NY金の見通し、ウクライナ情勢の緊迫化でゴールド買いも米ドルの動向を注視

記事のポイント

• ウクライナ情勢は一層危険な領域へ、地政学リスクの高まりでゴールド買い
• NY金が続伸、スポットは50日線が視野に
• 米ドルの動向次第では反落を警戒

ウクライナ情勢は一層危険な領域へ、地政学リスクの高まりでゴールド買い

ロシア政府は19日、ウクライナがアメリカから提供された射程の長いミサイル「ATACMS（アタクムス）」でロシア西部ブリャンスク州の兵器庫を攻撃したと発表した。

・米CNNによれば、発射された弾道ミサイルは6発で、うち5発はロシアの防空システムが迎撃し、残り1発は損傷したという

・ロシアのプーチン大統領は19日、同国の核ドクトリンの改定に署名した。注目すべきは、核保有国の支援を受けたロシアに対する通常兵器で、主権と領土保全に対する重大な脅威がもたらされた場合に核攻撃を検討する可能性があるとしたことである

・ウクライナ情勢が一層危険な領域へ突入したことで、安全資産としての金（ゴールド）買いが続いている

NY金続伸、スポットは50日線が視野に

緊迫化するウクライナ情勢を受け、NY金の反発が続いている。今日以降も金（ゴールド）買いが続く場合は、以下で取り上げるレジスタンスラインの攻防に注目したい。

・昨日のIGコモディティレポートで、NY金は短期的な調整の反発を意識する状況にあると述べた。スポットの金価格（以下では金価格）は10日線を突破し、現在は昨日取り上げたレジスタンスライン2,644ドルの攻防にある

・金価格が2,640ドルを完全に突破すれば、50日線のトライが焦点に浮上しよう。この移動平均線は今日現在、2,658ドル付近で推移している。

・金価格が50日線をも突破する場合は、フィボナッチ・リトレースメント76.4％の水準2,670ドルの攻防が視野に入る

レジスタンスライン
・2,670ドル：フィボナッチ・リトレースメント76.4％（1時間足）
・2,658ドル：50日線（日足）
・2,644ドル：半値戻し、フィボナッチ・リトレースメント61.8％（1時間足）

米ドルの動向次第では反落を警戒

しかし米ドルの動向次第では、レジスタンスラインで金価格が反落する展開を想定しておきたい。注目のサポートラインを以下にまとめた。

・米長期金利（10年債利回り）が再び4.4％台へ上昇している。金利の反発を受け、外為市場では米ドル安が一服ムードにある。海外市場で米ドルの買い戻しが進行する場合は金価格の上昇を抑制するだけでなく、反落の要因にもなろう

・上で取り上げたレジスタンスライン、特に2,644ドルの突破に失敗し金価格が下値をトライする場合は、2,620ドル付近で推移している10日線の攻防に注目したい。2,620ドルは、サポートラインへ転換する可能性がある

・金価格が2,620ドルを完全に下方ブレイクする場合は、2,600ドルの維持が焦点となろう。昨日の安値2,610ドルの下方ブレイクは、2,600ドルをトライするサインと捉えたい

・テクニカルの面で2,600ドルは、14日の安値と本日アジア時間の高値のフィボナッチ・リトレースメント38.2％の水準にあたる。

サポートライン
・2,620：10日線、サポートラインへ転換する可能性あり（1時間足）
・2,610：11月19日の安値
・2,600：フィボナッチ・リトレースメント38.2％（1時間足）

金価格：日足 24年7月以降

出所：TradingView

金価格：1時間足 11月以降

出所：TradingView