米政策転換の加速とその影響
FOMC議事要旨は米政策転換の加速を示唆する内容とだった。米金利には上昇圧力が高まり米ドル相場をサポートしている。一方、米金利が短期間で急速に上昇する場合、米国株の下落リスクを高める要因となり得る。ドル円の焦点は?詳細はマーケットレポートをご覧ください。
米政策転換の加速とその影響
【サマリー】
・FOMC議事要旨を受け3月会合の利上げ確率が75%前後へ上昇
・米長期金利の上昇で実質金利のマイナス幅は縮小傾向にある
・現在の実質金利の動きは米ドル相場のサポート要因となる
・米金利の急速な上昇は米国株にとってリスク要因となる
・ドル円の焦点とチャートポイントについて
・FOMC議事要旨とその影響
昨日公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では労働市場がタイトであること、そして高インフレに対応するため早期の利上げが必要であるとの見解が示された。
パウエルFRBの政策転換(金融緩和政策から金融引き締め政策への転換)で筆者が最も注目しているのが、膨れ上がったバランスシートの縮小を開始するタイミングとそのペースである。この点について一部のFOMCメンバーは、昨年12月の会合で「利上げ開始後、比較的早期にバランスシートの規模縮小を開始する可能性がある」と指摘。今後の景気動向次第で、パウエルFRBは政策転換を加速させる可能性が出てきた。
なお、今回の内容を受け、短期金融市場では3月FOMCでの利上げ確率が73%前後まで上昇している(一部の報道では約80%まで上昇)。
今年、多くの投資家の注目を集めるのが米債市場である。パウエルFRBが政策転換を加速させる可能性が出てきたことや3月の利上げ確率が上昇していることを受け、米債市場では各年限の金利に上昇の圧力が高まっている。
市場参加者が注視する長期金利は、昨年何度も上昇を止めた1.7%台をトライする展開となっている。この動きを受け、実質金利(10年)は-0.85%前後と、昨年9月下旬以来の水準までマイナス幅が縮小している。
米金利のチャート
・実質金利の動きは米ドル相場のサポート要因 米国株にとってはリスク要因
「米金利の上昇→実質金利のマイナス幅縮小」は、米ドル相場のサポート要因である。事実、昨日はFOMC議事要旨が公表された後、米ドル安優勢の状況が一変し、米ドル買い優勢の展開となった。
ドル円(USDJPY)は116円台を回復する一方、ユーロドル(EURUSD)やポンドドル(GBPUSD)は反落した。
一方、米金利の上昇とそれに伴う実質金利のマイナス幅縮小が今後も続く場合は、米国株-特に高PERのハイテクグロース株にとっては下落のリスクを高める要因となろう。
また、パウエルFRBの金融引き締めペースの加速は、米国の株式市場全体にとってリスク要因となり得る。この点については、昨日の銀行株の動き(金利上昇の恩恵を受ける銀行株でさえ下落した展開)が示唆している。米金利が上昇し米国株が下落する局面では、資源国通貨や新興国通貨の下落を警戒したい。
米国株価指数のチャート
・ドル円のチャートポイント
昨日の米国市場は金利が上昇する一方で米国株は下落した。この動きを受けドル円(USDJPY)は、116円を挟んで売り買いが交錯した。この動きは、米金利の上昇がドル円をサポートするが、上昇幅の拡大には株高の維持が重要な要因であることを示唆している。
パウエルFRBが政策転換の加速を模索していることが判明したことで、目先の米国株はこの点のリスクを消化するための時間が必要となる。よって、今日のドル円は米金利にサポートされながらも上値の重い展開が予想される。
ドル円が反落する場合、目先の焦点は昨日の反落を止めた115.60レベル、および21年の最高値115.51レベルの攻防となろう。直近高安の半値戻し(115.64)は前者の水準(115.60)にあたる。一方、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準115.48は、後者の水準(115.51)にあたる。
FEDによる政策転換の加速が短期的にリスク回避の圧力を高める場合は、これらサポートポイントの下方ブレイクと115.00トライを想定しておきたい。
一方、ドル円が上昇トレンドを維持する場合は、今月4日の高値116.34レベルの突破が焦点となろう。昨日の高値116.24の突破は、116.34トライのシグナルと想定したい。
ドル円のチャート
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