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調整相場が続くNY金価格、フランスの総選挙と米ドル高を警戒、目先の見通しは?

スポットのNY金価格(XAU)は上値の重い状況が続いている。金価格の下落要因として注視しておきたいのが、フランスの総選挙と米ドル高の進行である。目先の見通しは?注目のチャート水準は?


この記事のポイント

・調整相場から脱しきれないNY金価格
・強気相場へ転じたと判断するために必要な3つの材料
・目先は「フランス・リスク」と米ドル高のさらなる進行を警戒したい
・金価格、目先注目しておきたいチャート水準


強気相場の転換と3つの判断材料

スポットのNY金価格(XAU、以下金価格)の上値が重い。

日足チャートで直近のトレンドを確認すると、今月20日に21日線と50日線を大陽線で一気に上方ブレイクし、強気の地合いが戻りつつある状況を示唆した。しかし現状では、この動きは「だまし」となっている。

6月20日以降の動きは、金価格が強気相場へ転じたと判断するために必要な3つの材料を示唆している。

まずは、21日線と50日線の突破だけでなく、これら移動平均線が相場をサポートするかどうか?である。

二つ目は、5月23日以降レジスタンスの水準として意識されている2,380レベルの完全突破である。21日線と50日線が「サポート転換」に成功すれば、2,380以上の攻防へシフトするシグナルと想定しておきたい。

そして最後の材料が、5月20日の高値水準2,450レベルのブレイクアウトである。金価格が2,380以上の水準を維持する状況が続く場合は、2,450レベルのトライ&ブレイクを意識したい。

一方、2,380レベルや2,450レベルを突破できない状況が続く場合は、下で述べるサポート水準のトライを意識する状況が続くだろう。

スポットNY金価格のチャート:日足 24年3月以降

スポットNY金価格のチャート:日足 24年3月以降

TradingView提供のチャートで作成


目先は調整相場を意識する状況が続く

金価格(XAU)は昨日、6月7日を起点とした短期サポートラインを日足ローソク足の実体ベースで下方ブレイクした。この下方ブレイクは「だまし」となる可能性がある。

しかし、21日線と50日線が相場の反発を止めている状況も考えるならば、目先の金価格は、調整相場が続く状況を意識したい。

下値トライの局面で金価格が2,300の水準を下方ブレイクする場合は、6月7日の安値2,286レベル、そしてIGコモディティレポートで注目している重要なサポート水準「2,275」のトライを想定したい。(上の日足チャートを参照)。

金価格の下落を警戒する理由は、下で述べる「フランス・リスク」とそれに伴う米ドル高にある。

スポットNY金価格のチャート:4時間足 5月13日以降

スポットNY金価格のチャート:4時間足 5月13日以降

TradingView提供のチャートで作成


フランスの総選挙と財政悪化の懸念

6月6~9日にかけて行われた欧州議会選挙では、欧州連合(EU)に懐疑的な政治勢力が躍進した。フランスでは右派の国民連合(RN)が支持を集めた。

選挙結果を受け、フランスのマイクロン大統領は議会下院にあたる国民議会を解散し選挙を行うことを表明した。1回目の投票は今月30日に行われる。決選投票は来月7日に予定されている。

マクロン大統領が総選挙の賭けに打って出たことは、ユーロ安の要因となっている。フランス政治の停滞リスクが意識されていることもユーロ安の理由の一つだが、最大の問題は財政収支の悪化にある。

2020年の初頭に発生したコロナパンデミックの対応でフランスの財政収支は悪化している。2023年は対GDP比で5.5%の赤字となり、政府目標の4.9%を大きく上回った。また、EUが定める対国内総生産(GDP)比3%の上限も上回った。

フランス財政収支の状況:2020年以降

フランス財政収支の状況:2020年以降 ブルームバーグのデータで筆者が作成

TradingView提供のチャートで作成


ユーロ安が支える米ドル高

国民連合は減税、電力や燃料に対する付加価値税の引き下げ、そして年金受給の開始年齢引き上げ見直しなどの政策を掲げている。いずれの政策も財政収支を悪化させる要因である。

経済紙の「レゼコー」や調査会社イプソスなどの世論調査では、国民連合の支持率がいずれも30%を超える状況にある。対してマクロン大統領率いる与党「再生」の支持率は20%前後と出遅れている。

今回の総選挙で国民連合が議席の獲得数を大幅に伸ばせば、外為市場ではフランスの財政悪化懸念が強く意識され、ユーロ売りがさらに進行する展開が予想される。そしてユーロ安は米ドル高の要因となろう。

この点について、米ドル相場の大まかなトレンドを示すドル指数(DXY)の動きで確認すると、欧州議会選挙以降、米ドル高へ転じていることが分かる。

5月以降、米債市場では利回りが低下している。米金利の低下は米ドル安の要因である。それにもかかわらず米ドル高優勢にある今の状況は、「フランス・リスク」が顕在化すればユーロ安による米ドル高がさらに進行する可能性を示唆している。

実際に外為市場で米ドル高が進行すれば、金価格の下落要因となろう。ゆえに7月の上旬までの金価格は、上で述べたサポート水準のトライを警戒しておきたい。

ドル指数のチャート:日足 24年3月以降

ドル指数のチャート:日足 24年3月以降

TradingView提供のチャートで作成


NY金価格、注目のチャート水準


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