ドル円139円台 1年2か月ぶりの円高水準 タカ派の日銀会合ならさらなる円高も
ドル円は16日、139.58レベルまで下落した。1年2か月ぶりの円高水準である。9月のFOMCでは、0.5%利下げの期待が高まっている。米ドル安優勢のなか、日銀イベントが”タカ派”と市場で受け止められる場合、ドル円はさらに下値を目指す展開が予想される。注目のチャート水準は?
記事のポイント
・ドル円は16日、1年2か月ぶりに139円台へ下落した
・米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.5%利下げの確率が急上昇している
・この状況で”タカ派の日銀会合”となれば、さらに円高が進行しよう
・ドル円は138円すら通過点に過ぎない状況となる可能性あり
止まらぬ円高、ドル円は139円台へ
9月に入り外為市場では再び円高が進行している。16日までの動向を確認すると、先進国通貨や新興国通貨を問わず総じて円高優勢の状況にある。
ドル円(USD/JPY)は16日、節目の140.00を下方ブレイクし、安値139.581レベルまで下落する局面が見られた(IGレート)。
円相場の動向:月初来
ブルームバーグの為替データで筆者が作成
FRBの0.5%利下げを織り込む市場
15日のIG週間為替レポート「ドル円の週間見通し 止まらぬ円高 米ドル安も進行なら138円が視野に 焦点はFOMCの利下げ幅」で述べたとおり、今週のドル円(USD/JPY)はさらなる下値のトライが予想される。
そう考える理由の一つが、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策転換である。外為市場の参加者は、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でFRBの金融政策が引き締めサイクルから緩和サイクルへ転じてることを織り込んでいる。
注目すべきはそのペースだが、CMEのFedWatchツールによれば、9月FOMCでの0.5%利下げの確率が67%と、0.25%の確率(33%)を上回る状況にある(下のチャートを参照)。
9月FOMCの利下げ確率
出所:CMEのFedWatchツール / 日本時間9月17日 7時時点
また、OISに基づく今年12月末時点での政策金利の水準が4.1%台まで低下している。先週末までの織り込み水準は4.2~4.3%だったことを考えるならば、短期金融市場ではパウエルFRBが緩和サイクルを強く推し進めていく可能性を意識していることが分かる。
市場の観測どおり、パウエルFRB議長がFOMC後の定例会見で利下げを推し進めていく姿勢を鮮明にすれば、米金利の低下と米ドル安の圧力を高める要因となろう。
FOMC 政策金利の予想推移
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 9月17日 7時時点
日米の利回り格差とドル円の展望
9月のFOMCでパウエルFRBが0.5%の大幅利下げを決定すれば、米債市場では長期金利(10年債利回り)が3.6%の水準を完全に割り込む展開が予想される(期待先行でFOMCを前に3.6%を割り込む可能性もある)。米金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りやドル円のトレンドに影響を与える米5年債利回りにも低下の圧力が強まるだろう。
米金利のさらなる低下は、米ドル売りの圧力を強めるだろう。同時に日米利回り格差のさらなる縮小も促すだろう。
今年の7月を境に、日米の利回り格差とドル円(USD/JPY)の相関関係(順相関の関係)が鮮明となっている(下のチャートを参照)。ゆえにFOMCの総合的な内容が米金利の低下圧力をさらに強める場合は、「日米の利回り格差がさらに縮小→ドル円の下落幅がさらに拡大」する展開を想定しておきたい。
日米の利回り格差とドル円の動向:日足 年初来
ブルームバーグのデータで筆者が作成
日銀会合の焦点、植田総裁の会見に注目
15日のIG週間為替レポート「ドル円の週間見通し 止まらぬ円高 米ドル安も進行なら138円が視野に 焦点はFOMCの利下げ幅」では、サポートラインへの転換が確認された“138円” をドル円(USD/JPY)の重要なサポート水準として取り上げた。
しかし、9月のFOMCを前にドル円が139円台へ下落した状況を考えるならば、138円すら単なる通過点の一つとして下方ブレイクする可能性が高まってきた。
パウエルFRBの大幅利下げは、ドル円が138円をトライそして下方ブレイクするきっかけになり得る。そして18~19日の日銀金融政策決定会合も「ドル円の138円ブレイク」の要因になり得る。
9月の日銀金融政策決定会合では現在の金融政策が維持される見込みである。ゆえに焦点は、声明文と植田和男総裁の定例会見となろう。特に後者の植田総裁の会見に注目したい。
植田総裁は今月3日、経済財政諮問会議に出席した。物価の見通しが実現していくならば引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整する従来の姿勢を改めて示した。
植田総裁は賃金の動向を政策決定の重要な指標としている。7月の毎月勤労統計調査によれば、実質賃金は前年同月から0.4%増加し、2カ月連続でプラスとなった。プラス幅は前月から0.7ポイント減少したが、これは夏季賞与(夏のボーナス)の影響があると考えられる(日本の企業では6月に夏季賞与を行う会社が多い)。
1人あたりの現金給与総額(名目賃金)は3.6%増の40万3,490円で、2年7カ月連続で増加した。また、雇用形態別の現金給与総額は、フルタイム労働者(正社員)が3.6%増の52万9,266円、パートタイム労働者は3.9%増の11万4,729円(時間当たり給与は1,337円で3.6%増)と、賃上げの傾向が続いていることが示された。
米中景気の減速懸念など海外景気の不透明要因を考慮してなお、持続的な賃上げと物価の好循環の確度が高まっていると判断し、植田総裁が追加の利上げに前向きな姿勢を示す場合は、円高がさらに進行する要因となり得る。
名目賃金と実質賃金の動向:2020年以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
ドル円は138円すら通過点となる可能性も
”ハト派のFOMC”と”タカ派の日銀会合”が重なれば、ドル円(USD/JPY)は上で述べたとおり138円すら通過点の一つに過ぎない、とばかりに米ドル安・円高が進行する可能性がある。
ドル円はサポートライン(下値の支持線)だけでなく、15日の週間為替レポートで取り上げたフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準140.48レベルをも下方ブレイクし、安値139.58レベルまで下落した。今週、138.00レベルをも難なく下方ブレイクする場合は、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準135.42レベルを視野に下落幅が拡大する可能性が浮上しよう。
ドル円のチャート:週足 2022年7月以降
出所:TradingView
132円が視野に?
ドル円(USD/JPY)の下落スピードが速い。目先は上で述べた138円と135円の攻防が焦点だが、日米中銀イベントそしてアメリカ大統領選挙に関する報道で米ドル安を志向するドナルド・トランプ前大統領の優勢報道で米ドル・円高がさらに進行する場合は、138円だけでなく135円のブレイクアウトを想定しておく必要がある。この場合のドル円は、2021年の安値102.59レベルと2024年7月の高値161.95レベルの半値戻しの水準132.27レベルが浮上する。
なお、下の月足チャートをみると、2021年以降の米ドル高・円安(ドル円の上昇相場)を象徴するトレンドライン(下値の支持線)が、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準139.27レベルと交錯している。
そしてドル円は現在、これら重要なテクニカルラインの攻防にある。ドル円がこれらのライン(特にトレンドライン)を下方ブレイクする場合は、さらに米ドル安・円高が進行するシグナルとなろう。
いずれにせよ今年後半のドル円は138円、135円そして132円の攻防に注目したい。
ドル円のチャート:月足 2020年以降
出所:TradingView
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