NY金が最高値更新、3200ドル台へ 米関税リスクで再び輝くゴールド 金価格の見通し
10日の市場でNY金が最高値を更新した。強気相場の流れは続き、今日の午前にスポット価格が3,200ドル台へ到達した。再び輝くゴールド。今日の見通し。

記事のサマリー
10日の市場でNY金が最高値を更新した。一方、米国株と米国債は下落した。外為市場では米ドル安が進行し、米国資産はトリプル安となった。VIX指数は先週4日以降、30ポイント以上の水準で高止まりしている。トランプ関税による景気の先行き不透明感を受け、輝きを取り戻すゴールド。スポット価格は本日午前に3,200ドル台へ上昇した。注目のレジスタンスラインは?
NY金が最高値更新、スポット価格の週次上昇率が5%超え
10日の市場でNY金の先物価格(6月物)が前日比98.1ドル(3.2%)高と急騰。1トロイオンス=3,177.5ドルで取引を終え、4月2日の最高値を更新した。
スポット価格も終値ベースで3,154ドルまで上昇した。強気相場を維持し、11日の午前に3,200ドル台へ上昇した。週次の上昇率は5%を超え、今年に入り最大の上げとなっている(レポート掲載時点)。ゴールドが輝きを取り戻している。
スポット金価格 週次変動率:年初来

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 今週の上昇率はレポート掲載時点

出所:TradingView
一方、S&P500を対象とするオプション取引のボラティリティを基にシカゴ・オプション取引所(CBOE)が算出・公表しているVIXが高止まりしている。昨日は54.87ポイントまで上昇する局面が見られた。50ポイント台の到達は4日連続である。先週3日にVIXは30ポイントへ到達して以降、30ポイント以上の水準で高止まりしている。
VIX指数のチャート:日足 3月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成
米金利が上昇してもドル安が続いている。高止まりのVIX指数は米株安が続く可能性を示唆している。これら市場の動向は、安全資産である金(ゴールド)の選好要因となろう。IGコモディティレポートでは金相場の強気見通し維持する。
金価格、米経済指標で今日も急騰する可能性あり
今日の午前にスポット金価格は3,200ドル台へ到達した。調整の反落も限定的である。米経済指標の内容次第では、連日の急騰相場となる可能性があろう。今日は3月の生産者物価指数(PPI)と4月のミシガン大学消費者態度指数および期待インフレ率(速報値)がある。
ブルームバーグがまとめた3月PPIの市場予想は、インフレの粘着性を示す見通しにある。3月の消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回っても米長期金利は上昇基調にある。トランプ関税によるインフレ再燃を意識する動きである。今の状況で3月PPIが予想外に上振れすれば、スタグフレーションの懸念をさらに強めるだろう。
米国 生産者物価指数(PPI):直近1年間

ブルームバーグのデータで筆者が作成
4月のミシガン大学消費者態度指数と期待インフレ率(速報値)も、スタグフレーションの懸念を強める可能性がある。
ブルームバーグがまとめた市場予想では、消費者態度指数(消費者マインド)が3月確報値の57.0 から53.5へ低下する見込みである。一方、1年先の期待インフレ率は5.0%から5.2%へさらに上昇することが予想されている。米連邦準備制度理事会(FRB)が注視する5-10年先の期待インフレ率も4.1%から4.3%へさらに上昇する見通しにある。
ブルームバーグのデータでは、2日連続で金価格の上昇幅が90ドルを超す状況にある(9日の上昇幅:99.43ドル、10日の上昇幅:93.53ドル)。上記の米経済指標でスタグフレーションの懸念がさらに強まれば、金価格は今日も急騰する可能性があろう。
ミシガン大学消費者態度指数と期待インフレ率:直近1年間

ブルームバーグのデータで筆者が作成
金価格、今日の見通しとテクニカルライン
3,290ドルが視野に
スポット金価格は3,200ドル台へ上昇している。一目均衡表は三役好転の状況にあり、日足のMACDはゴールデンクロスへ転じている。さらに、パラボリックでは買いのサインが点灯している。この状況でスタグフレーションの懸念が米経済指標でさらに強まる場合は、安全資産のゴールド買いがさらに進行するだろう。テクニカルの面では、フィボナッチ・エクステンション76.4%の水準3,212ドルの攻防に注目したい。今日の午前にこのテクニカルラインをトライする局面が見られた。
金価格が76.4%の水準を完全に突破する場合は、フィボナッチ・エクステンション100%の水準3,291ドルを視野に上昇幅の拡大を想定したい。上で述べたとおり、直近2日の金価格の上昇幅は90ドル超となった。米経済指標の内容次第では、本日3,291ドルをトライする可能性が十分にあろう。
金価格が3,291ドルを目指すサインとして、3,250ドルの攻防に注目したい。大陽線で3,250ドルを一気に突破する場合は、3,291ドルのトライを意識したい。
レジスタンスライン:日足
・3,291:今日の上限、エクステンション100%
・3,250:レジスタンスライン
・3,212:エクステンション76.4%
金価格のチャート:日足 3月以降

出所:TradingView
山高ければ谷深し、急反落なら3,140ドルまでの下落を想定
相場の格言に「山高ければ谷深し」がある。短期間で上昇幅が拡大し、かつ週末を迎えることを考えるならば急反落を警戒したい。そのきっかけになり得るのが、上で述べた米経済指標である。インフレの鈍化と消費者マインドが予想外の強さを見せる場合、金価格は利益確定売りにより、以下にまとめたフィボナッチ・リトレースメントの攻防を意識したい。
先週4日の市場で金価格は77ドル下落した。今週7日の市場では約55ドル下落した。レポート掲載時点での高値は3,219ドルである。3,219ドルから55ドル下は半値戻しの水準にあたる。77ドル下は76.4%戻しにあたる。後者の水準を今日の下限と想定したい。
なお、金価格が最高値を更新する場合は、その都度新たなフィボナッチ・リトレースメントの水準を確認したい。
サポートライン:15分足
・3,195:23.6%戻し
・3,180:38.2%戻し
・3,167:半値戻し
・3,155:61.8%%戻し
・3,140:76.4%戻し、今日の下限
金価格のチャート:15分足 4月10日以降

出所:TradingView
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