「データの時代」における投資戦略とは?
米国ウィークリー2019/7/30号
- 今までの米国株市場の上昇は、①利下げ、②米中協議進展、③企業決算の3つの「期待」の好循環によって支えられてきた面が強いが、米中協議が7/30から再開されることが決まったことに加えて、2019/4-6月期決算ではフェイスブック(FB)やアルファベット(GOOGL)といった「GAFA」が巨大プラットフォーマーの強さを示した。ザイリンクス(XLNX)、テキサス・インスツルメンツ(TI)、インテル(INTC)などの半導体関連が市場予想を上回る決算を発表し、通期見通しも引き上げた。更に、コカ・コーラ(KO)、スターバックス(SBUX)、マクドナルド(MCD)などの消費関連も好調な米国消費を反映した好決算となった。NYダウは指数寄与度が高いボーイング(BA)の株価下落に押されて7/16高値27,398ドルを超えていないが、S&P500やナスダックは7/26に史上最高値を更新するなど米国株市場に力強さが戻って来ている。7/25発表の米国2019/4-6月期GDP成長率も市場予想を上回り、市場の予想は良い意味で裏切られつつある。
- では、この好循環がより力強さを増して株価上昇に反映していくのだろうか?短期的には、8月上旬に上記の3要因に係る材料出尽くしによる利益確定売りの可能性は残ろう。しかし、ザイリンクスの決算に見られるように次世代通信「5G」需要の高まりが追い風となっていること、およびデータの流通を一手に握る巨大プラットフォーマー銘柄が堅実な業績を示していることから、「データ資本主義」の新潮流が着実に浸透しつつあると言えるだろう。このデータ資本主義は、更に、5Gおよび「IoT(Internet of Things)」によって、ヒトとモノの区別・際限がなくなり、データが自由かつ爆発的に流通することが見込まれよう。
- この新たな潮流は、5GとIoTが普及する前とその後で分けて考えるべきだろう。「5GおよびIoT前」の現在においても、既にSaaS(Software as a Service)によるサブスクリプション契約のビジネスモデルのソフトウェア開発企業が、データ流通量拡大のために粗利益を超える多額の営業費用を注ぎ込んで大きな赤字を出しつつも時価総額を極大化させている。これを「行き過ぎ」と見るよりも、データ流通プラットフォームの価値が利益に優先して評価される現状の枠組みを表している面もあろう。そして、モノがインターネットに繋がる「5GおよびIoT後」においては、モノの抱え過ぎによる「コングロマリット・ディスカウント」によって株価が伸び悩む企業が、モノ同士を繋ぐソフトウェア技術を通じて「コングロマリットのプレミアム化」へと形勢を逆転させるチャンスもあるのではないだろうか。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(7/26現在)
■主な企業決算の予定
●7月30日(火):ゼロックス、イーライリリー、アンダーアーマー、コノコフィリップス、エコラボ、ワブテック、ラルフローレン、コーニング、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、IPGフォトニクス、ガートナー、グローバル・ペイメンツ、カミンズ、マーチン・マリエッタ・マテリアルズ、DRホートン、ファイザー、アルトリア・グループ、マスターカード、メルク、HCAヘルスケア、フランクリン・リソーシズ、PSEG、オールステート、ユナム・グループ、UDR、FMC、シンシナティ・ファイナンシャル、マキシム・インテグレーテッド・プロダクツ、エレクトロニック・アーツ、ベリスク・アナリティクス、AMD、ギリアド・サイエンシズ、アカマイ・テクノロジーズ、アップル、アムジェン
●7月31日(水):ヒューマナ、ベイカー・ヒューズGE、ADP、CMEグループ、L3ハリス・テクノロジーズ、アメリカン・タワー、モルソン・クアーズ、サザン、ムーディーズ、ゼネラル・エレクトリック(GE)、ドミニオン・エナジー、マイラン、ニールセンHD、コンチョ・リソーシズ、デューク・リアルティー、オキシデンタル・ペトロリアム、メットライフ、ホロジック、プルデンシャル・ファイナンシャル、ウエスタンデジタル、ラムリサーチ、アパッチ、クアルコム、フローサーブ、アメリカン・ウォーター・ワークス、CFインダストリーズHD、ジョンソンコントロールズインターナショナル
●8月1日(木):シグナ、CBREグループ、インターコンチネンタル・エクスチェンジ、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド、ヤム・ブランズ、フォーティネット、マラソン・ペトロリアム、アイデックスラボラトリーズ、アビオメッド、クロロックス、MSCI、ヘインズブランズ、S&Pグローバル、ベライゾン・コミュニケーションズ、ケロッグ、ゼネラル・モーターズ(GM)、コルボ、アリスタネットワークス、モトローラ・ソリューションズ、ウエスタンユニオン
●8月2日(金):アメレン、Cboe・グローバル・マーケッツ、EOGリソーシズ、ノーブル・エナジー、シーゲイト・テクノロジー、シールドエアー、シェブロン、エクソンモービル、デンツプライ・シロナ、ライオンデルバセル・インダストリーズ、ニューウェル・ブランズ、センプラ・エナジー、アーコニック
●8月3日(土):バークシャー・ハサウェイ
●8月5日(月):Linde PLC、ジェイコブズ・エンジニアリング・グループ、タイソン・フーズ、ロウズ、KLA、NRGエナジー、WECエナジー・グループ、テイクツー・インタラクティブ・ソフトウエア、アンシス、マリオット・インターナショナル
■主要イベントの予定
●7月30日(火)
・FOMC(31日まで)
・米中通商協議(上海、31日まで)、
・2020年大統領選に向けた第2回民主党討論会(31日まで、デトロイト)
・個人所得(6月)、個人支出(6月)、主要20都市住宅価格指数(5月)、中古住宅販売成約指数(6月)、消費者信頼感指数(7月)
・ユーロ圏景況感指数(7月)、独CPI(7月)
●7月31日(水)
・FOMC声明発表、パウエルFRB議長記者会見
・ADP雇用統計(7月)、雇用コスト指数(4-6月)、シカゴ製造業景況指数(7月)
・ユーロ圏GDP(2Q)、ユーロ圏失業率(6月)、ユーロ圏CPI(7月)、独失業率(7月)、中国製造業PMI(7月)、中国非製造業PMI(7月)
●8月1日(木)
・英中銀、政策金利発表・インフレ報告・カーニー総裁記者会見
・新規失業保険申請件数(7月27日終了週)、ISM製造業景況指数(7月)、自動車販売(7月)、建設支出(6月)
・ユーロ圏製造業PMI(7月)、中国財新製造業PMI(7月)
●8月2日(金)
・雇用統計(7月)、貿易収支(6月)、製造業受注(6月)、耐久財受注(6月)、ミシガン大学消費者マインド指数(7月)
・ユーロ圏小売売上高 (6月)、ユーロ圏PPI(6月)
●8月5日(月)
・マークイット米国サービス業PMI(7月)、マークイット米国コンポジットPMI(7月)、ISM非製造業指数(7月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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