地政学リスクでNY金続伸、パラジウムはゴールドを凌ぐ上昇率、目先の見通し
現在の国際商品市況は、ロシアーウクライナの地政学リスクがテーマとなっている。このリスクの高まりで、安全資産としての金(ゴールド)買い需要が高まっている。一方、供給懸念の高まりでパラジウムの上昇率はゴールドを凌ぐ。地政学リスクが共通テーマの金価格とパラジウム。目先の見通しについて。
記事のポイント
- ロシアーウクライナの地政学リスクでパラジウムに供給懸念、ゴールド以上の上昇率
- パラジウム、今は新たなレジスタンスラインの見極めが焦点に
- NY金、高まるゴールド需要で2,700ドルが視野に
ロシアーウクライナの地政学リスクでパラジウムに供給懸念、ゴールド以上の上昇率
現在の国際商品市況はロシアーウクライナの地政学リスクを受け、資源の供給懸念がテーマとなっている。注目はパラジウム価格の動きである。以下に注目ポイントをまとめた。
・19日未明にウクライナ軍は、アメリカから供与された射程の長いミサイルATACMS(エイタクムス)でロシア東部を攻撃した。ロシア軍は中距離弾道ミサイルで応戦した(ロシアのプーチン大統領)。ウクライナ軍は長距離弾道ミサイル「ICBM」をロシア軍が使用したと指摘している。両国の主張に隔たりはあるが、この地域での地政学リスクが一段高まったことは確かだろう
・地政学リスクの高まりは、資源の供給懸念を高めている。天然ガス先物価格は今週、18%急騰している。もう一つ注目したい資源価格が、パラジウムである
・統計データ会社のStatistaによれば、ロシアのパラジウム生産量は昨年に推定92トンへ達し、2位の南アフリカの71トンを大きく突き放している。ゆえに、現在の地政学リスクの高まりはロシア産パラジウムの供給懸念を強めている。スポット価格は今週に入り9%急騰している。金(ゴールド)の4.9%を凌ぐ上昇率である
スポット価格のパラジウムと金の週間騰落率:11月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 22日 14時時点
パラジウム、今は新たなレジスタンスラインの見極めが焦点に
1,050突破なら1,120が視野に
スポットのパラジウム価格は現在、テクニカルの面で重要な局面に差し掛かっている。目先、注目しておきたいレジスタンスラインを以下にまとめた。
・日足のMACDはゼロラインを下回るも、ゴールデンクロスへ転じている。モメンタムはゼロラインを突破してきた。強気地合いに勢いが出始めていることを示唆する動きである(一番下の日足チャート、黒矢印を参照)
・今日以降もウクライナとロシアでミサイルの応酬など、戦闘激化のヘッドラインが流れる場合、パラジウム価格は50日線と21日線が展開している重要レジスタンスラインの1,050ドルを突破することが予想される
・これら2つの移動平均線がサポートラインへ転換すれば、下で取り上げているレジスタンスラインを視野に、さらなる上値トライを想定しておきたい
・特に1,120ドル前後は9月の高値水準であり、かつフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準にあたる。現在の反発相場を止めるレジスタンスラインになり得る
レジスタンスライン
・1,120前後:9月高値、フィボナッチ・リトレースメント61.8%
・1,085:半値戻し
・1,050:50日線、21日線
反落の局面では100日線の維持が焦点に
これ以上のエスカレーションを避けるために、ロシアとウクライナが一時的な休戦の妥協案を模索する動きが出る場合は、ひとまず地政学リスクが後退しよう。このケースではパラジウムの調整売り想定しておきたい。注目のサポートラインを以下にまとめた。
・地政学リスクが一時的にせよ後退する場合は、パラジウムに調整売りの圧力が高まろう
・地政学リスク以外の下落要因で注目したいのが、米ドル高である。「トランプトレード」の米ドル高局面でパラジウム価格は、金価格以上に下落した(上の騰落率チャートを参照)
・反落の局面で注目したいのが、100日線の「サポート転換」である。この移動平均線は現在、心理的な節目の1,000ドル真下で推移している。節目(100日線)の維持は、地合いの強さを市場参加者に印象付けよう
・一方、100日線を下方ブレイクすれば、975ドルのトライを想定しておきたい。この水準もサポートラインへ転換する可能性がある
サポートライン
・1,000:心理的な節目の水準
・995:100日線
・975:サポートラインの転換が焦点に
スポットのパラジウム価格:日足 24年9月以降
出所:TradingView
NY金、高まる安全資産の需要で2,700ドルが視野に
2,700ドル台の上昇が焦点に
パラジウムのトレンドを予想するために、NY金の動きを常にチェックしたい。ロシアーウクライナの地政学リスクは安全資産としての金(ゴールド)買いを促し、短期的にパラジウムと同じトレンドを描くと思われるからだ。
今日も強気相場を維持すれば、下で取り上げているレジスタンスラインのトライが焦点となろう。
・スポットの金価格は50日線のみならず、21日線をも突破してきた。21日の外為市場では米ドル高優勢となったが、その影響を跳ね除けて続伸する今の状況は、ロシアーウクライナの地政学リスクの影響が如何に大きいかを物語っている
・日足のMACDはゴールデンクロスへ転じつつある。モメンタムはゼロラインを上回りつつある。2つの移動平均線のブレイクアウトも考えるならば、金価格は2,700ドルのトライを想定する局面にある。フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準2,693ドルの突破は、2,700ドルをトライするサインと捉えたい
・金価格が2,700ドル台へ到達する場合は、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準2,730ドルのトライが次の焦点として浮上しよう。このテクニカルラインは、レジスタンスへ転換する可能性がある。11月8日の高値2,711ドルの突破は、76.4%戻しをトライするサインと捉えたい
レジスタンスライン
・2,730:フィボナッチ・リトレースメント76.4%(4時間足)
・2,711:11月8日の高値(4時間足)
・2,700:節目の水準
・2,693:フィボナッチ・リトレースメント61.8%(4時間足)
スポットの金価格:4時間足 10月28日以降
出所:TradingView
反落局面での焦点は?
今日は11月の米購買担当者景気指数(PMI)速報値が発表される。予想以上となれば、米金利の上昇要因になり得る。米金利の上昇は米ドル高を促そう。米ドル高は、金価格の反落要因となろう。焦点を以下にまとめた。
・11月のPMI速報値が米ドル高の要因となる場合は、金価格の反落を想定しておきたい。しかし、今はロシアーウクライナの地政学リスクが国際商品市況のメインテーマとなっている。ゆえに単月の米経済が売り要因となっても、下落幅は限定的となることが予想される
・50日線がサポートラインとなるか?反落の局面では、この点が最初の焦点となろう。金価格が50日線で反発する場合は、2,700ドル台を視野に反発相場の維持を想定しておきたい
・一方、金価格が50日線を下方ブレイクする場合は、米ドル高が再び進行する展開が予想される。このケースでは、来週以降75日線を視野に下落幅が拡大する展開を想定しておきたい。75日線の攻防では、2,600ドル維持の見極めが焦点となろう
サポートライン
・2,663:50日線(日足)
・2,610:75日線(日足)
・2,600:サポートライン
スポットの金価格:日足 24年8月以降
出所:TradingView
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