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NY金、米ドルよりもビットコインにらみか 米雇用統計次第では急落を警戒

NY金の上値が重い。昨日は先物価格が3営業日ぶりに反落した。スポット価格も2,670ドル手前で反発が止められている。ビットコインの急騰が金価格の重石となっている可能性がある。今晩の11月米雇用統計が予想を超える強い内容となれば、金価格の急落を警戒したい。

Source:Bloomberg Source:Bloomberg

米金利の低下に米ドル安、それでも上値の重いNY金

NY金の上値が重い。米債市場では長期金利が4.1%台まで低下している。この動きに連動し外為市場では米ドル高が一服。ドル指数(DXY)は、直近の高値水準107.50ポイントから105.60ポイント台まで低下している。

本来であれば、米金利の低下と米ドル安はNY金の押し上げ要因である。それでもNY金の上昇が抑制されている今の状況は、米金利と米ドル以外の要因が影響していると考えられる。

米長期金利、ドル指数、スポット金価格のチャート:日足 24年5月以降

米長期金利、ドル指数、スポット価格のチャート:日足 24年5月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

NY金、今は米ドルよりもビットコインにらみか

その要因として挙げられるのが、今月5日に初めて10万ドルの大台に達したビットコインである。NY金との関係について、以下にまとめた。

・トランプ次期米大統領は4日、米証券取引委員会(SEC)の次期委員長に元SEC委員のポール・アトキンス氏を指名した。アトキンス氏は金融規制に否定的な規制緩和論者として知られている。ゆえに同氏の指名は、規制緩和期待(期待選好)によるビットコインの短期的な上昇を促す要因となろう

・米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は4日の米紙ニューヨーク・タイムズ氏のイベントで、今のビットコインは米ドルよりも金と「競合関係」にあると指摘した。ビットコインとNY金のスポット価格(金価格)のトレンドを日足チャートで確認すると、アメリカ大統領選挙が行われた11月以降、パウエルFRB議長が指摘するようにビットコインが上昇する一方で金価格が下落する「競合関係」にあることが分かる

ビットコインとスポット金価格のチャート:日足 24年5月以降

ビットコインとスポット価格のチャート:日足 24年5月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

・ビットコインと金価格の比を見ると、相対的なビットコインの強さがより分かる。11月以降の動きは、直近の米金利の低下と米ドル安の局面で投資資金が金よりもビットコインに流れていることを示唆している

ビットコインとスポット金価格の比率:日足 24年5月以降

ビットコインとスポット価格の比率:日足 24年5月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

注目の米雇用統計、強い内容ならば金価格の急落を警戒

今日は11月の米雇用統計が発表される。強い内容となれば、NY金の急落を警戒したい。要点を以下にまとめた。

・ブルームバーグがまとめた最新の市場予想では非農業部門雇用者数が22万人増、失業率が4.1%と、引き続き労働市場が堅調さを維持する見込みである

・米雇用統計が予想以上に強い内容となれば、米金利の反発要因となろう。米金利の上昇は米ドルの買い戻し要因となろう

・規制緩和の期待でビットコインの騰勢ムードにあるなかで雇用統計が米ドル高の要因となれば、NY金には売り圧力が高まるだろう。このケースでは、下で述べるサポートラインの攻防を意識したい

・一方、米雇用統計で労働市場の軟化が示される場合は、米金利の低下と米ドル安の要因となろう。このケースでは、NY金の反発が予想される。だが、さえない米雇用統計はビットコインの上昇要因にもなり得る。NY金が反発しても、その幅は限定的となることが予想される

米国の雇用統計 各項目の動向:23年11月以降

米国の雇用統計 各項目の動向:23年11月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成


金価格、今日の見通しと注目のテクニカルライン

金価格のサポートライン

今日のNY金は、11月の米雇用統計で上下に大きく動く可能性がある。上で述べたとおり市場の予想を上回る強い内容となれば、NY金の急落を警戒したい。スポットの金価格(金価格)のサポートラインを以下にまとめた。

・強い米雇用統計は、米金利の反発と米ドルの買い戻しを促すことが予想される。米ドル高は一服しているが、金価格は今日の東京時間にサポートラインの75日線を下方ブレイクしてきた。日足のモメンタムはゼロラインを下回っている。この状況で雇用統計後に米ドルが買い戻される場合、金価格は2,600ドル割れを想定しておきたい

・金価格が2,600ドル(フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準)を完全に下方ブレイクすれば、次の焦点は短期サポートラインの維持となろう。このラインは今日現在、2,570台で推移している。フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準2,580の下方ブレイクは、短期サポートラインをトライするサインと捉えたい

・可能性は低いが、本日金価格が短期サポートラインをも下方ブレイクすれば、来週はサポートラインへ転換した2,530ドルを視野に下落幅の拡大を警戒したい

サポートライン

・2,600:フィボナッチ・リトレースメント61.8%(1時間足)
・2,580:フィボナッチ・リトレースメント76.4%(1時間足)
・2,575:短期サポートライン(日足)
・2,530:サポートラインへ転換した水準(日足)


金価格のレジスタンスライン

今晩の米雇用統計で労働市場の軟化が示される場合は、米利下げ期待の高まりで米金利の低下が続くことが予想される。外為市場では米ドル安優勢の展開が予想される。このケースでの金価格は、以下で取り上げるレジスタンスラインを視野に反発の展開を予想する。

・金価格が反発する場合、75日線の「レジスタンス転換」が最初の焦点となろう。75日線で反発が止められる場合は地合いの弱さを市場参加者に印象付けるだろう。このケースでは、来週以降も2,600ドル割れを意識する相場が続くだろう

・金価格が75日線を突破する場合は、2,660ドル台への上昇が焦点となろう。先月27日以降、2,660ドル前後がレジスタンスラインとして意識されている

・金価格が2,660ドル台へ上昇しても、50日線を完全に突破しない限り、2,600ドル割れを意識する状況が続くだろう

・時間足のストキャスティクスとRSIで相場の過熱感を確認し、上で取り上げたテクニカルラインの攻防でこれらテクニカル指標が同時にデッドクロス / ゴールデンクロスへ転じる場合は、相場の反落 / 反発を意識したい(1時間足)

レジスタンスライン

・2,667:50日線(日足)
・2,660:レジスタンスライン(1時間足)
・2,630:75日線(日足)


スポット金価格のチャート

日足:24年8月以降

日足:24年8月以降

出所:TradingView

1時間足:11月14日以降

1時間足:11月14日以降

出所:TradingView


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