米国株急落継続 トランプ氏がS&P500冷やす 半導体株見通し不安
アメリカのS&P500は週次で3か月ぶりの下落率を記録。トランプ氏の発言で下押しされた半導体株の値下がりが続いている。
アメリカの株式市場で投資家心理が急変した。S&P500種株価指数の20日の終値は1週間前比で1.97%安。3週ぶりの週次での値下がりで、下落率は3か月ぶりの大きさだった。ウォール街の恐怖指数と呼ばれるVIX指数の値も3か月ぶりの高さとなっている。きっかけは大統領選挙に向けて勢いづくドナルド・トランプ氏のインタビューでの発言が半導体産業の見通しを悪くしたこと。トランプ氏は18日の演説でも米国第一の姿勢をのぞかせ、投資家は波乱の兆しに身構えているようだ。また19日に起きた世界的なシステム障害の影響も不透明で、株式相場の見通しは悪くなっている。
アメリカのS&P500は週次で1.97%安 半導体株が重荷に
S&P500(SPX)の19日の終値は5505.00。週次での下落は0.08%の小幅安だった6月末以来。下落率の大きさは、台湾積体電路製造(TSMC)の決算発表が半導体株を冷やした4月12-19日週(3.05%安)以来3か月ぶりの大きさだった。S&P500は16日には5667.20をつけ、2024年に入って38回目の最高値更新を果たしていたが、17日以降の3日間では2.86%安となった。
トランプ発言で株式市場の見通し悪化 VIX指数も急上昇
株式市場の見通しの悪さへの警戒は、VIX指数(VIX)にも表れた。シカゴ・オプション取引所(CBOE)によると、20日のVIXの終値は16.52で、12日の12.46から、5営業日連続での上昇。やはり4月22日(16.94)以来3か月ぶりの高さとなった。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出される数値で、数字が大きいほど今後の値動きが荒くなることへの警戒感が強いことを意味する。
S&P500の急落のきっかけは17日に材料視されたトランプ氏のインタビューでの発言が、台湾防衛に懐疑的な見方を示したと受け止められたことだ。TSMCが台湾で運営する最先端半導体の生産拠点は世界の半導体サプライチェーン(供給網)にとって不可欠な存在で、トランプ氏の発言は投資家の不安をかきたてた。TSMCは18日に2024年4-6月期の好決算を発表したが、米国に上場する株価(TSM)は19日までの週次で11.52%安となっている。
世界的なシステム障害や企業決算も投資家心理に影響か
トランプ氏は18日夜の共和党党大会での候補者指名受諾演説でもトランプ節を披露した。経済政策面では、自動車産業の雇用が中国やメキシコに「盗まれた」とし、米国の自動車産業の復活を訴えた。自動車工場は米国内で建設され、米国人を雇用すべきだと主張し、自動車メーカーが同意しないのであれば、「輸入車に約100-200%の関税をかける」と述べた。また、再生可能エネルギーよりも化石燃料を重視する姿勢も健在で、電気自動車(EV)普及を後押しする政策は就任1日目に終わらせるとした。極端な政策をアピールする姿勢は、投資家にとっては今後の波乱要因といえそうだ。
また19日には世界各地でコンピューターの大規模なシステム障害が起きたことが明らかになった。空港や金融機関の業務に支障が出ている。米国企業のクラウドストライク・ホールディングスが提供しているセキュリティーソフトのアップデートが、マイクロソフトの基本ソフト(OS)のウインドウズに悪影響を与えたとみられている。クラウドストライクはアップデートの修正を配信したとしているが、影響がどこまで長引くかは見通しがついていない。S&P500構成銘柄であるクラウドストライクの株価(CRWD)は19日に11.10%安となった。
米国の株式市場では23日にEV大手テスラ(TSLA)とアルファベット(GOOGL)が4-6月期決算を発表する。テスラは2024年の販売見通しが注目され、アルファベットは広告収入の動向が焦点になりそうだ。投資家が株式市場の見通しの悪さに身構える中、決算内容が予想を下回れば、投資家のリスク回避姿勢が大きくなる可能性もある。
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