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【ドル円の見通し】再びタカ派に傾く植田総裁、円高進行、米雇用統計と株式の動向次第でドル円はさらなる下落も

日銀は10月の展望レポートで25年の物価上振れリスクについて言及した。植田総裁は定例会見で、政策判断の見極めで「時間的な余裕」の表現は今後使わないとした。総裁会見をタカ派とみた市場は円高へ振れた。今日の米雇用統計次第と株式の動向次第では、ドル円の下落幅が拡大する可能性があろう。

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記事のポイント

・日銀会合と植田総裁の会見を受け円高が進行している
・今日は、株安によるリスク回避の円買いも警戒したい
・注目材料は10月の米雇用統計、ドル円反発の材料となるか?
・ドル円、今日の見通しと注目のチャートポイントについて


日銀利上げ姿勢崩さず、植田総裁の会見で円高進行

日銀は10月31日まで開いた金融政策決定会合で政策金利の据え置きを決めた。10月の経済・物価情勢の展望(展望レポート)では2025年度の物価上振れリスクについて言及した。

また賃金と物価の好循環については、「物価上昇を反映した賃上げが実現するとともに、賃金上昇が販売価格に反映されていくことを通じて、賃金と物価の好循環は引き続き強まっていくとみられる」との見通しを示した。日銀会合の結果を受け、円相場は円高で反応した。

日銀の植田和男総裁は会合後に定例会見に臨んだ。前回の会見で指摘したアメリカ経済については下振れリスクが後退しているとし、前回の会見で使用した政策判断を見極めるための「時間的余裕」の表現を今後は使わないと述べた。

7月会合の植田総裁の会見はタカ派の印象を与え、9月会合の会見では一転してハト派へ傾いた。そして10月の会見で再びタカ派へ傾いた理由には、円安進行をけん制する狙いもあったと見られる。

実際、31日の外為市場は植田総裁の会見後に円高がさらに進行した。ドル円(USD/JPY)は151円台へ下落した。

円相場の騰落率:10月31日

円相場の騰落率:10月31日

ブルームバーグの為替データで筆者が作成

今日の注目材料は10月の米雇用統計

今日は10月の米雇用統計が発表される。労働市場の動向は米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースに大きな影響を与えるだろう。

米国の雇用統計 各項目の動向:2023年10月以降

米国の雇用統計 各項目の動向:2023年10月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:10月の市場予想

10月以降、強い経済指標が続いたことでアメリカ経済のソフトランディング期待が各市場で意識されている。特に米債市場では、長期金利(10年債利回り)が4.3%台まで上昇する局面が見られた。

金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りも4.1%台まで上昇している。短期金融市場で12月の利下げ確率が一時50%台へ低下する局面が見られた状況と整合的な動きである。

米政策金利の予想推移

米政策金利の予想推移

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / OISに基づく予想推移 1日午前8時時点

今週に入り発表されたアメリカの雇用指標は、9月のJOLTS求人件数が744.3万件と、8月の786.1万件から減少する一方、10月のADP雇用統計は23.3万件と、前月の15.9万人から増加した。そして昨日の週間新規失業保険申請件数は21.6万件と3週連続で減少するなど、まだら模様にある。

このため、各市場の参加者は10月の雇用統計で労働市場の堅調さを確認しようするだろう。雇用統計が総じて市場の予想を上回る場合は景気のソフトランディング期待だけでなく、上で述べた12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を据え置く期待が利下げの期待を上回る可能性も想定しておく必要がある。

ゆえに強い米雇用統計は、米ドル高の圧力を再び高める要因となろう。


ドル円の見通しとテクニカル分析

下落幅の拡大を警戒

ドル円(USD/JPY)のリスクリバーサルの動きをみると、1週間のそれがドル・プットへ傾くムードにある(下のチャート、赤矢印を参照)。一方、予想変動率も同じく1週間のそれが今年の夏に発生したリスク回避局面の水準17%台まで上昇している(下のチャート、紫のラインを参照)。短期的にドル円の下落幅が拡大する可能性を意識する動きが見られる。

本日、その下落を促す要因となり得るのが、上で述べた10月の米雇用統計となろう。

ドル円のリスクリバーサルと予想変動率:日足 2024年7月以降

ドル円のリスクリバーサルと予想変動率:日足 2024年7月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

リスク回避の円高

円高の要因として、もうひとつ注目したいのが株安である。昨日のアメリカ株式市場でマイクロソフト(MSFT)は前日比で6%下落した。第4四半期の決算で中華圏でのビジネスが依然として苦境にある状況が浮き彫りとなったアップル(AAPL)の株価も時間外で下落した。

先月29日に2024年7〜9月期決算を発表したアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)も投資家を失望させ、「AI需要の高まり→米半導体企業の成長」という投資家の期待が後退している。31日のS&P500の情報技術セクターは前日比で3.57%下落した。

今日の日本株は、米株安に追随し下落幅が拡大する可能性がある。ゆえに今日の東京時間では、リスク回避の円高進行も警戒しておきたい。

アメリカ株価指数の騰落率:10月31日

アメリカ株価指数の騰落率:10月31日

ブルームバーグのデータで筆者が作成

ドル円のサポートポイント

日足チャートでドル円(USD/JPY)のトレンドを確認すると、IG為替レポートで注目しているフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準153.30レベルが強烈なレジスタンスのラインとして意識されていることが分かる。

RSIはデッドクロスへ転じ、MACDもRSIに追随するムードにある。上で述べた通貨オプション市場の動向も考えるならば、目先のドル円は突発的な下落を警戒したい。

ドル円が下値をトライする局面では10日線の下方ブレイクと21日線のトライを想定しておきたい。21日線は今日現在、150.58レベルで推移している。

ドル円のチャート:日足 2024年7月以降

ドル円のチャート:日足 2024年7月以降

出所:TradingView

ドル円が21日線を目指すサインとして注目したいのが、半値戻しの水準151.48レベルである。この水準は、10月24日のNY時間から翌25日の東京時間にかけて相場をサポートした経緯がある。

ドル円が半値戻しの水準を完全に下方ブレイクする場合は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準150.92レベルの攻防が焦点に浮上しよう。このテクニカルラインの攻防では、151円を維持できるかどうか?を確認したい。

ドル円が61.8%の水準をもあっさりと下方ブレイクすれば、21日線のトライを想定しておきたい。

ドル円のチャート:1時間足 10月17日以降

ドル円のチャート:1時間足 10月17日以降

出所:TradingView

ドル円のレジスタンスポイント

10月の米雇用統計が強い内容となれば、米ドル高の要因となろう。米ドル高はドル円(USD/JPY)を下支えするだろう。

ドル円の反発局面では、153円台への再上昇が最初の焦点となろう。153円台へしっかりと上昇する場合は、レジスタンスラインとして意識されている153.30レベル、そして10月28日の高値153.88レベルのトライが焦点に浮上しよう(いずれも上の日足チャートを参照)。


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