ユーロ高急進159円台 ドイツ歳出拡大見通し ECBは利下げ確実
ユーロ円相場は半月ぶりの159円台。ドイツの財政政策の転換が材料視された。ECBは6日に利下げを決める見通しだが、ユーロ高圧力は続きそうだ。

ユーロ円相場でユーロ高が急進した。4日のニューヨーク市場の終値は159円台で、前日から約2.4円のユーロ高。終値での159円台は半月ぶりだ。ドイツの次期首相と目されるフリードリヒ・メルツ氏が憲法上の借り入れ制限を緩和する意向を示し、ドイツの歳出拡大が経済活性化につながるとの思惑が影響した。一方、欧州中央銀行(ECB)は5、6日に開く理事会での5会合連続での利下げが確実視され、ユーロ安材料になりえる。欧州連合(EU)はアメリカのドナルド・トランプ大統領が打ち出す高関税に直面する可能性もあり、経済の先行き不透明感は強い。ただ、ドイツの政策転換は物価上昇圧力として働くことも考えられ、ユーロ円相場の今後の見通しをめぐってはユーロ高圧力が意識されやすい展開が想定されそうだ。
ユーロ円相場は4日終値で159円台 半月ぶりのユーロ高水準
ユーロ円相場(EUR/JPY)の4日のニューヨーク市場の終値は1ユーロ=159.17円で、前日比2.38円のユーロ高。ブルームバーグによると、終値としては2月14日(159.83円)以来、2週間半ぶりのユーロ高水準となった。

ドイツのメルツ次期首相が憲法改正を伴う歳出拡大の意向を表明
ユーロ高に火をつけたのは2月23日のドイツ総選挙で第一党となった中道右派「キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)」を率いるメルツ党首の発言だ。ブルームバーグによると、メルツ氏は4日、憲法を改正して国防支出を連邦政府の歳出に関する制限の例外とする意向を表明。トランプ政権がウクライナ支援に慎重な姿勢を示していることを踏まえ、連邦政府予算に関する「必要な決断を先送りすることはできない」と述べた。メルツ氏は主要政党が5000億ユーロのインフラ投資基金の設立で合意したことも明らかにしている。
国際通貨基金(IMF)によると、ドイツの2024年の実質成長率はほぼ0%とみられ、主要7か国(G7)内で最低。2023年にはG7内で唯一のマイナス成長に陥っていた。一方、政府債務のGDP比はG7内で最も低く、次期政権が歳出拡大へと舵を切れば、ドイツ経済復活の見通しが強まる。ドイツ経済はユーロ圏で最大の規模を持つだけに、ユーロ高要因として意識されたようだ。
ユーロの対ドル相場(EUR/USD)の4日の終値は前日比1.33%高となり、ポンドの対ドル相場(GBP/USD)の0.74%高や、豪ドルの対ドル相場(AUD/USD)の0.76%高を上回る値上がりとなった。4日の円はドルに対して0.19%の円安だった。

ECBは6日の利下げが確実 トランプ氏のEU製品への高関税はユーロ安要因か
一方、ユーロ円相場をめぐっては、ECBが日本時間の6日午後10時15分に発表する理事会の結果も注目される。ブルームバーグのデータによると、0.25%幅の利下げが決まることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間5日午前11時段階で100%を超えている。ECBは1月30日に終わった前回理事会まで4会合連続で利下げを決定。3月理事会でも利下げ継続が既定路線になっているといえ、ユーロ安要因として意識される可能性がある。
利下げ見通しが強まっている背景にはECBの物価上昇抑制への自信がある。クリスティーヌ・ラガルド総裁は2月10日、欧州議会に出席し、物価上昇抑制のプロセスは「順調に軌道に乗っている」と説明。基調的な物価上昇に関する指標のほとんどが「物価上昇が持続的にわれわれの目標近辺で定着することを示唆している」と述べた。ECBは2024年12月の理事会に際して発表した経済見通しで、消費者物価指数(CPI)の総合指数の伸び率について2025年4-6月期以降は2%前後で推移するとしている。
さらにユーロ圏経済が直面する米国との通商関係の悪化のリスクもユーロ安要因とみることができる。トランプ氏は2月26日に自動車を含むEUからの輸入品に25%の関税をかける意向を表明。発動時期などは明らかではないが、EUが米国製品にかける関税の水準などに不満を抱いていることは間違いない。EUと米国の通商関係悪化がEU経済の足を引っ張れば、ECBは利下げで経済を下支えする必要が出てくる。
ユーロ圏の物価上昇鎮静化の見通しは? ラガルド氏の会見に注目
ただ、ECBの金融政策をめぐっては、ユーロ圏の物価上昇率が想定通りに下がっていくかに不安も出てきそうだ。ドイツの歳出拡大が現実になれば、ユーロ圏の物価上昇を加速させることも考えられる。また、3月3日に発表されたユーロ圏の2月CPIの伸び率は、総合指数で前年同月比2.4%となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の2.3%を上回っていた。食品、エネルギー、酒類、タバコを除いたコア指数の伸び率は2.6%で、やはり市場予想(2.5%)を上回り、3日のユーロ円相場はユーロ高に振れている。

こうした中、ラガルド氏が6日の理事会後の記者会見で、物価上昇鎮静化に関する自信を後退させたと受け止められれば、ユーロ円相場でユーロ高の材料として働く可能性もありそうだ。
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