米地銀株指数5.5％下落　FOMC中に難局深まる　利上げ背景に不安拡大

2日の米国の株式市場で地銀株が急落した。地銀株の値動きを示すKBW地銀株指数は2日の下落率が5.5％となり、金融システムへの不安拡大のきっかけとなったシリコンバレーバンク（SVB）の経営破綻時以来の大きさ。1日にファースト・リパブリック銀行の救済が決まった後も、投資家の間で地銀の経営状態への懸念が消えていないことが浮き彫りになった。金融市場では米連邦準備制度理事会（FRB）が3日までのFOMC（連邦公開市場委員会）で0.25％利上げを決めるとの見方が優勢だが、銀行経営に与える影響への配慮を示せるかどうかも課題となりそうだ。

株価が15％下落した地銀も

KBW地銀株指数の2日の終値は82.31。5.5％の下落率はSVBの経営破綻前後にあたる3月9日（6.4％）、13日（7.7％）以来の大きさだ。KBW地銀株指数は1日も2.6％下落しており、2日間の下落率は8％を超えた。個別株ではアリゾナ州を拠点とするウェスタン・アライアンス（チャート）の株価が2日に15％超下落。テキサス州のコメリカ（チャート）も12％超の下落した。

米国の金融当局はファースト・リパブリック銀の救済に際してすべての預金をJPモルガン・チェースに引き継ぎ、預金者に損失が生じる事態を回避して不安の鎮静化を狙った。しかしファースト・リパブリック銀の破綻をきっかけに、預金者がより高い金利を求めて資金を移動させる実態も改めて浮き彫りになった。ファースト・リパブリック銀は顧客への手厚いサービスや借り手に有利な住宅ローンを売り物にしつつ、預金者に支払う金利は低かったと報じられている。米国ではFRBが1年以上にわたって続けてきた利上げを背景に、2年物米国債の利回りが4％前後という高水準で推移している。

FOMCは引き続き0.25％利上げ観測が優勢

一方、米国は3月の個人消費支出（PCE）物価指数の前年同月比伸び率が食品をエネルギーを除いたコア指数で4.6％となるなど、高い物価上昇が続いている。このため金融市場ではFRBがFOMCで0.25％の利上げを決めるとの見方が多い。CMEグループのデータによると、3日の0.25％利上げ決定について、投資家の動きから算出される確率は日本時間2日夜時点で約89％に達している。前日よりは下がっているが、引き続き高水準だ。一方、12月のFOMC後の政策金利の水準が現在の4.75-5.00％以上である見込みは1.0％で、前日から大きく低下した。

2日の地銀株の下落で投資家の地銀経営への不安が鮮明になり、預金者の間でも財務の健全性や預金金利の高さで銀行を選別する動きが進む可能性がある。3日に記者会見を控えるFRBのパウエル議長にとっては、物価上昇を抑えつつ、景気の先行きや銀行の経営環境変化にも対応せねばならない難しい局面が続く。