ドル円は戻り売りを警戒 / ユーロドルは上値トライを想定
黒田日銀総裁は緩和政策の維持を強調するも国内の長期金利は高止まりの傾向にある。米金利の低下基調が続く場合は、日米金利差の縮小によるドル円の反落を警戒したい。一方、ユーロドルはECBの利上げ継続姿勢がサポート要因となっている。目先の展望は?注目のチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
ドル円は戻り売り、ユーロドルは上値トライを想定
【サマリー】
・黒田総裁は緩和姿勢を強調するも国内の長期金利は高止まり
・円高基調は一服しているが日米の金利差は縮小傾向にある
・ドル円は戻り売りを警戒する状況が続く
・ユーロドルは米欧金利差の動向がサポート要因となり上値トライを意識する状況に
国内の長期金利は高止まり 日米利回り格差は縮小傾向に
日銀の黒田東彦総裁は26日、イールドカーブ・コントロールの修正(長期金利の許容変動幅の拡大)をしたことは、金融緩和政策を持続的かつ円滑に進めていくための対応と、改めて強調した。
国内の債券市場では、長期金利が0.4%前後で高止まりしている。先週の決定会合後に円高と株安が急速に進行した状況も考えるならば、各市場の参加者は黒田総裁の発言を額面通りに受け取ってはいないことがうかがえる。
現在、外為市場では円高の圧力がひとまず後退している。しかし、国内の長期金利の高止まりが続く一方、インフレの鈍化と景気リスクが意識され米金利が再び低下基調へ転じる場合、日米金利差の縮小がさらに進行するだろう。そしてこの展開となる可能性は高まっている。
日米金利とドル円の動き
ゆえに、反発基調にあるドル円(USDJPY)は、戻り売りを意識する状況にある。
レジスタンスポイントの候補となる水準は、26日のレポートで指摘した134.00レベル、21日線(MA)と短期レジスタンスライン、そして138.00レベルである。
21日線は今日現在、135.70台で推移している。一方、短期レジスタンスラインは136.15前後で推移している。
134.00レベルすら試すことなくドル円が反落する場合は、地合いの弱さを市場参加者に印象付けよう。このケースでは、日銀ショック時に付けた安値130.56レベルを目指す展開を想定しておきたい。
ドル円のチャート
対米ドルで堅調地合いを維持するユーロ
ユーロドル(EURUSD)は底堅さを維持している。
欧州中央銀行(ECB)はインフレ抑制のために今後も安定したペースで利上げを続ける必要性に迫られている。ラガルド総裁は、今後3回にわたり50ベーシスポイント(bp)利上げの可能性に言及している。
米金利は反発の基調にある。しかし、ECBの利上げ継続スタンスを受けて欧州金利には上昇の圧力が高まっている。
この動きを受け米独の長期債利回りの格差は縮小の傾向にあり、それに連動してユーロドルが上昇基調を維持する状況が見て取れる(下のチャートを参照)。
米国以上にインフレが進行している欧州の状況とインフレの鈍化傾向が見られる米国の状況を考えるならば、米欧利回り格差を意識する状況が続くことが予想される。
よって、ユーロドルは調整の反落を挟みながら、新たなレジスタンスのポイントを見極める状況が続くと予想する。
米独の長期債利回り格差とユーロドルの動き
リトレースメント61.8%の突破が焦点に
米欧金利差の縮小によりユーロドル(EURUSD)の堅調地合いが続くことを想定する場合、目先の焦点はフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準1.0746レベルのトライおよびブレイクとなろう。
今月15日にこのテクニカルポイントを試す局面が見られたが、突破に失敗した経緯がある。モメンタム(12日)は低下基調にあり、MACDではデッドクロスが示現している。
上昇の局面でユーロドルが再び61.8%水準の突破に失敗する場合、または61.8%の水準すら試すことなく反落する場合は、ひとまず21日線(MA)まで反落する展開を想定しておきたい。この移動平均線は今日現在、1.0558レベルで推移している。
一方、ユーロドルが61.8%の水準を完全に突破する場合は、今年の5月下旬から6月上旬に相場の上昇を止めた1.08レベルのトライおよびブレイクが次の焦点として浮上しよう(チャート左↓の水準)。
ユーロドルのチャート
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