米経済の減速は“良いニュース”?円相場は新たな局面へ / ドル円 今後の注目ポイントは?
米国経済は2四半期連続のマイナス成長でテクニカル・リセッション(景気後退)入り。28日の米国市場は「株高 / 金利低下」で反応。外為市場では円相場のトレンドが変わりつつある。ドル円の焦点は?上下のチャートポイントは?詳細はマーケットレポートをご覧ください。
米経済の減速は“良いニュース”?円相場は新たな局面へ
【サマリー】
・米国経済は2四半期連続のマイナス成長、テクニカル・リセッションへ
・悪いニュースは“良いニュース”
・新たなトレンドが発生しつつある円相場
・ドル円はトレンドラインを下方ブレイク 新たな焦点はサポートポイントの見極め
・米国経済、2四半期連続のマイナス成長でリセッション入り
連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見でパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は、今後の利上げペースについては「経済指標の内容次第」というスタンスを表明した。
その経済指標で昨日注目されたのが、4-6月期GDP速報値だった。結果は、アトランタ連銀の推計(GDPナウ)の正しさを証明するマイナス0.9%減。2四半期連続のマイナス成長となったことで、米国経済はテクニカル・リセッション入りとなった。
リセッション(景気後退)の判断は全米経済研究所(NBER)によって決定されるが、イエレン米財務長官は、今回のGDPの結果がリセッションに陥っていることを証明するものではないと指摘。米政治の世界では、民主党と共和党の間でリセッションの定義について論争が展開されるとの見方がある。
・悪いニュースは“良いニュース”
注目すべきは、今回のGDPの結果を受けた米国市場の反応である。
株式市場は上昇で反応した。FOMCの翌日に下落するというこれまでの流れとは違い続伸した事実は、「リセッションの懸念→米利上げペースの鈍化」の観測が相場のサポート要因になっていることを示唆している。
米国株のトレンドを示すS&P500指数(SPX)は50日線(MA)がサポート転換し、75日線(MA)のブレイクにも成功。3月高値と6月安値の半値戻し4,137レベルを視野に上昇幅が拡大している。
S&P500指数のチャート
また、上で述べた観測は米金利の低下圧力を高めている。
金融政策の方向性を反映して動く米2年債利回りは、パウエル会見後に発生した低下トレンドを維持している。一方、景気の先行きを反映して動く10年債利回り(長期金利)も2.7%の水準を下抜けてきた。
米国株が上昇し、米金利が低下した昨日の反応は、リセッションという悪いニュースは、異常な高インフレの状態から脱する“良いニュース”と捉えられている。
米金利のチャート
・新たなトレンドが発生しつつある円相場
外為市場では、新たなトレンドが発生しつつある。それは、円高トレンドである。
昨日の円相場は、対米ドル(USDJPY)で約1.7%(2円以上)下落し、一気に134.19レベルまで急落した。
クロス円も総崩れの状態となり、ユーロ円(EURJPY)はサポートポイントの136.70レベル、ポンド円(GBPJPY)は75日線(MA / 今日現在163.35レベル)の攻防が焦点として浮上している。
円高は昨日始まったことではない。7月に入り円高の圧力がジワリと高まっている。主要通貨(G10通貨)のパフォーマンスを確認すると、ノルウェークローネと豪ドルで若干円安ではあるが、それ以外の主要通貨では軒並み円高となっている。リセッション懸念が“良いニュース”となり、米国株は上昇トレンドを維持している。
しかし、中国や欧州経済の減速も考えるならば、これは短期的な動きと捉えるべきだろう。よって、米国株を含めた世界の株式相場は引き続き不安定な状況が続くと予想する。株式市場の不安定なトレンドは、リスク回避の円買い要因となろう。
そしてリセッション懸念の高まりは、米金利の低下圧力を高めるだろう。これは米ドル安の圧力-特に対円での米ドル安の圧力を高める要因である。
以上の状況を総合的に考えるならば、年後半の外為市場の焦点は円高の復活にある。
円相場のパフォーマンス:月初来
ドル円 短期の展望とチャートポイント
・あっけなくトレンドラインを下方ブレイク
ドル円(USDJPY)は昨日、今年3月から始まった上昇トレンドを象徴するサポートラインを大陰線であっけなく下方ブレイクした(安値は134.19レベル)。
このレポートでは、 “139円前半のレジスタンス化“と”21日線のレジスタンス転換“によるドル円の下落リスクを指摘してきたが、予想通りに下落幅が拡大している。
そして重要ラインをも下方ブレイクしてきたことで、ドル円は新たな局面へシフトする展開を想定したい。
ドル円のチャート
・新たな3つのサポートポイント
新たな局面でのドル円(USDJPY)の焦点は何か?それは、サポートポイントを見極めることにある。テクニカルの面でこの点を考えると、3つのポイントが候補として浮上する。
まずは「132.00レベル」である。この水準は6月にサポートポイントとして意識された経緯がある。また現在は、75日線(EMA)が132.17レベルまで上昇している。この移動平均線は、今年1から3月上旬まで相場をサポートした経緯がある。
ドル円が132円台を下方ブレイクする場合、次に注目したい水準が「131.30レベル」である。131.32レベルはフィボナッチ・プロジェクション161.8%の水準にあたる。現在は89日線(MA)が131.17レベルまで上昇している。75日線と同じくこの移動平均線も、今年の1月から3月上旬にかけて相場をサポートした経緯がある。また、131.30前後は6月16日にサポート転換しネックラインとしても注目される。
株式市場の不安定化と米金利の低下トレンドが合わさり、ドル円が131.30レベルをも下方ブレイクする展開となれば、「126.40レベル」まで下落幅が拡大する可能性が出てくる。126.43レベルは、現時点での今年高安の半値戻しにあたる。今年の5月24日に安値126.36レベルでサポートされ、139円台へ上昇するきっかけとなった経緯のある126.40前後で二度サポートされるか?ドル円の下落トレンドが続く場合は、この点が焦点として浮上する可能性を意識しておきたい。
ドル円のチャート
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