PCE物価は減速ストップか 8月予想 S&P500の不安晴れず
アメリカの8月のPCE物価は総合指数の伸びが加速する見通し。政策金利の高止まり観測を強め、株価を下押ししそうだ。
アメリカの物価上昇減速が長続きしない可能性が出ている。29日に発表される8月の個人消費支出(PCE)物価指数は総合指数の伸びが2か月連続で加速する見通し。2022年6月をピークとして続いてきた物価上昇率の低下傾向の停止を感じさせる結果が予想されている。背景にはエネルギー価格の上昇があり、物価上昇抑制を目指す米連邦準備制度理事会(FRB)は気の抜けない状況が続きそうだ。8月のPCE物価指数の結果が、FRBが政策金利を高止まりさせる方向性に変化をもたらさないと判断されれば、長期金利の上昇やS&P500種株価指数の下落が続くことが想定される。
アメリカのPCE物価は2か月連続で伸びが加速の予想
8月のPCE物価指数は29日午前8時30分(日本時間午後9時30分)に米商務省が発表する。ロイター通信のエコノミスト調査によると、総合指数の伸び率は前年同月比3.5%となり、7月の3.3%から拡大すると見込まれている。予想通りになれば伸び率拡大は2か月連続で、2022年5、6月以来1年2か月ぶりとなる。総合指数の伸び率は6月の7.0%をピークとして低下を続けてきたが、方向転換を感じさせる結果になりそうだ。
総合指数の上昇加速が見込まれる背景には、エネルギー価格の値上がりがある。米エネルギー情報局(EIA)のデータによると8月28日時点のレギュラーガソリンの平均価格は1ガロン=3.813ドルで7月24日比で6%上昇した。原油価格がサウジアラビアの減産延長などの結果、値上がりしているためだ。こうした影響を受けて、13日に発表された8月の消費者物価指数(CPI)でも総合指数の伸び率が2か月連続で拡大していた。ガソリン価格は9月25日時点では3.837ドルとなっている。
一方、PCE物価指数のエネルギーと食品を除いたコア指数の伸び率は3.9%となり、7月(4.2%)から下がる見通し。コア指数の伸び率が3%台になれば2021年9月(3.9%)以来だ。FRBは物価動向を判断する基準としてPCE物価のコア指数を重視しており、この意味では米国の物価上昇は落ち着きをみせているともいえる。
FRBはエネルギー価格の高止まりを注視
ただ、FRBはコア指数の伸びの減速に満足するわけではなさそうだ。20日までの連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利を5.25-5.50%に据え置くと同時に、政策金利は2024年末でも5%超の水準にあるとの見通しを提示。物価上昇との闘いが長期化し、簡単には利下げには動かないとの立場を感じさせた。ジェローム・パウエル議長は20日の記者会見で、エネルギー価格の上昇は消費者の支出や物価見通しに影響を与えると指摘。コア指数を重視するという従来の考えを強調しつつ、「エネルギー価格の高止まりがどれだけ長く続くかが問題だ」と話している。
こうした中、26日のニューヨーク債券市場では長期金利(10年物米国債利回り)が4.558%まで上昇。S&P500(SPX)の終値は前日比1.47%安となった。政策金利が16年ぶりの高さとなる中で、長期金利が上昇し、株価の下押し圧力になる構図が続いている。8月のPCE物価指数が予想通りの内容となれば、株価をめぐる悪環境にも変化は出なさそうだ。
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