NY金 調整ムードもトランプリスクが下支え 金価格の週間見通し
調整ムードのNY金相場。しかし、トランプ米政権の政策がもたらす不確実性は安全資産としてのゴールドの需要を高めている。下値では引き続き押し目買いを考えたい。金価格の週間見通し。
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記事の概要
先週のNY金相場は下落して終えた。スポットの金価格(以下では金価格)は週次で2.6%下落し9週連騰はならなかった。週明けの金価格は買い先行でスタートした。しかし上昇幅は限定的で、今週も調整相場が続く可能性がある。だが、トランプ米政権の政策がもたらす不確実性は、安全資産としてのゴールドの需要を高めている。下値では引き続き押し目買いを考えたい。金価格の週間予想レンジは2,810~2,910ドル。
目次
NY金 週次2.6%の下落、9週連騰ならず
2025年に入り、NY金相場は最高値を更新する状況が続いてきた。スポットの金価格(以下では金価格)は8週連続で上昇していた。しかし先週は2.6%の下落で終え、9週連騰はならなかった。
テクニカルの面では、10日線と一目均衡表の転換線(日足)がレジスタンスラインへ転じる兆しが見られる。日足のMACDはデッドクロスとなり、ゼロラインを視野に低下基調にある。週明けは買い先行でスタートしているが、上昇幅が限定的であることを考えるならば、今週も調整相場を警戒したい。
スポット金価格の週間騰落率:2024年9月以降
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ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 2月28日までの動向
トランプ米政権がもたらす不確実性が金価格の下支え要因に
根深い欧州の地政学リスク
上値の重い金価格だが、相場を取り巻く環境はむしろ買い要因に囲まれている。その要因として現在注視すべきが、トランプ米政権の政策とそれがもたらす不確実性である。
国際政治では、ロシアーウクライナ戦争の停戦交渉を巡り不透明感が高まっている。先月28日に米首都ワシントンのホワイトハウスで行われたトランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談は、激しい口論の応酬となった。予定されていた資源協定の締結は見送られた。
一方、欧州では英仏を中心にウクライナ支援の有志国連合を形成する議論が行われ、欧州・ウクライナと米国との軋轢が鮮明となっている。また、有志国連合が結成されても米国抜きでロシアの再侵略を抑止することができるのか?については疑問が残る。根深い欧州の地政学リスクは、安全資産としてのゴールドの需要を高める要因となろう。
トランプ関税が経済にもたらす不確実性
経済の面では、トランプ関税がもたらす不確実性がリスク要因として意識されている。
トランプ米大統領は1日、外国から輸入される木材や関連製品が国家の安全保障に悪影響を与えていないかを調査する大統領令に署名した。今月4日には、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を新たに賦課する。中国の輸入品に対しては、先月4日に発動した10%の追加関税にさらに10%上乗せする。またトランプ米大統領は、欧州の安全保障で溝が深まる欧州(EU)に対しても、自動車をはじめとする全ての輸入品に関税を検討していると明らかにした。
トランプ関税はインフレの再燃につながる。インフレの高止まりは、米国経済を支える個人消費の縮小要因になり得る。事実、先月の経済指標では消費者マインドの低下を示唆する内容が相次ぎ、経済の先行き不安を高めた。
米国経済の先行き不透明感は、先月28日に更新された米アトランタ連銀の国内総生産(GDP)ナウでも示された。1〜3月期の経済成長率予測は年率でマイナス1.5%となった。
米アトランタ連銀のGDPナウ:月次 2021年以降
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ブルームバーグのデータで筆者が作成
金価格 今週の見通しと注目のテクニカルライン
下値での押し目買い、予想レンジの下限は2,810ドル
週明けのスポット金価格(以下では金価格)は買い先行で始まった。しかし上値は重い。今週も調整相場が続く場合は、以下にまとめたサポートラインで押し目買いの好機を探りたい。予想レンジの下限は2,810ドル。
・今日の東京時間に、先月28日にサポートラインとして意識された2,864ドルを下方ブレイクする局面が見られた。この水準がレジスタンスラインへ転換する場合は、同じくサポート転換の可能性がある半値戻しの水準2,854レベルのトライを想定したい(いずれも15分足の黒矢印を参照)
・半値戻しの下方ブレイクは、2月28日のIGコモディティレポートで取り上げた日足の一目基準線をトライするサインとなろう。このテクニカルラインは今日現在、直近高安のフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準にあたる2,843ドル付近で推移している
・金価格が基準線をも下方ブレイクする場合は、日足チャートのフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準2,813ドルを視野に下落幅の拡大を想定したい。このテクニカルラインは、先月4日にサポート転換した経緯がある。今週の予想レンジの下限と想定したい
サポートライン
・2,854:半値戻し(15分足)
・2,843:一目基準線(日足)、76.4%戻し(15分足)
・2,813:38.2%戻し、週間予想レンジの下限(日足)
転換線と10日線の攻防、予想レンジの上限は2,910ドル
今週、金価格が上述のサポートラインを維持する場合は、市場参加者に地合いの強さが戻りつつある印象を与えるだろう。金価格の反発局面では、2つのテクニカルラインの攻防に注目したい。予想レンジの上限は2,910ドル。
・昨年の12月以降、転換線と10日線が重なり合いながら金価格をサポートしてきた。これらのテクニカルラインは現在、レジスタンスラインへ転換する可能性がある。今週の反発局面ではまず転換線の攻防に注目したい。このテクニカルラインは21日線と重なり、レジスタンスラインとして意識されやすい状況にある
・金価格が転換線(21日線)を上方ブレイクする場合は、10日線のトライが焦点に浮上しよう。先月26~27日の反発を止めた経緯を考えるならば、このテクニカルラインは転換線以上にレジスタンスラインとなる可能性がある。今週の予想レンジ上限と想定したい
レジスタンスライン
・2,912:10日線(日足)
・2,894:転換線、21日線(日足)
・2,885:2月28日の高値
金価格のチャート
日足:24年12月以降
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出所:TradingView
15分足:2月28日の欧州時間以降
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出所:TradingView
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