円高見通しの強まりも FRB議長講演前に緊張感 日銀は利上げ視野
ドル円相場は23日に145円台で推移。日銀の金融政策の方向性に変化は出ておらず、パウエル氏の講演への注目度が高まっている。
ドル円相場が上下に揺れ動いている。23日午前の東京市場のドル円相場は1ドル=145円台で推移。前日のニューヨーク市場で、アメリカの長期金利(10年物国債利回り)上昇を受けて進んだ円安を打ち消す動きだ。日本銀行の植田和男総裁が23日の国会答弁で、7月末に示した追加利上げを辞さない姿勢を維持したことが材料視されている。ただし日本時間の23日夜には米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長の講演も予定されており、値動きには緊張感もある。パウエル氏の講演後、円高のさらなる進行も含めて、今後のドル円相場の見通しが大きく揺れる可能性がありそうだ。
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ドル円相場は145円台で推移 22日終値から円高進行
ドル円相場(USD/JPY)は23日午前の東京市場で一時、1ドル=145.29円をつけた。22日のニューヨーク市場の終値(146.26円)から1円近い円高水準だ。22日のドル円相場では米国の長期金利が3.862%まで上がる中、21日につけた144円台から円安が進んでいたが、再び円高方向に切り返した形になった。
日銀の植田総裁は利上げも辞さない姿勢を維持
円高進行のきっかけになったのは植田氏の発言だ。植田氏は23日午前9時30分からの衆議院財務金融委員会での答弁で、今後の金融政策について「基本的な姿勢に変わりはない」と言及。7月30、31日の金融政策決定会合後の声明で示した、日銀の見通し通りに経済や物価の情勢が進展していけば、利上げを含めて「金融緩和の度合いを調整していくことになる」との方針を維持した。
こうした中、総務省が23日朝に発表した7月の消費者物価指数(CPI)は日銀の見通しから大きく外れていない。7月CPIの総合指数の伸び率は2.8%増で6月と同じ数字。コア指数(生鮮食品を除く総合)の伸び率は2.7%で、6月よりも高くなった。また、生鮮食品とエネルギーを除いた総合指数(コアコア指数)の伸び率は1.9%だった。日銀は7月の決定会合で示した経済見通しで、2024年度のCPIの伸び率について、コア指数で2.5%、コアコア指数で1.9%としていた。
日本の7月CPIの伸び率はサービスの上昇に弱さ
一方、7月CPIの伸び率にはコアコア指数の低下傾向も感じられ、日銀が目標とする2%の物価上昇の安定的で持続的な実現には不安もある。さらに7月CPIをモノとサービスに分けてみると、モノの伸び率は前年同月比4.0%という高さだったが、サービスの伸び率は1.4%となり、2023年2月(1.3%)以来1年5か月ぶりの低さだった。賃上げと物価上昇の好循環を目指す日銀は、賃金の影響が大きいサービス価格の動向を注視しているが、7月の結果は心もとなく映る。それでも植田氏が国会答弁で利上げを辞さない姿勢を維持したことは、ドル円相場での円高材料となったようだ。
パウエル氏のジャクソン・ホール講演で円高の見通しも
ただし今後のドル円相場の動向は日本時間23日午後11時に予定される、FRBのパウエル氏のワイオミング州ジャクソン・ホールでの講演でも揺れる可能性がある。このため23日の円高は一方的に進んでいるわけではない。
パウエル氏は7月31日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、物価上昇減速を評価しつつ労働市場の堅調さを強調。金融市場では9月17、18日のFOMCでの利下げ幅は0.25%になるとの見方が優勢だ。しかしその後発表された7月雇用統計は失業率が4.3%まで上昇しており、パウエル氏がジャクソン・ホールで労働市場悪化への警戒感を示せば、金融市場で利下げ幅が0.5%になるとの見通しが強まる可能性がある。この場合はドル円相場で円高が加速することも考えられそうだ。CMEグループのデータによると、9月FOMCでの利下げ幅が0.5%になることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間23日正午段階で27%となっている。
これに対して22日に発表された8月11-17日週の新規失業保険申請件数は23.2万件で、市場予想(23万件)を上回ったものの、上振れ幅はわずかだった。パウエル氏が引き続き、労働市場の堅調さに軸足を置いた場合には、足元の円高の流れにブレーキがかかるとの見通しもなりたちそうだ。
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