【アメリカ大統領選挙レポート:米国株の展望 後編】注目のセクターと銘柄は?ダウ平均、ナスダック100、S&P500 それぞれの見通し
アメリカ大統領選挙まで2週間を切った。共和党のドナルド・トランプ候補と民主党のカマラ・ハリス候補の支持率が拮抗するなか、米国株は最高値圏の攻防にある。前編では選挙後から年末に向けて米国株が強気相場を維持する見通しを示した。後編の今回は注目のセクターと個別銘柄、そして年末に向けたダウ平均、ナスダック100、S&P500それぞれの見通しとテクニカル水準について考察する。
記事のポイント
・アメリカ大統領選挙の年の米国株は上昇する傾向にある
・現在の米国経済は底堅さを維持し、ソフトランディング期待が高まっている
・共和党のトランプ候補が勝利する場合は、銀行株とエネルギー株に注目したい
・民主党のハリス候補が勝利する場合は、住宅関連株に注目したい
・ダウ平均、ナスダック100、S&P500 年末までの見通しと注目のチャート水準について
米株価指数CFD、年末に向けた見通し
ウォール街株価指数(ダウ平均):バリュー株に注目
10月に入り発表された雇用、個人消費そして企業活動に関係した重要な経済指標でアメリカ経済の底堅さが確認された。
アメリカ大統領選挙の後も経済が底堅さを維持すれば、ソフトランディング期待がさらに高まることで、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースが緩慢になるとの思惑も強まるだろう。
このケースでは、米長期金利が緩やかな上昇基調を維持するか、または高止まりが予想される。ゆえに強い経済指標は、高PERのハイテク株にとって重しとなる可能性がある。
一方、ハイテク株と比べて割安感があるバリュー株は選好される可能性がある。共和党のトランプ候補が勝利する場合は、銀行株やエネルギー株の動きに注目したい。
トランプ陣営が掲げる減税政策が意識され、思惑先行で米金利の上昇が続く場合は、利ザヤ収益の改善期待が銀行株の押し上げ要因となろう。
共和党は政策綱領でアメリカを世界有数のエネルギー生産国にすることを目標に掲げた。ゆえに、期待先行でエネルギー株も買われる可能性があろう。
また、バリュー株のなかでも増配や配当利回りの高いバリュー株がより選好されることが予想される。
トランプ銘柄
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / PERと配当利回りは10月23日時点の水準
一方、住宅の建設と購入を促進する政策を掲げている民主党のハリス候補が勝利する場合は、住宅関連株が上昇することが予想される。
ハリス銘柄
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / PERと配当利回りは10月23日時点の水準
IG証券では、上で取り上げたバリュー株がお取引きできます。
・JPモルガン(JPM)
・ゴールドマン・サックス(GS)
・エクソンモービル(XOM)
・シェブロン(CVX)
・ホームデポHD
・ロウズ(LOW)
ダウ平均のレジスタンスポイント
いずれにせよ、上で取り上げたバリュー株が買われる場合は、ダウ平均の押し上げ要因となろう。
ダウ平均の株価指数CFD「ウォール街株価指数(以下ではダウ平均)」は現在、右肩上がりのトレンドチャネル内で強気相場を維持している。そして、2020年から2022年にかけての重要な高安で算出されるフィボナッチ・エクステンション76.4%の水準42,924レベルを上方ブレイクする局面が見られた(下の週足チャート、緑の矢印を参照)。
13週、26週そして52週の各移動平均線が上から順にならび、かつ上昇基調にあることも考えるならば、ダウ平均の地合いは強い。
アメリカ大統領選挙後もダウ平均の強気相場が続く場合は、45,000ドルの突破が焦点となろう。この水準を突破する場合は、年末に向けて1000ドルのレンジで新たな上値の水準を見極めることになろう。
フィボナッチ・エクステンション100%の水準47,352ドルをトライする可能性はある。しかし、本レポート掲載時点の株価から4,800ドル以上も上の水準であることを考えるならば、このテクニカルラインをトライする場合は、来年に持ち越しになると予想する。
ダウ平均のサポートポイント
一方、米株高の予想が外れ、アメリカ大統領選挙後から年末にかけてダウ平均が下落トレンドを形成する場合は、13週線の維持が焦点となろう。この移動平均線は本レポート掲載時点で、41,400ドル台で推移している。
ダウ平均が13週線を難なく下方ブレイクする場合は、4万ドルの維持が焦点として浮上しよう。このケースでは26週線の攻防に注目したい。この移動平均線は10月7日の週に4万ドル台へ到達している。
ウォール街株価指数(ダウ平均)のチャート:週足 2020年以降
出所:IGチャート
米国テク株100(ナスダック100):長期金利が焦点に
ハイテク株比率の高い米国テク株100(ナスダック100の株価指数CFD、以下ではナスダック100)は、米長期金利の動向が焦点となろう。
アメリカ大統領選挙の後も景気が底堅さを維持すれば、ハイテク株の上昇要因になり得る。しかし、上で述べたとおり強い経済指標が続く場合は、「米長期金利の上昇→ハイテク株の割高感の高まり→バリュー株が選好」となる展開を警戒したい。
2016年のアメリカ大統領選挙で共和党のトランプ氏が勝利した後から年末にかけてのアメリカ株価指数のパフォーマンスを確認すると、ダウ平均が8.2%と最も上昇した。対照的にナスダック100の上昇率は1.88%と限られた。
2016年の動向を重視するならば、今回のアメリカ大統領選挙でトランプ候補が勝利し、かつ上下両院の選挙で共和党が多数派となる場合は、減税政策への期待先行で米長期金利が上昇することが予想される。株式市場ではバリュー株が選好される可能性が高い。
ゆえに、ハイテク株比率の高いナスダック100は上昇しても、ダウ平均と比べてその幅が限られる展開を想定しておきたい。
アメリカ株価指数の騰落率
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 2016年米大統領選挙後から年末にかけての動向
ナスダック100のレジスタンスポイント
このレポートの掲載時点でナスダック100は、フィボナッチ・エクステンション100%の水準20,560レベルで上昇が止められている(下のチャート、緑矢印を参照)。最高値の更新が続くダウ平均やS&P500と比べて上昇幅が抑制されている状況は、米長期金利の上昇が影響していると考えられる。
アメリカ大統領選挙の後、前編のレポートで取り上げた「株高のアノマリー」で米国株が強気相場を維持しても長期金利の上昇が続く場合は、ハイテク株(グロース株)よりも割安感のあるバリュー株が選好される展開が予想される。
ハイテク株比率の高いナスダック100は、22,000ポイントをブレイクアウトできるかどうか?まずはこの点に注目したい。
ナスダック100が22,000ポイントを完全に上方ブレイクする場合は、100ポイントレンジで新たなレジスタンスの水準を探る展開を予想する。
ナスダック100のサポートポイント
一方、米株高の予想が外れ、アメリカ大統領選挙後から年末にかけてナスダック100が下落トレンドを形成する場合は、13週と26週の各移動平均線の維持が焦点となろう。このレポートを掲載した時点で13週線は19,500ポイント台、26週線は19,300ポイント台で推移している。
ナスダック100はボラティリティが拡大しやすい特性がある。後者の26週線をも難なく下方ブレイクする場合は、52週線までの下落を警戒しておきたい。レポート掲載時点でこの移動平均線は、18,200ポイント台で推移している。また、トレンドチャネルの下限と並行しており、サポートラインとして意識される可能性があろう。
米国テク株100(ナスダック100)のチャート:週足 2020年以降
出所:IGチャート
米国500(S&P500):上昇幅はハイテク株次第
米国500(S&P500の株価指数CFD、以下ではS&P500)もナスダック100と同じく、米長期金利の影響を受けるだろう。S&P500は時価総額加重平均で算出される。それゆえ構成銘柄の上位には、エヌビディア(NVDA)やアップル(AAPL)などに代表されるマグニフィセントセブンの影響を受けやすいからだ。
しかし、ナスダック100と比べればバリュー株の影響も受けやすい。アメリカの大統領選挙の後、予想通りにバリュー株が上昇すれば、S&P500の上昇幅はハイテク株の動向次第となろう。
エヌビディアの決算に注目
アメリカ大統領選挙の後も米長期金利の上昇、または高止まりする状況が続けばハイテク株がS&P500の上昇を妨げる可能性がある。しかし、その影響を跳ね除けるイベントが一つある。それが、前編のレポートでも取り上げた11月20日に予定されているエヌビディアの第3四半期決算である。
24年の7月から8月5日にかけて、米国株は大きな下落相場に直面した。しかし底打ちして以降、S&P500は最高値を更新する状況が続いた。相場が反発した8月6日以降のS&P500とマグニフィセントセブンのパフォーマンスを確認すると、エヌビディアの上昇率が約39%と突出している。メタやアマゾンとともに、S&P500を下支えしていることが分かる。
S&P500とマグニフィセントセブンの騰落率
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 期間:8月6日~10月23日
エヌビディアの3Q決算の注目は業績見通し(ガイダンス)にある。第2四半期の決算では、この点で投資家の期待に応えることができず株価が下落した経緯がある。
2Q決算で浮上した同社の長期的な成長性に対する疑問、そして次世代GPU「Blackwell(ブラックウェル)」の出荷遅延に対する投資家の懸念が後退していることで、エヌビディアの株価は10月22日の取引時間中に144ドルへ到達する局面が見られた。
今後のエヌビディアの成長性に大きな影響を与える「Blackwell(ブラックウェル)」は、2025年の初頭にも出荷される見通しである。ブラックウェルを含め総合的な業績見通し(ガイダンス)で投資家の期待を上回る強気の予想が示される場合は、他の半導体株の上昇を誘因するだろう。
エヌビディアのみならず、主力の米半導体株が再び上昇基調へ転じれば、S&P500の押し上げ要因となろう。エヌビディアの好決算は、ナスダック100の押し上げ要因にもなるだろう。
S&P500のレジスタンスポイント
本レポート掲載時点でS&P500は、5,900ポイントを視野に強気相場を維持している(下の週足チャート、緑の矢印を参照)。ダウ平均やナスダック100と同じく、13週、26週そして52週の各移動平均線が上から順にならび、かつ上昇基調にある。
アメリカ大統領選挙の後も強気相場を維持する場合は、節目の6,000ポイントのトライが焦点となろう。この心理的なラインを突破した後、反落の局面で6,000ポイントが相場をサポートする場合は、S&P500 の地合いの強さを市場参加者に印象付けよう。このケースでは、フィボナッチ・エクステンション100%の水準6,123ポイントのトライを想定しておきたい。
S&P500のサポートポイント
一方、アメリカ大統領選挙後の株高予想が外れ、年末にかけてS&P500 が下値をトライする場合は、2020年以降、サポートラインとしてもレジスタンスラインとしても意識された経緯のある26週線までの反落を想定しておきたい。
本レポート掲載時点でこの移動平均線は5,510前後で推移している。13週線の下方ブレイクは、26週線をトライするシグナルと想定しておきたい。この移動平均線は5,630前後で推移している。
米国500(S&P500)のチャート:週足 2020年以降
出所:IGチャート
※注記事項
IGチャートで示したテクニカルラインの水準は、本レポートをウェブ上に掲載した時点でのものとなります。
相場の変動によって、これらの水準は上下に変動します。
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