NY金、ビットコインと中東情勢の両にらみ、売り買い交錯の不安定な相場を想定
今週の金(ゴールド)はビットコインだけでなく、中東情勢を注視する必要もある。これらの動向でゴールドは、上下に振れる不安定な展開が予想される。注目のテクニカルラインについて。
シリアのアサド政権が崩壊し緊迫化する中東情勢、NY金への影響
中東情勢が再び緊迫化している。シリアの反体制派は8日に首都ダマスカスを制圧し、シリアのアサド政権が崩壊した。周辺国と関係国の動き次第では、中東の地政学リスクがNY金のトレンドに影響を与えるだろう。注目ポイントを以下にまとめた。
・2011年から内戦が続いていたシリア。今月の8日朝に反体制派が首都のダマスカスを制圧したことで、父子2代にわたって続いたアサド政権による支配が終焉した。中東情勢の緊迫化を受け、週明けのNY金は買い優勢でスタートした。しかし、レポート掲載時点で上昇幅が拡大するムードはない
スポット価格のチャート:5分足 9日 6時から14時
出所:IGチャート
・周辺国と関係国の対応次第で中東の地政学リスクに対する市場参加者の思惑が揺れ動くだろう。本日日本時間の早朝に、イスラエルの地上軍がシリアに入ったとの報道が見られた
・ロシア軍の動きにも注視したい。シリア国内には2か所のロシア軍基地-西部ラタキア県のフメイミム空軍基地と地中海沿岸のタルトゥース海軍基地がある。特にタルトゥースの海軍基地はロシアにとって地中海で唯一の修理と補給の拠点という。ゆえにこの基地を失うことは、地政学的に中東とアフリカに対するロシアのプレゼンスが低下することを意味する。地中海でのプレゼンスを維持するためにロシア軍が反体制派に空爆すれば、中東情勢はさらに緊迫の度を増すだろう。また、反体制派が一枚岩でまとまることなく内政が混乱する可能性もある
・今週以降、中東情勢の緊迫化を伝える報道が続く場合は、金(ゴールド)のサポート要因になり得る。しかし冒頭で述べた軟調地合いを考えるならば、金価格が上昇しても、その幅は限られる展開が予想される
ビットコインにらみの状況が続く
NY金の上値は重い。その要因として筆者が注目していのが、ビッドコインの動きである。中東リスクや他の要因でNY金が上昇しても、ビットコインが上昇トレンドが続けば、ゴールド買いの圧力を相殺する展開が予想される。
・6日のIGコモディティレポートで指摘したとおり、現在は金(ゴールド)の代替資産かつ値上がり期待でビットコインが選好されやすい状況にあると考えられる
・週明けのビットコインは調整売りに圧され、節目の10万ドルを割り込んでいる。この動きに連動するようにNY金は買い優勢の状況が見られる。一方、ビットコインの下落が一服すると、NY金はじわりと下落している
・現在のビットコインとNY金のトレンドを考えるならば、中東リスクの高まりとビットコインの調整売りが重なる局面では、NY金の上昇が予想される。だが、米金利の低下と米ドル高が抑制されても上値が重いことを考えるならば、下で述べる50日線や短期レジスタンスラインでの反落を想定しておきたい
・一方、中東リスクが意識されてもビットコインが上昇トレンドを維持すれば、NY金の上昇は限定的となろう。または、下で述べるサポートラインのトライを想定しておきたい
ビットコインのチャート:5分足 9日6時~14時
出所:TradingView
NY金、目先は売り買い交錯の不安定な相場か、注目のテクニカルライン
金価格のレジスタンスライン
週明けのスポット金価格(以下では金価格)は、売り買いが交錯しながらも前週末比で買い優勢の状況にある。中東情勢に対する警戒心を高める新たな報道があれば、相場の反発を止めている2,655ドルを突破する可能性が出てくる。このケースでは、以下でまとめたレジスタンスラインの攻防が予想される。
・日足のモメンタムがゼロラインを上回ってきた。弱気相場の勢いがひとまず後退していることを示唆している。しかし、50日線と短期レジスタンスラインを突破しない限り、金価格の下落を意識する状況が続こう
・50日線は現在、直近高安の半値戻しの水準付近で推移している。このテクニカルラインは、11月29日に相場の反発を止めた経緯がある(1時間足を参照)。今月2日以降、相場の反発を止めている2,655ドルを突破する場合は、50日線(半値戻し)のトライを想定したい
・金価格が50日線を突破すれば、明日以降、短期レジスタンスラインの攻防が視野に入ろう。このラインは今日現在、2,680ドル付近で推移している。すぐ下の水準はフィボナッチ・リトレースメント61.8%戻し2,677にあたる
・短期レジスタンスラインと50日線の間が縮まっている。これらテクニカルラインがレジスタンスゾーンを形成する可能性がある。ビッドコインが強気相場を維持すれば、中東リスクや米金利の低下で金価格が上昇しても、重要なテクニカルラインが重なる2,680手前での反落を警戒しておきたい
レジスタンスライン
・2,680:短期レジスタンスライン(日足)
・2,677:フィボナッチ・リトレースメント61.8%戻し(1時間)
・2,665前後:半値戻し(1時間)、50日線(日足)
・2,655:レジスタンスライン(1時間)
金価格のサポートライン
週明けの金価格は反発している。しかし、一気に上昇幅が拡大するムードにはない。週間の騰落率を確認すると2週連続で下落した。金価格が未だ軟調地合いにあることを考えるならば、下落の局面では以下でまとめたサポートラインの攻防を意識したい。
スポット価格の週間騰落率:24年6月以降、12月6日までの週
ブルームバーグのデータで筆者が作成
・IGコモディティレポートで注目している75日線は、もはやサポートラインとして意識される可能性が低いだろう。今日以降、ビッドコインや米金利の上昇などで金価格の売り圧力が高まる場合は、89日線のトライを想定しておきたい。焦点を以下にまとめた。
・日足ローソク足の実体ベースでサポートラインとして意識されている2,625ドルの下方ブレイクは、89日線をトライするサインと捉えたい
・89日線は今日現在、2,607ドル付近にある。この移動平均線の下方ブレイクは、2,600ドルを下方ブレイクするサインと捉えたい
・金価格が2,600ドルを完全に下抜ける場合は、8月5日の安値と10月31日の高値の半値戻しの水準2,577ドルのトライを意識したい。トライアングルの下限でもある短期サポートラインが明日、このテクニカルラインと交錯する
サポートライン
・2,625:サポートライン(日足)
・2,607:89日線(日足)
・2,600:サポートライン(日足)
・2,577:半値戻し、短期サポートライン(日足)
スポット金価格のチャート
日足:24年8月以降
出所:TradingView
1時間足:11月22日以降
出所:TradingView
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