債券市場の「金利低下トラップ」に要注意
米国ウィークリー 2019/3/26号
- 米国10年国債利回りは年初から低下を続け、利回り低下に対して株式市場は様々な反応を示してきたが、3/22に2.418%まで低下し、TB3か月物の2.46%台を下回る「(長短)逆イールド」現象がトリガーとなってVIX指数も16台まで急上昇、NYダウも前日比460ドル安と、1/3(660ドル安)に次ぐ今年2番目の下げ幅となった。3/20に終了したFOMCでは、成長率見通しが2019年は2.3%から2.1%へ、2020年は2.0%から1.9%へ引き下げられバランスシート縮小も9月末に停止する方針が示されるなどハト派色を強める内容で、市場の「利下げ」催促に対して満額回答といえるものだった。それを受けて長期金利は低下を辿っていたが、3/20はリスクオフが先行してNYダウで141ドル安だったのに対し、3/21は3月フィラディルフィア連銀製造業指数や2月景気先行指数が予想を上回ったこともあってリスクオンに傾くなど、株式市場の反応は日替わりで異なるものだった。
- ここまでの長期金利低下に対する株式市場の反応を振り返ると、①パウエル議長からの「利上げ停止」メッセージを素直に好感する展開、②中国や欧州などのグローバル経済減速を示す経済指標に対しても、インフレ圧力を緩和する程度に見なし、内需を中心に好調な米国経済の景気指標を受けて上昇する展開、③FRBの目標である年率2%を上回る範囲での「適温相場」を示す物価上昇率を維持したまま長期金利が低下することによって実質長期金利が低下することから、負債比率が相対的に高い半導体関連株やIT関連株に対してポジティブに反応する展開など、異なる表情を見せながらも、株式市場は、逆イールドにならない限りは、長期金利低下を好意的に評価していたものと言えよう。
- しかしながら、3/22の長短金利逆イールド現象による株式相場の売りは、主に欧州の景気指標を材料に発生したものである。逆イールドが不況の前兆として株式の売り材料になることは事前にAIなどでプログラミングされており、金融市場に大きなボラティリティーを発生させて短期的に利益を上げたい投機筋に狙われやすい状況にもあっただろう。昨年以降、国内産業保護のための関税政策によって米国とその他のグローバル経済は必ずしても同調しておらず、欧州の減速が米国経済減速にはつながらないことには注意が必要であろう。
- 最近は、民主党も政府債務残高に関する「MMT(現代金融理論)」を取り入れる機運もあり、財政赤字への抵抗感も薄れつつあることから、政府支出による景気下支えが期待できる状況である。押し目の後の再出発に期待したい。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(3/22現在)
■主な企業決算 の予定
●3月26日(火):マコーミック、カーニバル
●3月27日(水):ペイチェックス、PVH、レナー
●3月29日(金):カーマックス
■主要イベントの予定
●3月26日(火)
・住宅着工件数 (2月)、FHFA住宅価格指数 (1月)、主要20都市住宅価格指数 (1月)
・消費者信頼感指数 (3月)
●3月27日(水)
・ECBのドラギ総裁が講演(フランクフルト)
・米貿易収支 (1月)、米経常収支 (4Q)
・中国工業利益 (2月)
●3月28日(木)
・米中の閣僚級貿易協議(北京、29日まで)
・南ア中銀、政策金利発表
・GDP (4Q、確定値)
・中古住宅販売成約指数 (2月)
・新規失業保険申請件数 (23日終了週)
・ユーロ圏マネーサプライ (2月)、独CPI (3月、速報値)
●3月29日(金)
・英国のEU離脱予定日
・個人所得 (2月)、米個人支出 (1月)
・新築住宅販売件数 (2月)
・ミシガン大学消費者マインド指数 (3月、確定値)
・ユーロ圏CPI (3月、速報値)、独失業率 (3月)
●3月31日(日)
・欧州夏時間開始
・ウクライナ大統領選挙、トルコ統一地方選挙
・中国製造業・非製造業・コンポジットPMI (3月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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