米FRBの利下げ観測じわり 来春には決断か それでも円安151円
金融市場ではFRBが2024年5月には利下げに踏み切るとの見方が優勢。今後のドル安圧力として働く可能性がある。
米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ方向への転換が意識され始めている。金融市場ではFRBが2024年5月までに利下げに踏み切るとの観測が優勢。アメリカの物価上昇減速が14日に確認され、利上げで物価を抑える必要性が薄れたとの見方が広がっているからだ。一方、15日の金融市場では長期金利(10年物米国債)が上昇し、外国為替市場では再び1ドル=151円台まで円安ドル高が進んだ。しかし米国の政治状況の改善もあって、今後も米国の物価情勢に変化がなければ長期金利低下が進みそうで、円安ドル高の流れに変化が出る可能性もある。
米FRBは2024年5月までには利下げか
米CMEグループのデータによると、FRBの政策金利が2024年5月1日までの連邦公開市場委員会(FOMC)後に現状よりも低くなっていることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間の16日午後1時すぎの段階で約61%。36%程度だった14日午前の水準から、利下げ観測が強まっている形だ。14日に発表された10月の消費者物価指数(CPI)の伸び率が市場予想を下回ったことで、FRBが追加利上げで経済活動を冷やし、物価上昇を抑え込む必要性がなくなったとみられている。
これに対してFRBのジェローム・パウエル議長は物価上昇との闘いが長期化することへの警戒を解いていない。FRBは9月公表の経済見通しでは2024年末の政策金利は現状よりも0.25%低いだけの、5.00-5.25%になるとの見立てを示していた。しかし金融市場はこうした警告を意に介していないようだ。金融情報会社リフィニティブのデータでは、2024年12月の政策金利は4.4%程度と見込まれており、0.25%の利下げが約4回行われると想定されていることになる。
アメリカの長期金利は15日は上昇
一方、15日の金融市場では長期金利が上昇した。この日発表された10月の小売売上高が前月比0.1%減となり、市場予想(0.3%減)を上回ったためだ。市場が想定していたほどに米国経済が冷えていないことが金利の先高観を強め、15日のニューヨーク債券市場の長期金利の終値は4.537%となった。前日よりも0.096%ポイント高い水準だ。
こうした中、ドル円相場(USD/JPY)では円安ドル高も進んでいる。15日のニューヨーク市場の終値は151.35円で、前日比0.97円の円安ドル高。10月CPI発表後には150.20円程度まで円高が進む場面もあったが、効果は1日で消えた形だ。15日に発表された日本の2023年7-9月期のGDP速報値で実質成長率が3四半期ぶりのマイナスとなったことも円が売られる要因になった。
アメリカの政府機関閉鎖は当面は回避へ
ただ、ドル高の裏付けである米国経済の強さには不安もある。10月の小売売上高の伸び率は市場予想を上回ったとはいえ、7か月ぶりのマイナスという悪い結果。約16年ぶりの高水準にある長期金利が経済活動を下押ししていることは間違いないようだ。さらに、10月の雇用統計では失業率が2022年1月(4.0%)以来の水準である3.9%まで上がるなど、労働市場の過熱感も和らぎ始めている。今後、FRBが景気後退リスクを警戒して早期の利下げに踏み切る可能性は拭えない。
また、長期金利上昇の背景となっていた米国政治の混乱には改善の動きが出た。米下院では14日、2024年1月半ばまでの予算を確保する法案が、多数派の共和党議員の6割程度と民主党議員のほぼ全員の支持を受けて可決。この法案は上院でも15日に両党の支持で可決され、17日に現在のつなぎ予算が期限切れとなった後も、政府機関一部閉鎖は当面の間は回避される見通しとなった。政治の混乱が米国債の売りと価格下落につながり、結果として長期金利が上がるというシナリオは遠のいた。
このため今後も物価上昇減速が続けば、アメリカの長期金利に対する低下圧力が強まる可能性がある。ドル円相場にとってはドル安圧力といえ、日本政府による為替介入の可能性とともに、ドルの上値を重くしそうだ。
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