トランプ大統領は二度ベルを鳴らす?
- 先週の米国株市場は、既に7/25に欧州中央銀行が2020年前半までに政策金利引下げを実施する可能性を示し、7/31のFOMCに向けた米FRBへの利下げ期待を強めていた中、FOMCで決定された0.25%ポイントの利下げが「長期にわたる一連の利下げの始まりではない」と市場の期待に応えるものではなく、7/31のNYダウが前日比333ドル安の大幅下落となった。それに加えて8/1に、トランプ大統領が9/1より対中国関税第4弾(3,000億ドルに対して10%)を実施する旨をツイッターで発表し、NYダウが前日比280ドル安と大幅続落となった。関税が25%に引き上げられる可能性もトランプ大統領から示唆され、中国も報復措置の可能性を警告したことから貿易戦争悪化懸念が強まり、週足でNYダウが7/31高値27,281ドルから8/2安値26,249ドルまで1,032ドルの大幅変動となった。
- FRBは雇用と物価上昇率を柱として金融政策を決定しており、堅調な雇用に対して消費者物価上昇率は目標の2%(前年同月比)に8ヵ月連続で届かない状況を懸念しての熟慮の上での小幅利下げだったと考えられる。8/2発表の7月雇用統計でも雇用の強さが示された。ところが、「関税第4弾」発表により米国10年国債利回りが7/26の2.081%から8/2の1.855%まで急低下するなど、パウエル議長が言及した「貿易政策の下振れリスク」には不十分として市場から更なる利下げ要求の催促を受けてしまっていると言えよう。トランプ大統領が事前に大幅利下げをFRBに公然と要求し「中国が農産物の購入を実行しない」と強い不満を漏らすなど、事前のシグナルは発せられていたように思われる。
- 5/5にも、トランプ大統領は中国の知的財産権侵害などを理由に2,000億ドル分について10%から25%への関税引上げを発表し、5/10から実施した。その際にも事前にFRBへの利下げ要求を強め、自らと親しい人物をFRB理事に送り込むことを画策したことがあった。トランプ大統領は今年に入って二度にわたり、対中国追加関税の前にFRBに対して貿易政策に係るシグナルを送っていたと言えなくもない。どちらの時も企業決算発表が進んで主要株価指数が高値水準にあったタイミングであることも共通している。貿易政策リスクを重視するのであれば、FRBがトランプ政権の発するシグナルを適切に受け取れなかったことに対して市場が失望し、金融政策に対する信認を失っている面もあるだろう。
- 銘柄選択では、「5GとIoTの融合」による「M to M」時代を睨んでソフトウェア関連から製造業などへのシフトを検討しても良い時期かも知れない。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(8/2現在)
■主な企業決算の予定
●8月6日(火):モザイク、ディスカバリー、フィデリティナショナルインフォメーションサービシズ、エマソン・エレクトリック、リジェネロン・ファーマシューティカルズ、デューク・エナジー、トランスダイム・グループ、AES、PPL、ベクトン・ディッキンソン、ゾエティス、ヘンリーシャイン、パイオニア・ナチュラル・リソーシズ、デボン・エナジー、ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー、ホスト・ホテル・アンド・リゾート、ダイヤモンドバック・エナジー、アシュラント、マイクロチップ・テクノロジー、フリートコア・テクノロジーズ、ウィン・リゾーツ
●8月7日(水):NRGエナジー、センターポイント・エナジー、CVSヘルス、ブッキング・ホールディングス、アルベマール、スカイワークス・ソリューションズ、トリップアドバイザー、アトモス・エナジー、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)、マラソン・オイル、センチュリーリンク、Fox Corp、Evergy Inc、モンスタービバレッジ
●8月8日(木):カーディナルヘルス、バイアコム、ピナクル・ウエスト・キャピタル、ニューズ・コーポレーション、クラフト・ハインツ、ノルウェージャンクルーズライン・ホールディングス、DXCテクノロジー、CBS、シマンテック、ネクター・セラピューティクス
●8月12日(月):シスコ
■主要イベントの予定
●8月6日(火)
・セントルイス連銀総裁、講演
・国務長官、アジア太平洋地域歴訪が終了
・求人件数(6月)
・独製造業受注 (6月)
●8月7日(水)
・シカゴ連銀総裁、メディア向け朝食会を開催
・サムスン電子、「ギャラクシー・ノート10」の公開イベント(ニューヨーク)
・消費者信用残高(6月)
・独鉱工業生産(6月)、中国外貨準備高(7月)
●8月8日(木)
・ECB経済報告
・新規失業保険申請件数(3日終了週)、卸売在庫(6月)
・中国貿易収支(7月)、フィリピンGDP(2Q)
●8月9日(金)
・国際エネルギー機関(IEA)月報
・PPI(7月)
・英GDP(2Q)、英鉱工業生産(6月)、中国CPI・PPI(7月)、中国経済全体のファイナンス規模、新規融資、マネーサプライ(7月、15日までに発表)
●8月12日(月)
・月次財政収支(7月)、住宅ローン延滞率(2Q)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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