ポンド円の見通し、焦点はレンジ相場のブレイク 英国の賃金統計と米国の経済指標に注目
英中銀(BOE)の利下げを受けてもポンド全面安の展開とはなっていない。ポンドドルの下落とドル円の上昇に板挟み状態のポンド円。目先の焦点はレンジ相場のブレイクにある。今日の英賃金統計と明日以降の米経済指標でポンド円は上下に動くことが予想される。目先注目のテクニカルラインについて。
記事のポイント
- 英中銀の利下げを受けてもポンド全面安の展開とはなっていない
- 英利下げパスの不透明感が強まっていることが、ポンドの下支え要因となっている
- ポンド円の焦点はレンジ相場のブレイクにある、注目のテクニカルラインについて
- 今日の英賃金統計、明日の米経済指標でポンド円は上下に動くことが予想される
利下げを受けても強弱まちまちの英ポンド
英中銀(BOE)は先週7日の金融政策委員会(MPC)で利下げを決定し、政策金利を4.75%に引き下げた。利下げはその国の通貨が減価する要因である。しかし、MPC後の英ポンドは主要通貨で強弱まちまちの状況にある。
英ポンドの動向:11月8日~11月11日
ブルームバーグのデータで筆者が作成
不透明感が強まる英中銀の利下げパス、新予算案とトランプ氏復帰で
英中銀の利下げを受けてもポンド売りの圧力が高まらない理由のひとつに、スターマー政権の新予算案とトランプ氏のホワイトハウス復帰で英中銀の利下げパス(道筋)の不透明感が強まっていることが挙げられる。この要因は、インフレ見通しの不確実性にある。ポイントを以下にまとめた。
・ベイリー英中銀総裁は7日の会見でインフレの抑制が進んでいるとしながらも、サービス部門のインフレ率は依然として高すぎると指摘した
・労働党のスターマー政権は10月末、年間400億ポンドの増税や歳出の拡大を盛り込んだ新たな予算案を発表した。ベイリー総裁は新予算案の影響を見極める必要性に言及。先週のMPCで利下げに反対したマン政策委員も予算案の影響を精査する時間が必要との立場にある
・英中銀による2025年末の予想インフレ率予想は2.7%と、前回予想から0.5ポイント引き上げられた
・アメリカ大統領選挙で共和党のトランプ氏が圧勝したことも、英国のインフレ見通しの不確実性を強める要因となろう
・短期金融市場では12月のMPCで英中銀が政策金利を据え置き、次回の利下げは来年2月になると予想している。しかし、今後の物価指数でインフレの粘着性が示される場合は、2月利下げの観測が後退するだろう
米ドル高圧力の強さを示唆するポンドドルの下落
英ポンドは強弱まちまちの状況にあるが、対米ドルでは下落基調にある。目先の焦点とテクニカルラインを以下にまとめた。
・英中銀の利下げを受けても、外為市場ではポンド全面安の状況にはない。しかし、対米ドルではポンド売り優勢の展開が続いている。1.3050レベルがレジスタンスラインへ転換し、1.29を完全に下方ブレイクしている
・そして現在は21日線がレジスタンスラインとなり、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準1.2846レベルをトライする状況にある(下の日足チャート、黒矢印を参照)
・MACDとモメンタムのトレンドを考えるならば、ポンドドル(GBP/USD)はサポートラインの76.4%戻しを下方ブレイクし、1.28をトライする展開が予想される
・英中銀の利下げパスで不透明感が強まる中でもポンドドルがじりじりと下落している状況は、それだけ「トランプトレード」の米ドル高圧力が強いことを示唆している
ポンドドルのチャート:日足 2024年8月以降
出所:TradingView
ポンド円の焦点はレンジ相場のブレイク、注目のテクニカルライン
焦点はレンジ相場のブレイク
米ドル高はポンドドル(GBP/USD)の下落要因となっているが、同時にドル円(USD/JPY)のサポート要因にもなっている。
そしてポンド円(GBP/JPY)は、ポンドドルとドル円の間で板挟みのレンジ相場にある。ゆえに目先の焦点は、レンジの上限200.00レベルと下限196.00レベル、どちらをブレイクするのか?にある。目先、注目のテクニカルラインについて以下にまとめた。
ポンド円のレジスタンスライン
・対米ドルのポンド売りをドル円の上昇が相殺し、ポンド円は現在196.00-200.00のレンジ相場にある
・ポンド円は現在21日線(今日現在197.00前後で推移)でサポートされている(下の日足チャート、緑ラインを参照)。ドル円が154円を視野に底堅さを維持している状況も考えるならば、200.00のトライを意識する状況が続いている
・今日以降、ポンド円が200.00をトライするサインとして2つのレジスタンスライン ー 先週の高値レベル199.56レベルと10月30日の高値199.80トライの攻防に注目したい(下の1時間足チャートを参照)。ポンド円が後者の199.80を突破すれば、200.00のトライおよび上方ブレイクが焦点に浮上しよう
ポンド円のチャート:日足2024年8月以降
出所:TradingView
ポンド円のサポートライン
・日足のMACDとモメンタムは、ポンド円(GBP/JPY)の強気相場が後退していることを示唆している(上の日足チャートを参照)。今日以降、ポンド円が21日線を下方ブレイクする場合は、レンジの下限196.00レベルのトライが視野に入ろう
・ポンド円が21日線をも下方ブレイクする場合は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%戻しの水準196.81レベルと76.4%戻しの水準196.16レベルの攻防に注目したい(下の1時間足チャートを参照)
・本日、ポンド円の変動要因として注目したいのが、以下で述べる英国の賃金統計である
ポンド円のチャート:1時間足 10月30日以降
出所:TradingView
今日は英国の賃金統計に注目
今日は英国の雇用指標が発表される。焦点は7~9月の賃金動向(3ヶ月の週平均賃金)となろう。ポンド円(GBP/JPY)に与える影響を以下にまとめた。
・英中銀(BOE)が注視する賃金インフレは抑制の傾向にある。7~9月は、変動の大きいボーナスを除く賃金の上昇率が抑制の傾向を維持することが見込まれている
・賃金インフレが鈍化の傾向を維持する場合は、ポンド売りの要因になり得る。ポンド円は、上で述べたサポート水準をトライすることが予想される。最初の焦点は21日線の維持となろう
・インフレ見通しの不確実性が意識されるなかで英賃金の伸び率が予想以上となれば、ポンド買いの要因となろう。このケースでのポンド円は短期レジスタンスラインを突破し、昨日の高値198.46レベルをトライする展開を想定しておきたい。ポンド円が198.46レベルを突破すれば、上で取り上げた199円台のレジスタンスラインが視野に入ろう
英国の賃金動向:2024年以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
明日以降はアメリカの経済指標がポンド円の変動要因に
こちらのIG為替レポートで指摘したとおり、今週のドル円(USD/JPY)は米経済指標で上下に動くだろう。注目は明日の10月消費者物価指数(CPI)と15日の同月小売売上高である。CPIでインフレの粘着性、小売売上高で個人消費の底堅さが確認される場合は、「ドル円の上昇→ポンド円の上限200.00のトライ」を想定しておきたい。
一方、今週の米経済指標がドル安の要因となれば、ポンド円(GBP/JPY)はレンジの下限196.00レベルを視野に下落する展開を想定しておきたい。英国の賃金統計次第では下方ブレイクの可能性もある。
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