WTI原油が21年ぶり安値、貯蔵の限界近づく ブレントは底堅い
・4~6月期平均は10~20ドルへ
・米在庫、2カ月弱で満杯に
ニューヨーク原油先物相場がほぼ21年ぶりの安値を付けた。新型コロナウイルスの感染拡大で原油の需要が急減するなか、貯蔵施設の能力の限界が迫っていることが下落の背景。貯蔵できない原油は安価に処分されることになる。一方、ロンドンの北海ブレント原油先物は比較的堅調。
ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)に上場するWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の5月限は日本時間20日午前の時間外取引で、一時1バレル=14.47ドルまで下落。中心限月として1999年3月以来の安値を付けた。
5月限の取引が21日に終了となるため、限月交代により期先物への乗り換えから5月限の下げ幅がよりきつくなった面がある。WTI原油は期近物より期先物の方が極端に高い「スーパーコンタンゴ(極度の順ざや)」の状態。
調査会社のS&Pグローバル・プラッツは、需要の落ち込みにより、世界市場でこれまでに日量900万バレルの需要超過が発生したと指摘。このため、向こう数週間で世界の石油貯蔵が満杯になる可能性があるという。
需給の大幅な緩和により、年初に約65ドルだった原油相場は急落しており、4~6月期平均は10~20ドルになる可能性がある。
石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟の産油国で成るOPECプラスが一週間前に過去最大規模の原油減産に合意したが、S&Pグローバルはこれを「少なすぎ、かつ遅すぎ」とし、相場が回復するのは来年になるとの見方を示している。
米クッシング在庫
ラボバンクの17日付のリポートによると、WTI原油の受け渡し場所である米オクラホマ州クッシングの原油貯蔵施設の足元の在庫は5500万バレル。過去最高は2017年に記録した6900万バレルで、あと1400万バレルでこの水準に到達する。
また、貯蔵能力の上限である9200万バレル弱に達するまであと3700万バレル。現行ペースで積み増しが続けば、2カ月足らずでクッシングの施設から原油があふれ出すことになるとリポートは指摘している。
米エネルギー情報局(EIA)の週間原油在庫統計によると、米国の原油在庫は12週連続で積み増されており、10日までの週は1920万バレルと週間ベースで過去最大を記録している。
北海ブレント
ロンドンICEに上場する北海ブレント原油で期近の6月限は日本時間20日午前、27ドル台で底堅い。
ゴールドマンは、ブレントなどタンカーストレージにアクセスできる海上で生産される油種は貯蔵問題に強いと指摘している。
北海で生産されるブレントについて、キャッシュコストである20ドル付近にとどまる可能性高いとゴールドマンは予想。ただ、一時的にこれを下回ることはあり得るとした。
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