軟調地合いが続く米ドル相場とパウエルFRBのスタンス
米金利は反発基調にあります。しかし、米ドル相場は金利の上昇に追随できない状況が続いています。このタイミングでパウエルFRBがさらにハト派スタンスへ傾斜していることが確認される場合、米ドル相場全体の売り圧力が高まるでしょう。詳細はマーケットレポートをご覧ください。
・崩れる「米金利上昇→米ドル高」の関係
28日の米ドル相場のパフォーマンスを確認すると、対先進国通貨では日本円のみ上昇した(前日比+0.28%)。一方、対新興国通貨ではメキシコペソ(同+0.35%)と中国人民元(同+0.16%)では米ドル買い優勢となったが、その他の主要な通貨に対しては下落した。ドル円だけを見ていると「米ドル高」ムードが高まっていると感じるが、市場全体を俯瞰すると昨日のドル円の上昇は、「円売り」が土台だったことがわかる。昨日の動向でより注視すべきは、新興国通貨のパフォーマンスである。リスク選好相場を背景に米長期金利(以下米金利)が1.86%の水準まで反発する局面が見られても、リスク性の高い新興国通貨の買い圧力が米ドル買いのそれを凌駕した。「米金利上昇→米ドル高」という従来の関係が崩れているこの状況で米金利が再び低下する場合、新興国通貨は対米ドルで堅調地合いが継続しよう。これは欧州通貨にも言える。ユーロドルは直近高安のフィボナッチ・リトレースメント38.20%の水準1.1064レベルでサポートされ、昨日は陽線が示現。一方、英ポンド/米ドルも1.28の水準を堅持している。目下のところ両通貨に買い材料は見当たらない。それでも欧州通貨売りムードが高まらない現在の状況は、ブレグジットリスクの後退から米ドル安へと、欧州通貨をサポートする土台がシフトしていることを示唆している。
・焦点はパウエルFRBのスタンス
米ドル買い需要が後退しているタイミングで米金利に再び低下圧力が高まれば、日米利回り格差の縮小に連動しているドル円には再び下落圧力が高まろう。その米金利の動向を見極める上で注目すべきは、やはり米FOMC(29~30日開催)である。0.25%の利下げはすでに市場で織り込み済み。よって、今回の焦点はパウエルFRBが考える経済の見通しにある。ハト派スタンスへ傾斜する言動があれば、米金利には低下圧力が高まろう。このケースで注視すべきは1.5%前後の攻防である。ドル円には低下圧力が高まろう。だが、株式市場が堅調地合いを維持していることから、104.44(8/26安値)を起点とした短期サポートライン(今日現在107.70前後)は維持する公算が高い。一方、米中通商協議に対する期待感が高まっているタイミングでパウエルFRBが先行きについて強気の見通しを示す場合、米金利のさらなる上昇が予想される。FOMC後、時間をかけて2.0%の水準を突破する場合、ドル円は110円台を目指す可能性が高まろう。
【ドル円】
・欧州通貨のチャートポイント
ユーロドルは上述したフィボナッチ・リトレースメント38.20%の攻防が焦点となろう。この水準を維持する場合、1.11台の攻防シフトを予想する。このケースでは1.1162(10/24高値)の突破が焦点となろう。これに成功する場合は、1.1179(10/21高値)が次のターゲットとして浮上しよう。1.1070にはビッドが観測されている。一方、1.1170-80にはオファーの観測あり。
英ポンド/米ドルは1.28台の維持が焦点となろう。これに成功する場合は1.29台の攻防シフトと1.29ミドルの突破が焦点となろう。この水準をも突破する展開となれば、1.3012(10/21高値)を次の上値ターゲットと予想する。一方、1.28台を割り込む展開となれば、ビッドが観測されている1.2740および1.2700のトライが焦点となろう。後者の水準はフィボナッチ・リトレースメント38.20%の水準にあたる。
【ユーロドル】
【英ポンド/米ドル】
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