厳しい状況に直面するECB / ユーロドルの展望
ユーロ圏のインフレ率(HICP)は前年同月比で10.7%と過去最高を更新。一方、経済成長は鈍化。欧州中央銀行(ECB)はインフレと景気後退の両リスクに直面する厳しい状況に。ユーロドルは調整の反発を挟みながら下落トレンドが続くと予想する。一方、ドル円はFOMCの内容次第で上下に大きく振れることが予想される。目先、注目しておくべき上下のチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
インフレと景気後退の両リスクに直面するECB
【サマリー】
・ユーロ圏のインフレ率は前年同月比で過去最高の10.7%
・インフレの進行と景気後退の両リスクに直面する欧州中央銀行(ECB)
・戻り売りを意識する状況が続くユーロドル
・ドル円の展望と目先のチャートポイントについて
・ユーロ圏のインフレ率 伸びが過去最高に
欧州連合(EU)統計局が31日に発表した10月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)は、前年同月比で10.7%まで上昇し過去最高となった。エネルギー価格の上昇率(41.9%)が物価高の主因となったが、食品や輸入工業製品など幅広い分野でも物価の上昇が確認された。
ユーロ圏のインフレ率(HICP)
・厳しい状況に直面するECB
長引く高インフレとそれによる景気後退のリスクに直面する欧州中央銀行(ECB)は、今後の金融政策で難しいかじ取りを迫られるだろう。
ECB政策委員会メンバーのビスコ・イタリア中銀総裁は、経済リスク考慮しながら斬新的に政策を実行し、インフレを抑制する必要性について言及した。そして利上げのピークについては、あらかじめ決定することはできないと指摘した。この発言がハト派と受け止められ、ユーロドル(EURUSD)の下落要因になったとの見方がある。
ユーロドルの展望
ユーロドル(EURUSD)の週足チャートを確認すると、21週移動平均線(MA)とフィボナッチ・リトレースメント(6月27日高値-9月28日安値)の半値戻しで戻りが止められ、再び下落ムードが漂い始めている。
実際にユーロドルの下落幅が拡大するかどうか?は、連邦公開市場委員会(FOMC、11月1~2日)の内容次第となろう。連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が将来の利上げペースの減速を示唆してくるならば、「米金利の低下→米ドル売り」にサポートされ、上で述べたテクニカル(21週MAおよび半値戻し)を再びトライする展開が予想される。
しかし、ユーロドルが反発しても上昇トレンドへ回帰する可能性は現時点では低いと考えられる。ロシアーウクライナ紛争の長期化による経済への悪影響は相対的にユーロ圏の方が大きい。一方、インフレについては米国でピークアウトの可能性が見え始めている一方、ユーロ圏は上述のとおり高インフレの状況が長期化している。
将来の景況感について米国に分がある以上(この点は下で述べる利上げペースも左右する)、ユーロドルは調整の反発を挟みながら下落リスクを警戒する状況が続くと予想する。
なお、パウエルFRBが実際に利上げペースの減速を示唆するかは不透明な状況にある。ゆえに、この観測を後退させる「タカ派のFOMC」となればユーロドルは、0.9535レベル(9月28日安値)を起点とした短期サポートラインのトライおよびブレイクを想定しておきたい。
ユーロドルのチャート
米欧の利上げペース
現在のところ短期金融市場では、12月15日に開催される欧州中央銀行(ECB)理事会で0.5ポイントの利上げ予想が優勢となっている。高インフレの抑制を重視するならば、0.75ポイント利上げが織り込まれてもおかしくない状況にある。しかし、12月理事会で0.5ポイント利上げ予想が優勢となっている短期金融市場の状況は、今後ECBがインフレと景気後退の両リスクを考慮せざるを得ない状況に陥ることを予想した動きと言える。
政策金利の予想推移:ECB
連邦準備制度理事会(FRB)も景気に配慮しなければならない状況に直面する時がやってくるだろう。
しかし、現時点での利上げの最終地点(ターミナルレート)は、4.9%台(5%手前)で高止まりしている。利上げペース減速の可能性が意識される前(米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの観測報道が出る前)は、5%台の状況も見られた。
一方、ECBの利上げ最終地点(ターミナルレート)は2.8%台となっている。政策金利の水準では、常に「米国>ユーロ圏」の状況にある。
上で述べた長期化するロシアーウクライナ紛争が米欧経済にもたらす悪影響の度合い、米国とユーロ圏のインフレの進行状況、そしてFRBとECBの利上げペースの差も考えるならば、上で述べたとおりユーロドルは未だ下落リスクを警戒する局面にあると考えている。
政策金利の予想推移:FRB
ドル円の焦点とチャートポイント
・米金利の反発にサポートされ再び149円台の攻防に
米国の9月PCE価格指数(PCEデフレータ)ではインフレのピークアウトの可能性と、「インフレがなかなか低下しない」可能性の両方を示す内容となった。一方、欧州では高インフレが長期化している。
これらの動向を受け米金利には再び上昇の圧力が高まっている。昨日の米債市場では、インフレなど景気の先行きを織り込んで動く10年債利回り(長期金利)が4%台へ再上昇した。一方、金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りは、一時4.5%台へ到達する局面が見られた。
米金利の反発を受け、ドル円(USDJPY)は再び149.00レベルをトライムードが見られる。10月31日のレポートでも指摘したとおり、149.00および149.50レベルでは円買い介入の警戒感が高まりやすい状況にある。
・目先はFOMC次第
目先の焦点はFOMCだが、将来の利上げペースの観測を後退させる「タカ派のFOMC」となれば、149円台の攻防を制する展開が予想される。このケースでは、150円台への再上昇を想定しておきたい。
一方、パウエルFRBが将来の利上げペースの減速を示唆する場合は、「米金利の低下→米ドル売り」によりドル円は下値トライの展開が予想される。このケースでは、フィボナッチ・リトレースメント(9月安値-10月高値)の各水準での攻防に注目したい。今月3日には、半値戻しの水準146.15レベルと短期サポートラインがクロスする。
なお、通貨オプション市場のリスクリバーサルの動きを確認すると、1週間と1ヶ月でともにドルプットの勢いが後退している。しかし、直近は横ばい推移でFOMC待ちムードが漂う。
ドル円のチャート
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