円高急進、149円台 東京CPI予想超え 春闘見通しも背景に
ドル円相場は一時、5週間ぶりの円高水準となる149円台をつけた。東京都区部のCPIが予想を超えたことや春闘で示された賃上げの動きが背景にある。
ドル円相場で円高が進行している。日本時間29日午前の取引では1ドル=150円を割り込み、約5週間ぶり149円台をつけた。円高は朝方に発表された東京都区部の11月の消費者物価指数(CPI)の中旬速報値が市場予想を超えたことが要因。日本銀行が12月の金融政策決定会合で利上げに踏み切るとの見通しを裏付ける結果だったことが円の全面高につながった。また日銀が物価動向とともに注視している賃上げをめぐっては、労働組合の連合が28日に2025年春闘で5%以上の賃上げを目指す方針を提示。2年連続での高水準の賃上げが現実味を増していけば、ドル円相場の今後の見通しには円高圧力として働きそうだ。
ドル円相場は149円台に突入 約5週間ぶりの円高水準
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間29日午前に一時、1ドル=149.86円をつけた。前日のニューヨーク市場の終値(151.55円)からは1.69円の円高水準だ。10月21日につけた149.09円以来の円高水準となっている。
東京都区部の11月CPIは予想を超える伸び率 日銀の12月利上げ見通しを裏付け
円高のきっかけをつくったのは東京都区部の11月CPI(中旬速報値)。前年同月比での伸び率は総合指数が2.6%、生鮮食品を除いたコア指数は2.2%だった。ブルームバーグがまとめた市場予想は、総合指数が2.2%、コア指数が2.0%で、発表された実績はいずれも市場予想を超えた形となり、物価上昇見通しを強めた。また、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコア指数の伸び率は市場予想と同じ1.9%だった。
市場予想を超える物価上昇は、日銀が12月18、19日の金融政策決定会合で利上げに踏み切るとの金融市場での見立てを裏付けた。ブルームバーグによると、金融市場の動向から算出される12月利上げの確率は日本時間29日午前11時段階で約63%となっている。東京CPI発表直前には58%程度となっていたが、改めて利上げ見通しが強まったといえる。
こうした中、円は29日の取引でポンドやユーロや豪ドルに対しても強くなった。なかでも欧州中央銀行(ECB)の12月利下げが確実視されているユーロ円相場(EUR/JPY)は一時、1ユーロ=158.52円をつけ、10月1日(158.38円)以来のユーロ安水準となった。
連合は2025年春闘で5%以上の賃上げを目指す方針 円高進行の背景に
また日銀の動向をめぐっては2025年春闘の動向にも注目が集まっている。連合は28日の中央委員会で、ベースアップ相当分として3%以上、定期昇給分と合わせて5%以上の賃上げを目指す方針を決めた。
日銀は物価が安定的に2%の上昇を維持しつつ、賃金も上がっていく好循環を目指している。2024年春闘ではベースアップ相当で3.56%、定期昇給分と合わせて5.10%の賃上げが実現し、日銀が3月に大規模金融緩和を終了させ、7月に利上げに踏み切る背景となった。それだけに連合が2025年春闘でも5%を超える賃上げへと向かう道筋を示したことは、日銀の利上げ見通しにつながる動きといえそうだ。今後も春闘の動向が円高圧力として働くことも考えられる。
アメリカの長期金利は低下傾向 トランプ氏の動向や経済指標がドル円相場に影響も
一方、ドル円相場での円高の背景にはアメリカの金利動向もある。ブルームバーグによると、米国の長期金利(10年物米国債利回り)はサンクスギビングデーの休日前の27日の終値で4.264%となり、約1か月ぶりの低さとなっている。29日の値動きでは日米金利差は3.1%ポイント台となっており、10月18日以来の小ささだ。
米国の長期金利低下はドナルド・トランプ次期大統領が22日夕方に、財務長官として財政規律に厳格な立場が報じられている著名投資家のスコット・ベッセント氏を指名したことがきっかけで進んだ。このため今後のドル円相場の見通しは、トランプ氏の動向や米国の経済指標に左右される可能性もある。
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