【外為市場の週間展望】今週の注目材料、ユーロドルの見通しとチャートポイントについて
外為市場では、米ドル安の圧力がじわりと高まる状況にある。今週も経済指標が米ドル相場の変動要因となろう。FRB高官らの言動が材料視される可能性もある。米ドル相場のトレンドに大きな影響を与えるユーロドル(EURUSD)の見通しは?注目しておきたいチャートポイントは?詳細は、IG為替レポートをご覧ください。
※今週のドル円の展望については、こちらのレポートをご覧ください
サマリー
・今週の注目材料は、米欧のインフレ指標とFRB高官の言動となろう
・米ドル高の調整相場がさらに加速するかどうか?この点に注目したい
・ユーロドルの上昇局面では、3つの水準の攻防に注目したい
・一方、ユーロドルが反落する場合は、2つの移動平均線の維持が焦点となろう
今週の注目材料と米ドル相場の展望
注目材料1:米国のインフレ指標(10月個人消費支出価格指数)
米債市場では、長期ゾーン利回り(以下では米金利)の低下に一服感が漂っている。
10年債利回りは4.35%付近がレジスタンスからサポートへ転換するムードにある。30年債利回りもひとまず下げ止まっている。
米金利のチャート:日足 23年8月以降
インフレが鈍化の傾向にあることを示唆した10月消費者物価指数(CPI)と7か月ぶりに減少した同月の小売売上高が発表された後に米金利の低下幅が拡大している。
この反応を考えるならば、今週の米債市場は引き続き経済指標の内容でトレンドが左右されるだろう。ゆえに米ドル相場も経済指標にらみの展開が予想される。
今週は28日の11月消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)を含め、米国の重要な経済指標がいくつか発表される。
なかでも市場参加者の注目度が高いのが、30日に発表される10月の個人消費支出(PCE)価格指数となろう(以下ではPCEデフレーター)。
特に米金利と米ドル相場の変動要因となり得るのが、連邦準備制度理事会(FRB)が注視しているコア指数の動向である。現時点での市場予想を確認すると前月比は0.2%、前年同月比は3.5%と、それぞれ9月の0.3%、3.7%から低下する見通しである。
米国 個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の動向:月次 22年10月以降
米ドル相場の展望
上で述べたとおり、インフレの鈍化傾向を示した10月CPIが、米金利の低下幅拡大の一因となった。
パウエルFRBが注視するPCEコアデフレーターでもその傾向が確認される場合は、米金利の低下要因となろう。米金利の低下は米国株の押し上げ要因となろう。
この状況(米金利の低下と米株高が同時に発生する状況)が発生すれば、外為市場では米ドル安が最も進行することが予想される。特に、リスク資産価格との相関性が高い豪ドルやNZドル、そして反発基調にあるユーロや英ポンドで米ドル安の展開が予想される。
一方、PCEコアデフレーターでインフレ圧力の根強さが確認される場合は、短期間で進行した米債ロングを調整する展開が予想される。このケースでは、「米金利の反発→米ドルの買い戻し」を想定しておきたい。
米ドル買いの持続性は、他の経済指標の結果に左右されるだろう。PCEコアデフレーターがインフレ圧力の根強さを示唆すると同時に、11月の消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)や同月ISM製造業景況指数で米国経済の底堅さが確認される場合、今週は米ドルが買い戻される1週間となる可能性がある。
今週の米ドル相場で注目しておきたいこととは?
米ドル相場の大まかなトレンドを表すドルインデックス(DXY)の動向を確認すると、日足ローソク足の実体ベースで200日線を完全に下方ブレイクする状況にある。
そして7月安値と10月高値の半値戻しの水準103.46レベルを下方ブレイクしつつある(下チャートの赤ゾーンを参照)。
21日線と50日線がデッドクロスの状況にあることも考えるならば、米ドル相場の地合いは弱い。この点は、MACDの低下トレンドも示唆している。
ゆえに、今週の外為市場では、米ドル高の調整相場がさらに進行するかどうか?この点が焦点となろう。
上で述べた米国の経済指標が米金利の低下要因となれば、ドルインデックスはフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準102.54レベルを視野に、下落幅が拡大する展開を想定しておきたい。
一方、今週の米経済指標がドルインデックスの反発要因となっても、5月31日の高値104.70レベルで戻りが止められる場合は、米ドル相場の地合いの弱さを市場参加者に印象付けよう。
ドルインデックスのチャート:日足 23年5月以降
注目材料2:FRB高官の言動
今週、米国の経済指標以外で注目したいのが、FRB高官らの言動である。
28日にウォラーFRB理事が経済見通しに関する討論会に参加する。また、クリーブランド地区連銀のメスター総裁やシカゴ地区連銀のグールズビー総裁らの講演も予定されている。
彼らの言動は、短期的な相場の変動要因として注目しておきたい。例えば、上で述べた米国の経済指標が米ドル安の要因となる場合、FRB高官からタカ派の言動があれば、米ドルの短期的な買戻しが予想される。
注目材料3:ユーロ圏のインフレ指標
今週は米国の経済指標の他、30日に発表されるユーロ圏の11月消費者物価指数(速報値)も米ドル相場の変動要因になり得る。
現時点での市場予想(前年同月比)は総合が2.7%、コア指数が3.9%と、10月の2.9%および4.2%から鈍化する見通しとなっている。
欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は24日、ECBは多くのことを行い、現在は引き締めの影響を見極める段階にあると述べた。情勢次第では追加の利上げに備えるスタンスを維持しているが(10月の議事要旨)、前回の理事会で政策金利を据え置いたことも考えるならば、FRBと同じくECBも利上げサイクルの終了を意識する局面にある。
短期金融市場は、この点(ECBの利上げサイクル終了)を完全に織り込んでいる。そして、早ければ来年4月の利下げを意識し始めている。
この状況で11月の消費者物価指数がインフレの鈍化傾向を示す場合は、短期間で上昇幅が拡大しているユーロドル(EUR/USD)の反落要因となろう。
ユーロ圏のインフレ鈍化が確認される一方で、10月のPCEデフレーターが米国内のインフレ圧力の根強さを示す場合、ユーロドルの下落幅が拡大する可能性がある。
ユーロ圏 消費者物価指数の動向:月次 22年11月以降
ユーロドル、今週の見通しとチャートポイント
上昇局面で注目しておきたい3つのチャートポイント
日足チャートでユーロドル(EUR/USD)のトレンドを確認すると、10月に底打ち感を強め、11月に米ドル安がサポート要因となり、トレンドチャネルの上限や200日線を難なく突破する状況にある。日足のMACDも上昇基調にあり、テクニカルの面ではユーロドルの地合いの強さが示されている。
今週もユーロドルが上昇トレンドを維持する場合、注目しておきたい水準が3つある。
最初に注目したい上値の水準が、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準1.0960レベルである。このテクニカルポイントは、先週の上昇相場を止めた経緯がある。ゆえにこの水準の突破は、ユーロドルがさらに上値をトライするシグナルとなろう。
ユーロドルが1.0960レベルを完全に突破する場合、次に注目すべき上値の水準は、節目の1.10レベルである。
ユーロドルが1.10台へしっかりと上昇してくる場合は、今年の7月下旬から8月上旬にかけて相場の反発を止めた経緯のある1.1050レベルのトライが焦点として浮上しよう。
ユーロドルのチャート:日足 23年7月以降
反落局面でのチャートポイントは?
一方、今週ユーロドル(EUR/USD)が反落するならば、そのきっかけは上で述べた米欧の経済指標となる可能性が高い。
ユーロドルが下値をトライする場合に注目したいのが、200日線の “サポート転換” である。この移動平均線は今日現在、1.0811レベルで推移している(上の日足チャート、赤ラインを参照)。
200日線が相場の反落を止める場合は、ユーロドルの地合いの強さを市場参加者に印象付けよう。
短期サポートラインと1.0830レベルの下方ブレイクは、200日線をトライするシグナルと想定しておきたい。
200日線の攻防は、1.08台を維持できるかどうか?この点を見極める攻防でもある。ゆえに、ユーロドルがこの移動平均線を下方ブレイクする場合は、これまでの上昇を調整する相場が進行する展開を警戒したい。
ユーロドルが1.08レベルを完全に下方ブレイクする場合、まずは1.0750レベルでの攻防に注目したい。この水準は、レジスタンスからサポートへ転換する可能性がある。
ユーロドルが1.0750レベルをも完全に下方ブレイクする場合は、1.07割れおよび11月上旬に相場をサポートした経緯のある1.0660レベルのトライを想定しておきたい。
上の日足チャートを確認すると、50日線が1.0660付近まで上昇している。テクニカルの面でも1.0660レベルを短期スパンでの重要なサポートの水準と想定しておきたい。
ユーロドルのチャート:4時間足 11月以降
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