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NY金は原油高、米金利の上昇、ドル高の三重苦に直面 下落は押し目買いの好機 金価格の展望

中東情勢がさらに混迷している。本来であればこの状況は、金の買い需要を高める要因である。しかし7日の金価格は続落した。その主因は原油高、米金利の上昇そして米ドル高の”三重苦”にある。最高値の更新が続いたことも考えるならば、目先の金価格は短期の調整売りを意識したい。しかし下落の局面では、押し目買いのタイミングを考えたい。

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記事のポイント

・中東情勢の混迷を受け、原油先物価格が今年8月以来の水準まで上昇している
・原油高に連動し米長期金利が4%へ上昇、米金利の上昇は米ドル高の要因に
・今のNY金は原油高、米金利の上昇、米ドル高の”三重苦”に直面している
・しかし金価格の下落局面では、引き続き押し目買いを考えたい


スポット金価格、注目のチャート水準

レジスタンスポイント

・2,700:レジスタンス
・2,685:9月26日高値(IGレート)
・2,670:レジスタンス

サポートポイント

・2,632:フィボナッチ・リトレースメント38.2%
・2,616:半値戻し
・2,600:フィボナッチ・リトレースメント61.8%


中東懸念で原油先物価格が上昇

10月1日にイランがイスラエルに向けて180発以上の弾道ミサイルを発射して以降、中東地域の混乱がさらに深まっている。

イスラエルのネタニヤフ首相は5日、イランによるミサイル攻撃に報復する姿勢を示した。市場参加者の間では、イスラエル軍がイランの石油関連施設へ攻撃するとの見方が強まっている。イランの収入源に打撃を与えることが目的という。イランとイスラエルの対立が激化の様相を呈していることで、中東情勢がさらに緊迫化することが予想される。

中東懸念を受け、国際商品市況では原油先物価格が上昇の一途にある。NY原油先物価格(11月物)は昨日、77.40ドルまで上昇する局面が見られた。そして本日早朝に8月26日の高値水準である77ドル半ばを突破し、78ドル台へ上昇する局面が見られた(下の日足チャート、緑矢印を参照)。チャート分析の観点ではさらなる上昇のサインが点灯した。

NY原油先物価格のチャート:日足 2024年7月以降

NY原油先物価格のチャート:日足 2024年7月以降

出所:TradingView

原油高と連動する米長期金利

中東懸念の高まりは、安全資産としての金の投資妙味を高める要因である。しかし、週明け7日のNY金価格は先物とスポットでともに続落した。主因は、原油高と米10年債利回り(以下では米長期金利)の上昇にある。

この点をチャートで確認すると、原油高と米長期金利はほぼ同じトレンドを形成している。「イランとイスラエルの対立激化→中東地域のさらなる混迷→石油の供給懸念→原油高」の動きに追随し、米長期金利は昨日、約2か月ぶりに節目の4%台に乗せた。

NY原油先物価格と米長期金利のチャート:日足 2024年4月以降

NY原油先物価格と米長期金利のチャート:日足 2024年4月以降

出所:TradingView

米金利と連動する米ドル

そして米長期金利の上昇に連動し、外為市場では米ドル高が再び進行している。今年の7月以降、スポットの金価格(以下では金価格)は米長期金利と米ドル(ドル指数)との間で逆相関の関係が鮮明となっている。直近の金価格の下落は、その関係が続いていることを示している。

米長期金利、ドル指数、スポット金価格のチャート:日足 2024年4月以降

米長期金利、ドル指数、スポット金価格のチャート:日足 2024年4月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

金価格、目先は調整相場を想定

金は安全資産としての特性を持つ。ゆえに中東情勢を巡る緊迫した状況は、本来であれば金価格の押し上げ要因である。

しかし上で述べたとおり、今は米長期金利の上昇と米ドル高が金相場の重しとなっている。「トレンドフォロー」がマーケットに向き合う基本的な姿勢であることを考えるならば、目先の金価格は調整売りを想定しておきたい。

スポット金価格のチャート:日足 2024年6月以降

スポット金価格のチャート:日足 2024年6月以降

出所:TradingView

スポットの金価格は10日線を下方ブレイクしている(上の日足チャート、青ラインを参照)。日足のMACDはデッドクロスへ転じ、RSIは低下トレンドへ転じている。これらテクニカルの動向からも今は金相場の調整(反落)を意識する状況にある。

今日以降も金価格の下落が続く場合、焦点は2,600ドルの維持となろう。21日線が2,607レベルまで上昇している(上の日足チャート、緑ラインを参照)。

金価格が2,600ドルの水準を目指すシグナルとして注目したいのが、下の1時間足チャートにプロットしたフィボナッチ・リトレースメントの攻防である。38.2%の水準2,632レベルと半値戻しの水準2,616レベルはともに相場をサポートした経緯がある(下の1時間足チャート、黒矢印を参照)。

なお、2,600ドルはフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準にあたる。10月2日のIGコモディティレポート「高まる中東の緊張、増す金の投資需要、最高値を視野にNY金は再び上昇ムードに」で取り上げた9月11日の安値を起点とした半値戻しの水準(2,593レベル)の存在も考えるならば、テクニカルの面でも2,600ドルを重要なサポート水準として注目したい。

1時間足のMACDはゼロラインを下回り低下基調にある。一方、RSIは売られ過ぎの水準に到達していない。目先は上で取り上げたサポートポイントのトライを想定しておきたい。これらテクニカル指標がゴールデンクロスへ転じる場合、特に金価格が上のサポートポイントをトライする局面でゴールデンクロスが確認される場合は、金価格の反発を意識したい。

スポット金価格のチャート:1時間足 9月17日以降

スポット金価格のチャート:1時間足 9月17日以降

出所:TradingView

下落局面では買いを考えたい

基軸通貨である米ドル一強体制からの脱却を模索する中国やロシアなど、アメリカと対立する国の中銀は今後も金買いを進めるだろう。また、パウエルFRBは9月の連邦公開市場委員会(FOMC)を境に、緩和サイクルへ転じている。今は”三重苦”に直面している金相場だが、安全資産としての妙味も考えるならば、金価格の下落局面では押し目買いを考えたい(中長期の視点)。

上で取り上げたサポートポイントで金価格が反発し、短期レジスタンスラインを上方ブレイクする場合、まずは2,670レベルの攻防に注目したい(いずれも上の1時間足チャートを参照)。9月25日以降、この水準がレジスタンスとして相場の上昇を止めている。

金価格が2,670レベルを完全に突破する場合は、9月26日に付けた最高値2,685レベルのトライが焦点に浮上しよう(下の日足チャート、赤ラインを参照)。

金価格が2,685レベルをも突破する場合は、2,700ドルのトライが焦点として浮上しよう。この水準をトライするかどうか?を見極めるため、常に米長期金利と米ドルの動きをチェックしておきたい。

再掲 スポット金価格のチャート:日足 2024年6月以降

スポット金価格のチャート:日足 2024年6月以降

出所:TradingView


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