ドル円の週間見通し 為替介入の思惑とトランプ氏銃撃の影響 不意打ちの円高を警戒
政府・日銀による為替介入の観測とトランプ氏銃撃の影響、米小売売上高、FRB高官の発言そして欧州中央銀行(ECB)理事会... 今週も外為市場を動かす材料が目白押しである。注目の通貨ペアは、為替介入が意識される状況にあるドル円(USD/JPY)である。今週の見通しは?注目のチャート水準は?
この記事のポイント
・ドナルド・トランプ氏の銃撃、週明けの各市場の反応に注目
・今週も為替介入を意識する状況に、”不意打ちの円高”を警戒
・ドル円、目先の焦点は新たな下値の水準を見極めることにある
・ドル円の下落幅が拡大する場合は、154円への下落と維持が焦点となろう
トランプ氏銃撃と市場の反応
昨日(日本時間14日午前)、衝撃のニュースが飛び込んできた。アメリカの現地時間13日午後6時すぎ(日本時間14日午前7時すぎ)、東部ペンシルベニア州でトランプ前米大統領の演説中に銃撃とみられる数発の発砲音が鳴った。トランプ氏はSNSに「右耳の上部を銃弾で撃ち抜かれた」と投稿した。幸いにも大事には至らず、15〜18日の共和党大会に出席するため、予定通り14日に米中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーに入ることを明かした。
どのような理由や背景があるにせよ、暴力での排除は絶対に許される行為ではない。しかし、その行為が公衆の面前で行われた事実は、日本人が想像する以上に今回のアメリカ大統領選挙が熾烈な戦いになっていることを示唆している。
ゆえに、今後アメリカの大統領選挙に向けて不測の事態が起こる可能性を常に意識する必要があろう。その状況次第では、各市場に大きな影響を与えるだろう。
まずは、週明けの米国の債券市場と株式市場、そして米ドル相場がトランプ氏銃撃に対してどのような反応を示すのか?この点をしっかりと確認したい。
なお、週明けの外為市場では、早朝6時過ぎに対主要通貨で米ドル売りが見られた。しかし、すぐに買戻しが入りヒステリックな米ドル安の反応は見られない。対日本円では158円台へ上昇し、米ドル高優勢の状況にある(下のチャートを参照)。
ドル円のチャート:5分足 15日朝の動向
出所:TradingView
為替介入への警戒が続く
外国為替市場で11日夜と12日夜に円相場が急伸した。政府・日銀が為替介入(円買い介入)に踏み切ったとの観測が浮上している。
日銀は12日、16日の当座預金残高の見通しを公表した。それによると、為替介入などが反映される「財政等要因」はマイナス3兆1700億円だった。
一方、民間の短資会社3社(セントラル短資、東京短資、上田八木短資)による財政等要因に関する予測は、2,000億円~4,000億円の余剰だった。
11日に為替介入が実施された場合、差額の約3兆3,700億円~3兆5,700億円規模の円買い介入が実施されたと推計される。
※7月17日に追記
日銀が16日に公表した17日の当座預金残高の見通しから、12日に為替介入が実施されていた場合、その規模は約2兆円と推測される
不意打ちの円高を警戒する状況に
注目すべきは、為替介入(観測)が市場に与える影響である。この点を通貨オプション市場のリスクリバーサルで確認すると、ドル・プットへ急速に傾いていることが分かる。
一方、予想変動率は、1週間のそれが10%台へ上昇している。これらの動きは、通貨オプション市場の参加者が、短期的にドル円ドル円(USD/JPY)の下落を警戒していることを示唆している。
円買い介入には限界がある。しかし、連日で政府・日銀が動いてきたとなれば、通貨オプションの動向が示唆するとおり、今週も“不意打ちの円高”を警戒する必要があろう。
ドル円のリスクリバーサルと予想変動率の動向:日足 年初来
ドル円、今週の見通しとチャート分析
短期サポートラインのブレイクを警戒
ドル円(USD/JPY)は今、テクニカルの面で重要な分岐点に差し掛かっている。その分岐点とは、サポートラインの攻防である。
為替介入と見られる円高を受け、ドル円は先週、今の上昇トレンドを象徴する短期サポートを2度トライした。そしてかろうじてこのラインの維持に成功した。
サポートラインと並行している50日線(今日現在157.80台)を維持している状況は、ドル円のトレンドが未だ上値トライにあることを示唆している。
しかし、上で述べたとおり通貨オプションでは、ドル円の下落を警戒する状況にある。日足のMACDはデッドクロスへ転じている。
一方、RSIは買われ過ぎの水準からデッドクロスを形成し、急速に低下している。売られ過ぎの水準までまだ余裕があること、かつゴールデンクロスの状況が確認されていない状況も考えるならば、目先はドル円がサポートラインを下方ブレイクする展開を警戒しておきたい。
ドル円のチャート:日足 23年12月以降
出所:TradingView
新たな下値水準の見極め
ドル円(USD/JPY)が今週、短期サポートライン(50日線)を完全に下方ブレイクする場合は、さらなる下落幅の拡大を警戒したい。
5月3日と6月4日の安値から算出されるフィボナッチ・リトレースメントに注目すると、目先は157円前後の攻防が焦点となろう。この水準を挟んで61.8%の水準157.34レベルと半値戻しの水準156.90レベルが展開している。
ドル円が156円台の攻防へシフトする場合は、76.4%の水準156.25レベルの攻防に注目したい。上の水準156.50台には75日線が推移している。
ドル円が155円台の攻防となる場合は、61.8%の水準155.71レベルの攻防が焦点として浮上しよう。この水準は6月21日に相場を下支えした経緯がある(下の日足チャート、黒矢印を参照)。
為替介入と154円台の攻防
政府・日銀による為替介入が実施される場合は、ドル円は4~5円程度、円高へ振れる展開を警戒したい。
実際に円買い介入が行われる場合、ドル円(USD/JPY)は上で述べたサポート水準をことごとく下方ブレイクするだろう。そして154円の維持が焦点として浮上しよう。
154円台で最初に注目したいのが、100日線の攻防である。この移動平均線は今日現在、154.88レベルで推移している。
100日線の下方ブレイクは、154.50レベルをトライするシグナルと想定しておきたい。この水準は、6月上旬の円高相場を止めた重要なサポートポイントであり、かつ6月4日の安値を起点としたフィボナッチ・リトレースメントの全戻しにあたる。
そして、すぐ下の154.24レベルは、5月の安値を起点としたフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準にあたる。このテクニカルポイントの下方ブレイクは、154.00レベルをトライするシグナルとして警戒したい。
ドル円のチャート:日足 24年4月の下旬以降
出所:TradingView
ドル円の反発局面では160円の攻防が焦点に
一方、ドル円(USD/JPY)の反発局面では、節目の160円の攻防が焦点となろう。この水準は、7月11日以降の高安で算出されるフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準(159.98レベル)にあたる。
ドル円が160円を目指すシグナルとして、以下で述べるテクニカル水準での攻防に注目したい。
週明け15日の朝、フィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準を突破する局面にある(下の1時間足チャート、黒矢印を参照)。159.00レベルをトライするシグナルと想定したい。
159.00レベルはフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準(158.96)であり、テクニカルの面で意識されやすい。ゆえに、「レジスタンス転換」の可能性を意識しておきたい。
ドル円が159円台へ反発する場合は、12日の高値159.45レベルの攻防が焦点となろう。この水準はテクニカルの面で半値戻しの水準(159.47)にあたる。
IG為替レポートで注目している21日線は今日現在、159.94レベルで推移している。159円ミドル以上の攻防となれば、21日線(フィボナッチ・リトレースメント61.8%)のトライを予想する。
これらテクニカルでの攻防は、160.00の攻防を意味する。ゆえに、ドル円が21日線の突破に成功する場合は、160円台へ再び上昇する展開を想定しておきたい。
1時間足のストキャスティクスとRSIが買われ過ぎの水準でデッドクロスにある時、ドル円が上のレジスタンス水準まで反発する局面では、反落相場を警戒したい。
ドル円のチャート:1時間足 7月11日 米消費者物価指数(CPI)以降
出所:TradingView
今週の注目材料
6月の米小売売上高
今週16日に6月の米小売売上高が発表される。アメリカ個人消費の状況を把握するうえで重要な経済指標である。
現在の米債市場では、6月の雇用統計と消費者物価指数(CPI)を受けて、9月の利下げが意識される状況にある。
この状況でアメリカ個人消費の落ち込みが確認される場合は、「米金利のさらなる低下→米ドル売りの進行」を予想する。ドル円(USD/JPY)は上で述べたサポート水準のトライを想定したい。
一方、予想外に小売売上高が強い内容となる場合は、調整の米債売りが予想される。このケースでは「米金利の反発→米ドルの買戻し」を想定したい。
米ドル買いはドル円のサポート要因となろう。だが上で述べたとおり、今は円買い介入が意識されやすい状況にある。実際に政府・日銀が為替介入を行う可能性が高まっている状況を考えるならば、ドル円の反発局面では戻り売りを警戒したい。
アメリカ小売売上高の動向:23年6月以降
ブラックアウト期間前のFRB高官の発言
7月20日より、米連邦公開市場委員会(FOMC)の参加者が外部に政策関連の発言を控えるブラックアウト期間に入る。
ゆえに各市場の参加者は7月以降のFOMCの動向を見極めるヒントを得るため、ブラックアウト期間前のFRB高官による発言に注目するだろう。
パウエルFRB議長は15日(日本時間16日午前1時30分)、ワシントンD.C.エコノミッククラブでディビッド・ルーベンシュタイン氏のインタビューを受ける。
ルーベンシュタイン氏はカーライルグループのCEOを務めた経歴があり経済と金融に通暁している。今後の金融政策に話題が及ぶ場合、パウエルFRB議長の発言内容によっては米金利と米ドル相場を動かす可能性がある。
パウエル氏のインタビュー以外では、カンザスシティ連銀主催のイベントで経済見通しについての講演を行うウォラーFRB理事(日本時間17日22時35分)や、今年FOMCの投票権を持つリッチモンド地区連銀のバーキン総裁の発言にも注目したい。バーキン氏はメリーランド州ランドーバーで経済についての講演を行う(日本時間17日22時)。
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