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豪ドル、一時急落 99円割れ目前 トランプ関税で経済見通し懸念

豪ドル円相場で一時、99円割れ寸前まで豪ドル安が進んだ。トランプ氏の対中関税をめぐる言及が材料視されたが、見通しでは底堅さも示されそうだ。

豪ドル、一時急落 99円割れ目前 トランプ関税で経済見通し懸念 出所:Adobe Images

豪ドル円相場に下落圧力がかかった。26日の東京市場の取引では一時、1豪ドル=99円を割り込む寸前まで下落。10月初め以来約2か月ぶりの豪ドル安水準となった。豪ドル安の材料となったのは、アメリカのドナルド・トランプ次期大統領の対中関税をめぐる言及。中国経済の先行きへの不安が、中国経済と関係が深いオーストラリア経済の今後の見通しを悪くする可能性が材料視された。一方、27日に発表されるオーストラリアの10月の消費者物価指数(CPI)は物価上昇の根強さが確認される見込み。オーストラリア準備銀行(RBA)の利下げへの期待は高まっておらず、豪ドル相場の底堅さにつながることも考えられそうだ。

【関連記事】豪ドル安急進95円 トランプ効果 オーストラリア中銀は維持見通し(11月26日)

豪ドル円相場は一時99.07円 約2か月振りの豪ドル安水準

豪ドル円相場(AUD/JPY)は26日午前の取引で一時、1豪ドル=99.07円をつけた。ブルームバーグによると、10月2日の安値(98.69円)以来の豪ドル安水準だ。その後、豪ドルは買い戻されたものの、25日のニューヨーク市場の終値が100.29円だったことを踏まえれば、一時的にせよ1.22円の豪ドル安が進んだことになる。

豪ドル円相場の日足チャートと主な出来事のグラフ

トランプ氏の対中関税をめぐる投稿が豪ドル安の材料に 中国経済の見通しに懸念

豪ドル安のきっかけとなったのはトランプ氏の情報発信だ。トランプ氏は日本時間26日午前8時35分、自身のSNSであるトゥルース・ソーシャルへの投稿で、中国からの輸入品に10%の追加関税をかけると表明。また、トランプ氏が22日に財務長官として指名した著名投資家のスコット・ベッセント氏も中国の通商政策を批判する立場だと報じられている。

オーストラリアは経済面で中国との関係が深く、オーストラリア統計局によると、2023年の輸出総額のうち約33%が中国向けだ。26日の豪ドルの下落はトランプ氏の投稿と同じタイミングで始まっており、米国と中国の経済面での対立が激しくなれば中国経済が下押しされる可能性があることが、オーストラリア経済の見通しを悪くする要因として意識されたようだ。

豪ドル円相場は11月8日に中国政府が地方政務の債務問題への対応策を発表した際も豪ドル安に振れ、8日のニューヨーク市場の終値は前日比1.68円の豪ドル安だった。新華社通信によると、中国の藍仏安財政相はこの日、全国人民代表大会後の記者会見で地方政府の債務上限を6兆元分引き上げるとともに、すでに地方政府に対して発行を承認している特別債券のうち4兆元を2024年から5年間の隠れ債務の返済猶予にあてることを認めると発表。しかし金融市場では対策が不十分だと受け止められていた。

オーストラリアの10月CPIは物価上昇の根強さが確認される見通し

ただ、豪ドルは11月以降、比較的安定的な値動きが続いてきたことも事実だ。豪ドルの対ドル相場(AUD/USD)は5日米国の大統領選挙後に円やユーロ、ポンドなどとともに下落したものの、中旬以降は円とともに横ばいの状態となっている。

豪ドル、円、ユーロ、ポンドの対ドルレートの値動きの推移のグラフ

豪ドルの底堅さの背景にはオーストラリアの物価上昇の根強さがある。オーストラリア統計局が27日午前11時30分(日本時間27日午前9時30分)に発表する10月CPIの伸び率は、ブルームバーグがまとめた市場予想では前年同月比2.3%となる見通し。9月の2.1%から加速する見込みだ。オーストラリアの物価上昇率は7月から段階的に導入されている電気料金などに関わる補助金の影響で抑えられてきたが、10月分では改めて物価上昇の継続が意識されることになりそうだ。

オーストラリアの消費者物価指数(CPI、総合、刈り込み平均)の伸び率の推移のグラフ

オーストラリア中銀は利上げも辞さない姿勢 12月利上げ確率は6.8%どまり

こうした中、オーストラリアの中央銀行にあたるRBAは12月9、10日の理事会でも政策金利を4.35%で維持するとみられている。ブルームバーグによると、金融市場の動向から算出される利下げ確率は日本時間26日午後2時40分の段階で6.8%でしかない。RBAは11月4、5日の理事会まで8会合連続で政策金利を据え置き。声明文では物価上昇の現状について「高すぎるままだ」とし、今後の金融政策運営では利上げも排除しない姿勢をとっている。

一方、このところのFX市場では日本銀行が12月18、19日の金融政策決定会合で利上げを決めるとの見通しが円高要因として働いている側面がある。ただ、物価上昇の根強さに手を焼くRBAの利上げをも排除しない姿勢は日銀と方向性が似ている部分もあり、中国経済への懸念を材料にした今後の豪ドル円相場の下落見通しを和らげる要因として意識される可能性もありそうだ。


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