日銀がマイナス金利解除持ち越し 円安急進144円 物価目標へ前進も
日銀はマイナス金利解除を見送り。ただし植田和男総裁は物価目標達成への前進も口にしており、円高再進行の可能性もある。
19日の東京市場のドル円相場では円安が急進した。日本銀行が金融政策の現状維持を決め、一部で予想されていたマイナス金利政策解除といった大規模金融緩和策の修正に踏み込まなかったためだ。植田和男総裁は決定会合後の記者会見で、賃上げをともなう安定的な物価上昇が実現するとの確信には至っていないとの立場を示した。ただ、植田氏は目標実現への前進にも言及。2024年の春闘をめぐっては賃上げ率が高くなるとの見通しも出ており、引き続き、日銀のマイナス金利解除をめぐる思惑がドル円相場を動かす場面が出てきそうだ。
植田総裁会見後、ドル円相場は144円台半ばに
19日の東京市場のドル円相場(USD/JPY)は1ドル=142円台後半でスタート。正午前に日銀がマイナス金利解除を見送ったことが伝わると、143円台後半まで円安が進んだ。その後、午後3時30分から植田氏の会見が始まり、円安は144円台まで進行。午後6時の段階では144円台半ばで取引されている。
ドル円相場を円安方向に動かしたのはマイナス金利解除に踏み込まなかった植田氏の立場だ。植田氏は記者会見で、賃金上昇を伴いつつ安定的に物価上昇率が2%に達する状況の実現を確信できるかについて「もう少しデータや様々な情報をみたい」と言及。当面は大規模金融緩和を継続する必要があるとの立場を示した。物価動向に加え、2024年春闘の動向や企業業績などについて丹念に点検するとしている。
物価上昇2%目標達成に向けた前進も
ただし植田氏は安定的な物価上昇率2%の達成について「確度は少し上がってきている」とも述べている。記者会見では、輸入物価の上昇が国内物価を押し上げる経路が弱まっている一方、人件費の上昇分がサービス価格に上乗せされる形での物価上昇は続いている点を指摘。企業業績の好調さや大企業から賃上げに前向きな発言が出ていることも、好材料として挙げた。大規模金融緩和を継続する中で、こうした賃上げに向けた環境が整い、物価上昇2%の安定的な実現の確度がさらに高まれば、マイナス金利解除が視野に入るとの立場だ。
賃上げの動向を大きく左右する2024年春闘をめぐっては、2023年を上回る賃上げになるとの分析も出ている。みずほリサーチ&テクノロジーズは18日付のレポートで、2024年春闘の賃上げ率が3.8%になるとの予想を公表。企業業績が好調であることや人手不足感が強まっていること、物価上昇率の高さを踏まえて労働組合側が高い賃上げを要求すると見込まれることなどが理由だ。厚生労働省のまとめでは2023年春闘の賃上げ率は3.60%で、1993年(3.89%)以来30年ぶりの高さだったが、それをさらに上回る賃上げが期待できるという見立てだ。こうした予想の実現性が高まれば、再びマイナス金利解除観測が強まり、ドル円相場で改めて円高が進むことも想定される。
アメリカの金利低下も円高要因に
また、金融市場ではアメリカの金利の低下傾向という円高要因もある。米連邦準備制度理事会(FRB)は13日に示した経済見通しで、2024年に0.25%利下げを3度行う方向性を示唆。金融市場では長期金利(10年物米国債利回り)の低下が進み、14日以降は約4か月半ぶりの3.9%台で推移している。日銀のマイナス金利解除見送りは円安要因となったものの、日米の金融政策の方向性の違いは今後も円高要因として働く可能性がありそうだ。
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