ドル円の週間見通し:日銀利上げも根強い円安、次はFOMC タカ派のパウエル会見なら上振れ警戒
記事の概要
24日の金融政策決定会合で日銀は政策金利を0.50%へ引き上げた。政策金利が0.5%となるのは17年ぶり。対米ドルで一時円高優勢となり、154.80台まで下落する局面が見られた。しかし50日線でサポートされると一転して円安優勢の展開に。欧米時間に156円台へ反発した。主要なクロス円も上昇して終えた。24日の動きは円安圧力の強さをかえって浮き彫りにした。
今週のドル円は、米連邦公開市場委員会(FOMC)で大きく動くことが予想される。焦点はパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見となろう。利下げに慎重な姿勢を示す場合は、ドル円の上振れを警戒したい。週間の予想レンジは154.00-158.20。
目次
日銀追加利上げも円安圧力の強さ浮彫りに
日銀は24日に開いた金融政策決定会合で、政策金利である無担保コール翌日物レートを0.25%から0.5%に引き上げた。
円相場は円高へ振れる局面が見られた。しかしその動きは限定的だった。対米ドル(USD/JPY)では154.80台まで円高が進行した。しかし海外時間では一転して円安優勢となり、156円台へ急反発した。他の主要通貨でも円は下落した(円安となった)。
円相場の動向:1月24日
ブルームバーグの為替データで筆者が作成
1月の展望レポートでは持続的な賃金の上昇見通し、個人消費の緩やかな増加基調、円安に伴う輸入物価の上振れなどに言及。経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになるとした。
また、24年度から26年度にかけての生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)の前年度比上昇率の見通しを昨年10月時点のそれから各々引き上げた。日銀の植田和男総裁は会合後の定例会見で、この先も経済・物価の改善が続く見通しであれば、追加の利上げを検討する考えを示した。しかし、利上げのペースや時期については予断を持たず、経済・物価情勢を見て判断するとした。
短期金融市場は会合前に、日銀が年内に政策金利を0.75%程度まで引き上げることを織り込んでいた。会合後もこの見通しに変化は見られなかった。早期かつ持続的な追加利上げの期待は高まらず、日銀会合後の円相場の動き(円高→円安)は、円安圧力の根強さをかえって浮き彫りにした。
日銀 政策金利の予想推移
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / OISに基づく予想 / 1月24日時点
次はFOMC、焦点はパウエル議長の会見 利下げ期待後退なら米ドル高の要因に
今週1月28日-29日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる。利下げの見送りはすでに織り込まれているため、市場参加者の関心は今年前半の利下げペースに向いている。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の定例会見で今後の政策動向を見極めることになろう。
米債市場では、インフレなどの経済情勢を先取りして動く10年債利回り(長期金利)が一時4.8%まで上昇した。2024年12月の消費者物価コア指数(CPI)の鈍化でひとまず金利の上昇は一服している。しかし、トランプ米大統領が2月1日までにカナダ、メキシコそして中国に対して関税強化に踏み切る可能性に言及して以降、4.5%の水準がレジスタンスからサポートのラインへ転換している。トランプ関税によるインフレの再燃を警戒した動きと捉えることができる。
パウエルFRB議長もこの点を警戒し、トランプ政策の影響を見極める時間とデータが必要との見解を示す場合は、今年前半の利下げ期待が後退することが予想される。
短期金融市場では次回の利下げ時期が徐々に後ずれしている。1月24日時点では6月利下げの可能性が意識されている。しかし、パウエル会見で6月利下げの期待も後退すれば、外為市場では米ドル高の進行が予想される。
FOMC 政策金利の予想推移
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / OISに基づく予想 / 1月24日時点
膠着状態の日米利回り格差、FOMCで動くか?
筆者が米FOMCに注目する理由は、日米利回り格差の動向にある。昨年12月中旬以降、日米利回り格差の拡大傾向は一服している。しかし、縮小トレンドへ転じることもなく膠着状態にある。
日米利回り格差と高い相関関係にあるドル円(USD/JPY))も155.00-158.00を中心としたレンジ相場の状況にある。パウエルFRB議長の会見が日米利回り格差の膠着状態を打破すれば、ドル円にも新たな動きが出てくるだろう。
日銀が追加の利上げを決定し政策金利が17年ぶりに0.5%へ引き上げられても、24日の外為市場は円安優勢の展開となった。パウエルFRB議長が追加の利下げについて慎重な姿勢を示す可能性があることも考えるならば、今週はドル円の上振れを警戒したい。特にパウエル会見時ではその可能性を意識したい。
日米利回り格差の動向:日足 2024年9月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
ドル円の週間見通しとテクニカルライン
今週のドル円(USD/JPY)の予想レンジは154.00-158.20。パウエルFRB議長が追加の利下げについて慎重な姿勢を示す場合、ドル円は予想レンジの上限158.20を視野に強気相場が予想される。予想レンジの上限をトライするサインとして、以下にまとめたレジスタンスラインの攻防に注目したい。
・最初の焦点は、現在レジスタンスラインとして意識されている10日線の突破となろう。この移動平均線の上方ブレイクは、157円台へ上昇するサインと捉えたい
・ドル円が157円台へ上昇する場合は、フィボナッチ・リトレースメントの攻防が焦点となろう。76.4%戻し157.91の突破は、158円台への上昇と予想レンジの上限158.20をトライするサインと捉えたい
レジスタンスライン
・158.20:1月14日の高値、予想レンジの上限(1時間足)
・157.91:フィボナッチ・リトレースメント76.4%(1時間足)
・157.31:フィボナッチ・リトレースメント61.8%(1時間足)
・157.00:レジスタンスライン(1時間足)
・156.27:10日線(1/24時点、日足)
今週、ドル円の下落局面では、以下にまとめたサポートラインの攻防に注目したい。そのきっかけとなり得るのが、パウエルFRB議長の会見と31日の米個人消費支出価格指数(PCEデフレーター、24年12月)である。予想レンジの下限は154.00レベル。
・現在のドル円は、50日線が強固なサポートラインとして意識されている。24日の日銀イベント後の円高を止めた経緯も考えるならば、下落局面では引き続きこの移動平均線で反発する展開を想定したい
・ドル円が50日線を下方ブレイクする場合は、50日線の「レジスタンス転換」が焦点となろう。この状況が確認される場合は、さらなる下値のトライを想定したい
・50日線がレジスタンスラインへ転換する場合は、昨年9月16日の安値を基点とした短期サポートラインも下方ブレイクすることが予想される。このケースでは予想レンジの下限154.00を視野に下落幅の拡大を想定したい。テクニカルの面では75日線の攻防が焦点となろう
・31日に24年12月のPCEデフレーターが発表される。インフレ懸念を後退させる要因となれば、「米ドル安→ドル円の下落」要因になり得る
サポートライン
・154.92:50日線(1/24時点、日足)
・154.07:75日線(1/24時点、日足)
・154.00:予想レンジの下限(1時間足)
ドル円のチャート
日足:2024年9月以降
出所:TradingView
1時間足:1月9日以降
出所:TradingView
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