米の利上げは終了間近? FRB幹部発言で金利低下 米株価は反発
10日の米金融市場で利上げ終了が意識された。FRB幹部の発言が材料視された形だが、経済指標次第の状況に変化はない。
米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが終了に近づいているとの見方が10日の米金融市場を動かした。FRBのマイケル・バー副議長らのコメントが利上げ終了を示唆しているとして材料視されたためで、ニューヨーク債券市場では10年物米国債の利回り(長期金利)が5営業日ぶりに低下した。米国の金利上昇はS&P500種株価指数上昇の重石になっていただけに、10日の米株式市場は4営業日ぶりに反発している。ただしバー氏らは利上げの判断は、今後公表される経済指標次第だとの見方も改めて強調しており、12日発表の6月の消費者物価指数(CPI)などの重要度がさらに高まりそうだ。
米FRB副議長「十分な金融引き締めに近い」
バー氏は米ワシントンで開かれたイベントで銀行に対する規制強化について講演し、質疑応答に応じた。この中でバー氏は物価上昇と闘う中でどこまで金利を上げる必要があるのかを問われ、個人的な意見と強調したうえで、「われわれは十分に金融が引き締められている状態の近くにいる」と述べた。
バー氏はこの発言の前に、FRBが2022年3月以降の利上げサイクルの中で、利上げ幅を0.75%、0.50%、0.25%と段階的に引き下げ、2023年6月の連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げを見送った経緯を説明。適切な政策金利の水準を慎重に探っていることを強調した。一方、FOMC参加者の多くが「まだやるべきことがある」と考えていることにも言及している。
また、サンフランシスコ連銀のメアリー・デーリー総裁は10日にワシントンでシンクタンクが開いた別のイベントに登壇し、「年内2回の利上げ」が必要だとの見方を示した。そのうえで利上げが消極すぎすぎて物価上昇を抑えられないリスクと、利上げが積極的すぎて経済活動を抑えすぎてしまうリスクは同程度になってきたと説明。政策金利の決定は「難しくなっている」と述べた。
米国の長期金利が5営業日ぶりに低下
ロイター通信はバー氏やデーリー氏の発言を「FRBが利上げサイクルの終わりに近づいている」と配信。金融情報会社リフィニティブのデータによると、10日のニューヨーク債券市場では長期金利が4.006%となり、前日の4.048%から低下した。長期金利は7月に入ってから4営業日連続で上昇してきたが、ブレーキがかかったかたちだ。
このところの長期金利上昇は、投資先としての株式の優位性が薄れるとの見方を強め、株価上昇の足を引っ張ってきた。それだけにバー氏らの発言は株式市場で歓迎されたもようで、10日の米株式市場ではS&P500(SPX)やハイテク株の割合が多いナスダック総合指数が4営業日ぶりに反発した。金利の先高観の緩みは、ドル円相場(USD/JPY)での円高ドル安にもつながっている。
ただしバー氏もデーリー氏も発言の中で、金融政策の決定が「経済指標次第」であることを繰り返し強調している。12日発表の6月CPIでは物価上昇の減速が予想されているが、結果が強いと判断されれば、金利水準が改めて上昇する可能性もある。
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