テスラ株急騰　運転支援展開の見通し維持　トランプ氏との蜜月にも期待

電気自動車（EV）大手テスラの株価が急上昇した。5日の終値は前日比4.90％高となり、S&P500種株価指数が下落する中での大幅高。3月末からの上昇率ではアップルや半導体大手のNVIDIA（エヌビディア）を上回る勢いとなっている。株式市場で材料視されたのは、テスラが自社の運転支援技術「FSD」の中国や欧州での展開の見通しに自信を示したこと。また、アメリカ大統領選挙の共和党候補であるドナルド・トランプ前大統領が5日の講演で、テスラのイーロン・マスクCEOとの蜜月関係を強調したことも追い風になったもようだ。ただ、テスラはEV事業の伸び悩みが懸念材料となっている状況に変わりはなく、期待先行の株価上昇が継続するかには不透明さもある。

テスラの株価は4.9％高　S&P500の下落と好対照

テスラの株価（TSLA）の5日の終値は230.17ドル。5日のS&P500（SPX）は6日発表の8月雇用統計への警戒感などから3日続落の前日比0.30％安だったが、テスラ株は4.90％の高い伸びとなった。前日比での伸び率はS&P500構成銘柄中で3番目の高さだ。3月末からの上昇率は30.93％高で、アップル（AAPL）の29.68％高やエヌビディア（NVDA）の18.65％高を上回る勢いとなっている。

5日のテスラ株上昇の要因のひとつは、テスラがFSDの中国と欧州での展開について2025年1-3月期に始める計画を維持したことだ。テスラが5日の取引開始前、SNSのX（旧ツイッター）の公式アカウントのひとつ（@Tesla_AI）に投稿した今後のロードマップの中で、計画に変更がないことが分かった。マスク氏は7月23日の2024年4-6月期決算会見で、FSDの展開に必要となる中国と欧州などでの規制当局の認可について「年末までに得ることができるだろう」と述べていた。

トランプ氏とマスク氏の蜜月関係も明らかに

またテスラをめぐってはマスク氏とトランプ氏の蜜月関係が事業展開の追い風になるとの見通しも出ている。トランプ氏は5日、ニューヨークでの講演で、大統領選挙に勝利して政権を握れば、連邦政府の効率的な運営を監視し、改革を提言する委員会を設置すると表明。この委員会はマスク氏の提案に沿ったもので、マスク氏が指揮をとることに同意したと明らかにした。EVをはじめとするマスク氏の事業は連邦政府に規制される立場にあるだけに、株式市場ではマスク氏とトランプ氏の良好な関係はテスラ株のプラス材料ととらえられたようだ。

トランプ氏は講演の中で「マスク氏は賢明な男だ」と称賛。これに対してマスク氏はXのアカウントで「機会が訪れるなら、アメリカのために力を尽くすことを楽しみにしている。報酬も肩書も称賛されることも必要ではない」と投稿した。一方、トランプ氏は大統領に就任すれば1日目にEV購入時の補助金を廃止する意向を示しているが、マスク氏は補助金廃止は他のEVメーカーにとってより大きな打撃になるとの見方を示している。

アメリカ大統領選挙の討論会も株価を左右する見通し

さらにトランプ氏は講演で、大統領に就任すれば規制緩和を大胆に進める方針も示し、前回の任期中の株価上昇や物価上昇の落ち着きも誇ってみせた。大統領選挙で企業活動を後押しする立場を広くアピールし、選挙戦を優位に進める狙いがありそうだ。大統領選挙をめぐっては10日にトランプ氏と民主党候補のカマラ・ハリス副大統領との討論会が行われる予定で、両者の発言が株式市場で材料視される可能性もある。

ただ、テスラは2024年のEV販売台数の伸びが減速するとの見通しを示しており、テスラの株価は2023年末比では7.37％安というマイナス圏に沈んだままだ。テスラの株価は4月の1-3月期決算発表に際して新型車販売時期の前倒しを示したことで浮上が始まったものの、7月発表の4-6月期決算では利益面での不振が投資家の失望を招き、株価を下落させていた。テスラ株の今後の見通しは業績面で投資家を納得させられるかにもかかっている。