【週間展望】テクニカルラインを維持したドル円、日銀会合3つの焦点、サポート要因としてのFOMC
ドル円(USD/JPY)は50日線と短期サポートラインの維持に成功した。パウエルFRBの慎重姿勢を考えるならば、今週の日銀イベントが円買いの要因となっても一時的な動きで終わる可能性が高い。今週のドル円の展望は?注目のチャート水準は?
※FOMCの注目ポイントについては、こちらのレポートを参照してください
この記事のポイント
・6月の日銀会合では3つの点に注目したい
・日銀イベントで円高となっても一時的な動きとなろう
・底堅さ維持するドル円、158.00のトライを意識する状況に
・下落の局面では50日線と短期サポートラインの維持が焦点に
日銀金融政策決定会合、3つの焦点
焦点1:国債買い入れの減額
13~14日に日銀は金融政策決定会合を開催する。6月会合では3つのことに注目したい。ひとつは、現在月6兆円程度の長期国債の買い入れについての議論である。
今回の会合ではこの点について議論を進めるとの観測報道がすでに流れている。外為市場は円の買戻しで反応する局面が見られた。
内容次第で「焦点1」は円を買い戻す要因になり得る。しかし、植田日銀は急激な金利の上昇に対しては機動的に対応する姿勢にある。また、減額についてはある程度市場で織り込まれている。
これらの状況を考えるならば、下で述べる2つの焦点の方が、円の買戻し要因となることが予想される。
焦点2:円安に対する植田総裁の見解
まずは、円安に対する植田総裁の会見内容に注目したい。4月会合後の定例会見で植田総裁は、「円安が基調的な物価上昇率に大きな影響を与えているわけではない」と述べた。翌週、ドル円(USD/JPY)は34年ぶりに160円台へ上昇した。
5月連休明けの7日に岸田文雄首相は植田総裁を首相官邸に呼び出し、「市場の受け止め方には十分注意してください」と、くぎを刺されたという報道が流れた。植田総裁は面会後、「円安については日銀の政策運営上、十分注視をしていくことを確認した」と記者団に述べた。
そして5月8日の衆議院の財務金融委員会で植田総裁は、「過去の局面と比べて為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている側面、あるいはリスクがあることは意識しておく必要がある」と、円安に対する見解を修正した。
上で述べた一連の動きを考えるならば、岸田政権内で円安が重要な問題として強く意識されていること、植田総裁が政治的なプレッシャーを受けていることは明らかである。
ゆえに植田総裁は、円安について機動的に対応する姿勢を強調してくる可能性がある。円安対応で強気の姿勢を示す場合は、一時的にせよ円の買戻し要因となろう。
焦点3:賃金動向に関する植田総裁の見通し
植田総裁の定例会見で注目すべきことが、もう一つある。それが、賃金の見通しである。
植田総裁は”持続的な”賃金の上昇を重視している。その賃金動向を考えるうえで重要な指標が、毎月勤労統計調査である。7月の会合までに確認できるデータは5月分までである(7月8日に5月の毎月勤労統計調査が発表)。春闘後も持続的な賃上げの状況が維持されるかどうか?を判断するには不十分である。
それでも植田総裁が今後も賃金が持続的に上昇していくとの見通しを示す場合は、現在、短期金融市場で意識されている7月利上げの可能性がより強く意識されよう。賃上げに対する強気の発言もまた、円の買戻し要因になり得る。
日銀 政策金利の予想推移
日銀イベントを受けた円相場の展望
今週の日銀イベントでは、上で述べた「焦点2」と「焦点3」が、円相場の変動要因となることが予想される。しかし、これらの材料が円の買い戻し要因となっても、一時的な現象で終わる可能性が高いと筆者は考えている。
パウエルFRBは今週の連邦公開市場委員会(FOMC、11~12日開催)で利下げに対して慎重な姿勢を貫くだろう。5月CPIでインフレの粘着性が示される可能性もある。
2019年9月以来、4年9カ月ぶりに利下げを決定した欧州中央銀行(ECB)だが、7月理事会での追加利下げについては明言を避けた。現状、短期金融市場では年内あと1回の利下げを織り込む状況にある。
米欧中銀の慎重姿勢は、国内との金利差を意識させる要因(根強い円安の要因)となろう。
カナダ中銀(BOC)は今月5日の会合で、約4年ぶりの利下げに踏み切った(翌日物金利の誘導目標を5.00%から4.75%に引き下げ)。短期金融市場では、BOCが連続で利下げに動く可能性を意識する状況にある。
しかし、カナダ円(CAD/JPY)は50日線でサポートされ、上昇基調のトレンドチャネル内で推移している(下のチャートを参照)。ユーロ円(EUR/JPY)やポンド円(GBP/JPY)など、他の主要なクロス円も高値圏での攻防を維持している。
これらクロス円の動きは、現在の円安圧力の根強さを示唆している。
カナダ円のチャート:日足 23年12月以降
ドル円の週間展望、注目のチャート水準
50日線と短期サポートラインを維持
ドル円(USD/JPY)は先週、短期サポートラインの維持に成功した。このラインと並行している50日線の維持にも成功し、10日線を大陽線で突破した。テクニカルの面では、ひとまず下落のリスクが後退している。
ドル円の地合いの強さは、日足のストキャスティクスとRSIの動きも示唆している。ストキャスティクスは上昇基調へ転じ、買われ過ぎの水準までまだ余裕がある。RSIはゴールデンクロスを形成するムードにある。
今週のドル円は、日米の中銀イベントと5月の米消費者物価指数(CPI)で大きく動くことが予想される。米国のイベントは、ドル円の上昇要因となる可能性がある。
一方、ドル円の下落要因として注目すべきは日銀イベントである。しかし、こちらのIG為替レポートで取り上げたパウエルFRBの慎重姿勢と上で述べた状況を考えるならば、日銀イベントが円買いの要因となっても50日線や短期サポートラインで反転する展開を想定しておきたい。
仮にドル円が上2つのテクニカルラインを下方ブレイクしても、下の4時間足チャートで取り上げている2つのサポート水準で反転する展開を想定しておきたい。
ドル円のチャート:日足 23年12月以降
上昇の局面では158円のトライが焦点に
ドル円(USD/JPY)は先週、IG為替レポートで注目していた156.50レベルを上方ブレイクした(下のチャートを参照)。この水準はレジスタンスへ転換する可能性があったが、ドル円が難なく突破した状況は、地合いの強さを示唆している。
今週、ドル円がさらに上値を目指す場合、注目すべきは「158.00」のトライである。IG為替レポートで何度も指摘してきた重要なレジスタンスの水準である。
ドル円が158.00レベルをトライするシグナルとして注目したいのが、157.00レベルの攻防である。先週7日はこの水準で上昇が止められ、レジスタンスへ転換する可能性を残した。
ドル円が157.00を完全に上方ブレイクする場合、次の焦点は、6月3日の東京時間に付けた高値157.50レベルの攻防となろう。この水準をも上方ブレイクすれば、158.00のトライが焦点として浮上しよう。
上で取り上げたレジスタンスの水準でドル円の上昇が止められる場合は、50日線(短期サポートライン)の維持が焦点となろう。この移動平均線は今日現在、155.05前後で推移している(下のチャート、青ラインを参照)。
ドル円が50日線を完全に下方ブレイクする場合は、国債購入の減額報道による円高を止めた154.50レベル、そして5月中旬の円高を止めた153.60レベルの攻防に注目したい(下のチャートを参照)。
時間足のストキャスティクスとRSIを軸に相場の過熱感を確認し、これらが買われ過ぎの水準でデッドクロスの状況にある時(または売られ過ぎの水準でゴールデンクロスの状況にある時)に、ドル円が上で述べたチャートの水準をトライする局面では、反落(または反発)を意識したい。
ドル円のチャート:4時間足 4月29日以降
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