
ドル円が146.10レベルを完全に下方ブレイクする場合は、145円台へ反落するシグナルと想定しておきたい。このケースでは、先週のパウエル会見で下振れた際に付けた安値145.67レベルのトライおよびブレイクが焦点となろう。
この水準をも下抜ける場合は、このレポートで何度か指摘している145.00レベルを視野に下落幅の拡大を想定しておきたい。
ドル円のチャート
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