ユーロ高、一時162円台 トランプ効果で急進 ECB利下げ見通し後退
ユーロ円相場は2週間で7円超のユーロ高。ユーロ圏の物価上昇圧力再燃への懸念がECBの利下げを難しくする可能性が材料視されている。

ユーロ円相場でユーロ高が進行した。12日には1か月半ぶりのユーロ高水準となる162円台前半をつけ、約2週間で7円超のユーロ高となった。背景にあるのはアメリカのドナルド・トランプ大統領がみせる経済外交両面での政策運営。通商関係の混乱やユーロ圏各国の歳出拡大が物価上昇圧力として働きかねない状況で、欧州中央銀行(ECB)の利下げ見通しが後退している。一方、FX市場ではドル円相場での円高も進んでおり、ユーロ高の勢いは一定程度相殺されてきた。ユーロ円相場の今後の見通しをめぐっては、日本銀行の追加利上げをめぐる思惑で方向性が左右される展開も考えられそうだ。
ユーロ円相場は一時162.36円 約2週間で7.56円のユーロ高が進行
ユーロ円相場(EUR/JPY)の12日のニューヨーク市場での終値は1ユーロ=161.40円。ブルームバーグによると、取引時間中には162.36円をつけ、1月29日(162.49円)以来のユーロ高水準となった。ユーロ円相場は2月28日には154.80円をつける場面もあったが、約2週間で7.56円のユーロ高が進んだことになる。

EUは米国製品への対抗関税を発表 軍事費拡大とあわせて物価上昇要因に
ユーロ高急進の要因となっているのは、トランプ政権に対する欧州連合(EU)の対応だ。EUは12日、トランプ政権が鉄鋼・アルミニウムの輸入への25%関税を発動させたことを受け、対抗関税の計画を発表。4月1日から中旬にかけて、260億ユーロ相当の米国製品に関税を発動させていくとしている。米国製品への高関税はユーロ圏での物価上昇圧力として働くとみられ、ECBの利下げを難しくするユーロ高の材料だ。
また、トランプ政権のウクライナ支援に慎重な姿勢が欧州の軍事費拡大につながる見通しも強まっている。軍事費を含む歳出拡大もやはり、ユーロ圏での物価上昇圧力となりえる。ドイツの次期首相と目されるフリードリヒ・メルツ・キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)党首は4日、憲法改正を伴う国防支出などの歳出拡大を行う意向を表明した。また欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長も4日に「欧州再軍備計画」を発表。加盟国の防衛システム強化やウクライナ支援を念頭においた1500億ユーロ規模の融資に加え、EUの財政規律枠組みの運用を停止することで4年間で6500億ユーロの支出が可能になるとしている。
ECBの利下げ見通しは後退 4月の確率は37%まで低下
こうした中、金融市場ではECBの利下げ見通しが後退している。ブルームバーグによると、ECBが4月の理事会で利下げすることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間13日午後3時段階で37%程度。2024年末の段階では、ECBが6月までの理事会すべてで利下げを行うとの見方が有力(26日)だったが、見通しは大きく変化した。
実際、ECBは5、6日の理事会で5会合連続での利下げを決め、政策金利の下限にあたる中銀預金金利を2.50%としたが、追加利下げには慎重な立場を強調した。クリスティーヌ・ラガルド総裁は6日の記者会見で「われわれは巨大な不確実性に直面している」と指摘。「最適な判断は利下げを行わないことだと経済指標が示唆するのであれば、利下げを停止する」と述べ、利下げの方向性は明確だとしてきた従来の立場を軌道修正した。
また、ラガルト氏はこれまでの利下げ幅が1.50%ポイントに達していることを踏まえ、「金融引き締めの度合いはかなり小さくなっている」と分析。物価上昇率の低下は順調に進んでいるが、当面は、現状以上の利下げが必要なくなる可能性を示唆した。
円高進行はユーロ円相場にも影響 日銀の追加利上げの姿勢に注目
ただ、FX市場ではドル円相場(USD/JPY)での円高も進んでいる。ブルームバーグによると、円の対ドル相場は12日のニューヨーク市場の終値段階で、2月末と比較して1.61%の円高が進行。同じ期間でユーロの対ドル相場(EUR/USD)が4.94%もユーロ高に振れている勢いには及ばないものの、ユーロ円相場でのユーロ高を抑制する効果を生んでいる。

このためユーロ円相場の今後の見通しをめぐっては日銀の動向も重要となりそうだ。日銀は足元で進む長期金利(10年物国債利回り)の上昇を静観しており、円高圧力として働いている。日銀が18、19日に開く金融政策決定会合は政策金利が維持される見通しだが、植田和男総裁の記者会見などで追加利上げへの姿勢が変化した場合には、ドル円相場の揺らぎを通じてユーロ円相場がユーロ高方向にもユーロ安方向にも動く可能性がある。
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