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日銀のマイナス金利解除近づくか 春闘の成果焦点 円高圧力の強まりも

日本銀行が物価上昇への自信を深めてきた。春闘で賃上げの力強さが確認されれば、マイナス金利解除観測の拡大が円高圧力になる可能性がある。

日銀のマイナス金利解除近づくか 春闘の成果焦点 円高圧力の強まりも 出所:ブルームバーグ

日本銀行のマイナス金利政策の解除が現実味を帯びてきた。日銀の植田和男総裁はこのところ物価上昇率2%達成への自信を徐々に高めているもよう。金融市場では引き続き、3月18、19日の金融政策決定会合での解除もありえると見込まれている。13日に集中回答日を迎える春闘で賃上げ率が高くなれば、解除観測がさらに拡大し、円高圧力が強まる可能性もありそうだ。一方、日本時間の12日夜にはアメリカの2月消費者物価指数(CPI)の発表が予定されており、こちらの結果でもドル円相場が大きく動くことが想定される。

日本の物価上昇率は2022年4月から2%超で推移

マイナス金利政策は2016年1月に日銀が導入した金融緩和策。銀行が日銀に預けている当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を課すことで、銀行が民間融資に積極的になるよう促し、経済活動を刺激して物価を上昇させる狙いがある。一方、日本のCPIの総合指数の伸び率は2022年4月から2%を超える水準が続いてきた。2024年2月27日に発表された1月CPIは伸び率が2.2%まで下がってはいるが、2月以降は再び高まるとみられている

日本の消費者物価指数(CPI)の推移のグラフ(2024年3月12日作成)

こうした中、植田氏は7日の参院予算委員会で2%の物価上昇率を安定的に達成できる見通しについて「引き続き少しずつ高まっている」と述べた。植田氏は2023年4月の就任以降、目標達成について自信が持てないとの立場をとってきたが、12月以降は目標達成の可能性が高まっているとの発言が目立つようになった。植田氏の視野にはマイナス金利解除がよりはっきりと見えるようになっているようだ。

金融市場が見込む3月のマイナス金利解除の確率は50%

LSEGのデータによると、現在マイナス0.1%になっている短期金利の水準が3月の決定会合後に0%まで上がっていることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間12日午前11時段階で50%。4月の決定会合後に0%超になる確率は約64%とみられている。

ただ、マイナス金利解除をめぐる観測は春闘の結果で大きく動く公算がある。物価上昇が2%を超えていても賃金上昇に裏付けられた消費の強さがなければ、やがて物価上昇が落ち込んでいく懸念が拭えないからだ。時事通信は11日、春闘の第1回の集計結果での賃上げ率が2023年の実績である3.80%を大きく上回れば、日銀がマイナス金利解除に踏み切る見通しだと報じた。今年の春闘は13日が集中回答日で、連合は15日に第1回の集計結果を発表する。

春闘で賃上げの強さが確認されれば円高の可能性も

春闘の結果を受けてマイナス金利解除観測が強まれば、ドル円相場(USD/JPY)では円高圧力として働く可能性がある。ドル円相場は3月5日までは1ドル=150円前後での推移が続いていたが、7日にブルームバーグ通信が3月か4月のマイナス金利解除の環境が整いつつあると報じたことなどから、円高が進行。このところは146円台で推移している。8日発表の米国の2月雇用統計で失業率が3.9%まで上昇し、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが意識されていることも、円高要因となったようだ。

ドル円相場の日足チャートと主な出来事(2024年3月12日作成)

ただ、日銀はマイナス金利を解除したとしても、日本の金利水準がどんどん上がることはないと繰り返し強調している。このためマイナス金利解除の確度が高まっても、円高圧力がさほど高まらない可能性も残されていそうだ。また、日本時間12日午後9時30分に発表される米国の2月CPIは物価上昇の根強さが確認される可能性があり、FRBの利下げ観測が後退してドル高につながる筋書きも考えられる。


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