【ユーロ円 (EUR/JPY) / ユーロドル (EUR/USD)】今週の注目材料は日銀会合とECB理事会 / 米欧の経済指標も変動要因に
今週は、日欧の中銀イベントが円相場とユーロ相場の変動要因となろう。中銀イベント以外で注目したいのが、米欧の経済指標である。特に1月の購買担当者景気指数(PMI)と昨年12月の米個人消費支出(PCE)価格指数が材料視される可能性がある。注目の通貨ペアはユーロ円(EURJPY)とユーロドル(EURUSD)。それぞれの展望は?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
サマリー
・1月の日銀イベントでは、植田総裁の会見内容が市場の変動要因となろう
・今回の会見では、植田総裁が考える賃金と物価の好循環までの「距離感」に注目したい
・海外の注目材料は、欧州中央銀行(ECB)イベントと米欧の経済指標となろう
・今週の円相場では、日欧の中銀イベントを受けたユーロ円の動向に注目したい
・一方、ユーロドルは3つの移動平均線での攻防と1.08の維持が焦点となろう
日銀イベントの焦点は植田総裁が考える“距離感”にある
今週22~23日に日銀金融政策決定会合が開催される。能登半島地震の影響と今春の労使交渉で中小企業も含めた全体の賃上げ動向を見極める必要性があることを考えるならば、1月の日銀会合では現行の金融緩和政策を維持する公算が大きい。
なお、新たに公表される経済・物価情勢の展望(展望レポート)では、原油価格の下落を反映し前回23年10月時点で2.8%とした24年度の物価見通しを2%台半ばに下方修正するとの見方がある。
今回の日銀会合自体にサプライズがないと考える場合、焦点は植田和男総裁の記者会見となろう。注目したいのが、賃金の上昇と物価の好循環についての見解である。
今月11日の日銀支店長会議では、一部の大企業が昨年並みかそれ以上の賃上げ方針を表明するなか、地方でも昨年より幾分早いタイミングで賃上げの機運が醸成されつつあると報告された。しかしその一方で、賃上げの広がりや程度等については不確実性が高いとも報告された。
植田総裁は賃金の上昇と物価の好循環を重視している。今回の会見で、この状況(好循環)と現在との「距離」が着実に近づいているとの自信を示す場合は、一時的にせよ急速に進行している円安を調整する(円を買い戻す)要因になり得る。
昨年12月26日、植田総裁はNHKのインタビューで賃金と物価が好循環しつつ、緩やかな2%くらいのインフレが持続していく姿を目指しているが、これが実現していくかどうかについては、まだもうひとつ自信が持てないこと、確度は高くないということで金融緩和を維持していると述べた。
また、2%にこだわったことで物価上昇への政策対応が遅れてしまっているという認識や葛藤についての問いに対しては、今のところ賃金物価の好循環が回り始めてはいるが、2%で持続的・安定的にうまく着地するかは確信が持てない状況にあること、2%をオーバーしてどんどん際限なく上がっていくというリスクも高くないと見ていること、そして焦っているという気持ちはないと答えている。
能登半島地震の影響も考慮し、植田総裁が賃金と物価の好循環についてまだ確信が持てない状況にあることをあらためて示唆する(好循環を達成するまでまだ距離があると示唆する)場合、円安で反応する展開を想定しておきたい。
欧州中央銀行(ECB)理事会とユーロ円の動向
後退する早期の利下げ期待
今週25日、欧州中央銀行(ECB)が理事会を開く。
今月18日に公表された議事要旨(昨年12月13~14日開催分)では、インフレ率が目標に向けて低下していると評価する一方、引き続き警戒と忍耐が必要であり、当面は制約的なスタンスを維持する必要があるとした。
直近では、ECB高官から市場が抱く早期の利下げ期待をけん制する発言が聞かれている。
シュナーベル専務理事は10日、X(旧ツイッター)で利下げの議論について「時期尚早」と指摘した。
ECBのチーフエコノミストであるレーン専務理事は12日、ダブリンで開催されたイベントで利下げは当面のテーマではないと述べた。
そしてオランダ中銀のクノット総裁は17日、現在の市場にある政策金利の先行き予想を我々は正当化しないとCNBCに述べた。
相次ぐECB高官らのけん制発言を受け、短期金融市場では3月の利下げ確率が10%台へと急低下し、利下げ開始の思惑が4月または6月へ後ずれしている。そして政策金利の予想推移も全般的に上方に修正される状況にある。
このような状況のなか、ラガルド総裁が定例会見で市場が抱く早期の利下げ期待をあらためてけん制する場合は、現時点で五分五分と想定されている4月の利下げ観測を後退させる要因となろう。
早期利下げ観測のさらなる後退は、ユーロ買いの要因になり得る。
欧州中央銀 政策金利の予想推移
ユーロ円の動向に注目
今週の円相場では、ユーロ円(EURJPY)の動向に注目したい。日銀が金融緩和政策を維持すると同時に、欧州中央銀行(ECB)の早期利下げ観測が後退すれば、ユーロ円のさらなる上値トライが予想される。
そのユーロ円は現在、円安の進行を受けフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準161.67レベルの攻防となっている(下のチャート、赤矢印を参照)。
日欧の中銀イベントを受けてユーロ円がこの水準(161.67レベル)を完全に突破する場合は(思惑先行で中銀イベントの前に突破する可能性もある)、162円台を一気に駆け上がり、163円を目指す可能性が出てくる。
後者のケースとなれば、昨年11月27日の高値163.72レベルのトライが焦点として浮上しよう。
ユーロ円は現在、上昇のトレンドにある。一方で、現在のストキャスティクスの状況とトレンドチャネル上限の突破は、短期的な相場の過熱感を示唆している(下の日足チャートを参照)。
この状況でECBイベントがユーロ売りの要因となる場合、ユーロ円は調整の反落相場を想定しておきたい。
しかし、この展開となっても日銀による早期の政策転換の思惑が後退していること、ドル円(USD/JPY)の上昇トレンド、そして現在のリスク選好相場(日米株高)も考えるならば、ユーロ円の下落幅は限定的となることが予想される。
テクニカルの面では10日線を維持できるかどうか?まずはこの点を確認したい。この移動平均線は今日現在、160.04レベルで推移している。ゆえにこの移動平均線の攻防は、160円を維持できるかどうか?この点を見極める攻防となろう。
ユーロ円のチャート:日足 23年11月以降
米欧の経済指標も市場の変動要因に
購買担当者景気指数(PMI)速報値
今週、日欧の中銀イベント以外で注目したいのが、米欧の経済指標である。
現在、短期金融市場では連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)による3月の利下げ観測が急速に後退している。今後、この観測に大きな影響を与えるのが、経済指標となろう。
今週24日にユーロ圏と米国の1月購買担当者景気指数(PMI)速報値が発表される。直近の動向を確認すると、景気が低迷するユーロ圏と、景気の底堅さを維持する米国という構図にある。
ユーロ圏と米国の購買担当者景気指数(PMI)の動向:月次23年以降
1月の市場予想を確認すると、ユーロ圏は緩やかな回復基調を維持する見通しとなっている(上のチャート、黄色のドットを参照)。一方、米国は製造業の低迷に加えて、サービス業も若干ながら低下することが見込まれている。
PMIが予想どおりの結果となれば、ユーロドル(EUR/USD)の反発要因になり得る。PMIを受けてユーロドルが上値をトライする場合は、先週19日のIG為替レポートで取り上げた1.0920レベルの攻防が焦点となろう。今日現在、10日線と50日線がこのレベルを挟んで推移している。
ユーロドルが1.0920レベルを完全に突破する場合は、21日線までの反発を想定しておきたい。この移動平均線は今日現在、1.0960レベルで推移している。
PMIがユーロドルの反発要因となっても、その持続性は翌日のECB理事会そして26日に発表される米国の個人消費支出(PCE)価格指数(昨年12月)の内容次第となろう。
一方、ユーロ圏のPMIが予想を下回り、米国のPMIが予想外にも景気の底堅さを示す場合は米欧の景況感格差が意識され、ユーロドルはサポート水準として意識されている1.08ミドルの下方ブレイク、および1.08のトライ、テクニカルの面では半値戻しの水準1.0794レベルのトライを想定しておきたい。
ユーロドルのチャート:日足 23年10月以降
米国 個人消費支出(PCE)価格指数
今週26日に米国の個人消費支出(PCE)価格指数(昨年12月)が発表される。コア指数の内容が米金利と米ドル相場の変動要因となる可能性がある。
現時点での市場予想を確認すると、総合とコア指数は前月比でともに0.2%へ上昇する見通しである。一方、前年同月比では総合が横ばい、コア指数は昨年11月の3.2%から3.0%へ低下する見通しとなっている(下のチャート、赤の棒グラフとドットを参照)。
直近の米経済指標では、労働市場と個人消費の底堅さが確認された。強い経済指標は3月利下げの観測を大きく低下させ、米ドル高の要因となっている。
この状況で個人消費支出(PCE)価格指数がインフレ圧力の根強さを示す場合は、外為市場で米ドル高のトレンドが続く可能性を高めよう。
また、上で述べたPMI速報値で米国経済の底堅さも確認される場合は米ドル買い圧力の高まりを受け、ユーロドルは1.08(半値戻しの水準1.0794)レベルのトライそして下方ブレイクを想定しておきたい。
米国 個人消費支出(PCE)価格指数の動向:月次 23年以降
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