【ドル円の週間展望】為替介入を警戒する状況が続く もうひとつの焦点は米ドル安の進行 150円のブレイクも
為替介入に対する警戒感で円相場のボラティリティが拡大の傾向にある。先週のドル円(USD/JPY)は160円へ急騰後、一時151円後半まで急落する荒れた展開となった。今週も多くの市場参加者は円相場、特にドル円の動きに注目するだろう。円安を是正する動きがさらに進行するのか?この点を考えるうえで、今週は米ドル相場の動向に注目したい。その理由は?
サマリー
・先週の外為市場では、円高と米ドル安が同時に発生した
・為替介入が警戒されるなかで米ドル安が進行すれば、ドル円の下落幅が拡大しよう
・ドル円が50日線や61.8%戻しの水準を下抜ける場合は、150円のブレイクを警戒したい
・一方、ドル円の反発局面では、21日線の突破が焦点となろう
先週は円高優勢の展開に、ドル円の焦点は新たなサポート水準の見極め
先週の外為市場では為替介入(円買い介入)に対する警戒感を受け、日本円が主要国の通貨に対して上昇した。変動幅が拡大の傾向にある円相場は、今週も多くの市場参加者の関心を集めるだろう。
円相場のなかでも特に注目されるのがドル円(USD/JPY)となろう。ドル円は先月29日に160円台へと急伸した。そして今月3日に151円台(安値151.86レベル)まで急落する荒れた展開となった。
為替介入の可能性が強く意識されている現在の状況を考えるならば、今週のドル円は新たな下値の水準を見極めることが重要な焦点となろう。
円相場の動向:4月29日~5月3日
もうひとつの焦点は米ドル安が続かどうか
今週、為替介入を意識した動き以外でドル円(USD/JPY)の下落要因となり得るのが、米ドル相場である。
そう考える理由は、先週の米ドル相場が対主要国の通貨で下落したことにある(下のチャートを参照)。
米ドル相場の動向:4月29日~5月3日
再び高まる9月の利下げ期待
5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)はほぼ予想どおりの内容だった。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の定例会見では、次の会合での利上げの可能性を否定した以外に目新しい言動は見られなかった。
しかし、今回のFOMCでひとつだけ筆者が注目したことがある。それは、バランスシートの縮小ペースの減速を決めたことである。
FOMC声明では、6月1日から保有する米国債の縮小ペースを月間で最大600億ドルから250億ドルに引き下げるとした(MBSの上限は350億ドルで維持)。この決定自体がすぐに米ドル相場のトレンドに影響を与える可能性は低いだろう。
しかし、バランスシートの圧縮ペースを減速させることは、金融引き締めのペースを緩めることである。これは米金利の上昇圧力を後退させる要因になり得る。
この状況で利下げ期待が再び高まる場合、外為市場では次第に米ドル安の圧力が高まることが予想される。
その利下げ期待を高める要因として注目したいのが雇用、物価そして個人消費に関連した経済指標である。事実、先週3日に発表された4月の雇用統計が市場予想を下回ったことを受け、短期金融市場では9月の利下げ期待が再び50%前後まで上昇している。
そしてこれら経済指標の内容は、政策運営に対するFRB高官らの考えにも影響を与えるだろう。
米国 政策金利の予想推移
今週は米経済指標の発表が少ない。よって、米ドル相場の変動要因として注目したいのが、FRB高官らの言動である。
今週は、24年のFOMCで投票権を持つリッチモンド地区連銀のバーキン総裁の他、ニューヨーク地区連銀のウィリアムズ総裁、そして幾人かのFRB理事らが講演や討論会に参加する。
4月の雇用統計の評価、およびインフレや政策運営について言及する場合は、その内容次第で米ドル相場の変動要因となろう。
FRB高官による主な講演等の日程と内容
ドル円:今週の焦点と注目のチャートポイント
まずは50日線と61.8%水準の攻防に注目
今週もドル円(USD/JPY)が下値をトライする場合、最初に注目したいのが、50日線の攻防である。先週3日の下落局面では、見事にこの移動平均線でサポートされた(下のチャート、緑矢印を参照)。
そしてすぐ下の水準151.73レベルは、フィボナッチ・リトレースメント61.8%戻しにあたる。
日足のストキャスティクスが売られ過ぎの水準でゴールデンクロスを形成しつつあることを考えるならば(下のチャート、緑矢印を参照)、ドル円はこれらテクニカルポイントで一度反発する展開を想定しておきたい。
ドル円のチャート:日足 3月以降
円高と米ドル安が重なれば、ドル円は150円のブレイクを警戒
しかし、為替介入の可能性が意識されている状況のなかで今週も米ドル安の状況が続けば、ドル円(USD/JPY)の反発は限定的となろう。
円高と米ドル安が同時に発生し、ドル円が50日線や61.8%の水準(151.73)を難なく下方ブレイクする場合は、節目の150円を下方ブレイクする展開を想定しておきたい。
そしてテクニカルの面では、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準149.73レベルの攻防が焦点となろう(下のチャートを参照)。
ドル円のチャート:日足 3月以降
反発の局面では21日線の突破が焦点に
週明けのドル円(USD/JPY)は、反発スタートとなった。イエレン米財務長官は4日、円相場の動きにふれつつ為替介入の有無についてコメントを避けた。しかし介入については「まれであるべきだ」と述べた。同長官は先月25日にも、「まれな状況のみ」での為替介入を容認する姿勢を示している。
今後、米国サイドから為替介入についての発言が続けば、それに対する市場の警戒感が後退し、ドル円は再び上値をトライする可能性が高まろう。
上で取り上げた50日線や61.8%の水準でドル円(USD/JPY)が反発する場合は、21日線の攻防が最初の焦点となろう(上の日足チャート、青ラインを参照)。この移動平均線は今日現在、154.40レベルで推移している。
ドル円が21日線をトライするシグナルとして注目したいのが、153.30レベルと154.20レベルの攻防である(下のチャートを参照)。
153.30レベルは、現時点での5月高安のフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準にあたる。このテクニカルポイントの攻防では、レジスタンスの転換を意識したい。
一方、154.20レベルは、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準にあたり、21日線がすぐ上の水準で推移している。
日足のモメンタムは、久々にゼロラインを下回り弱気相場に勢いが出始めていることを示唆している(上の日足チャート、赤矢印を参照)。上で取り上げたレジスタンスの水準でドル円が反落する場合は、短期的に弱気相場(円安を是正する状況)が続く可能性を市場参加者に意識させよう。
一方、ドル円が21日線を難なく上方ブレイクすれば、155円のトライを意識したい。この水準は先月26日から29日にかけて相場をサポートした経緯がある。ゆえに、レジスタンスの水準へ転換する可能性を意識したい(下のチャート、左側の黒矢印を参照)。
ドル円のチャート:45分足 4月26日以降
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
IG証券のFXトレード
- 英国No.1 FXプロバイダー*
- 約100種類の通貨ペアをご用意
* 英国内でのCFDまたはレバレッジ・デリバティブ取引(英国でのみ提供)での取引実績において、FX各社をメイン口座、セカンダリー口座として使用している顧客の割合でIGがトップ(Investment Trends UKレバレッジ取引レポート 2022年6月)
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。