注目のヘルスケア関連銘柄4選
大手製薬会社の肥満・糖尿病の治療薬開発により、競合各社はその躍進に追いつこうと研究を進めています。この記事では注目のヘルスケア関連銘柄4選を紹介します。取り上げる銘柄は、時価総額に基づいて選ばれています。
肥満治療と糖尿病治療で投資が活発化
世界保健機関(WHO)は、世界で10億人以上が肥満を抱えていると推定しています。肥満とそれに伴う2型糖尿病という2つの疫病が世界的に蔓延したことで、肥満治療薬と糖尿病治療薬を開発した大手製薬会社2社は大躍進を遂げました。ノボノルディスク(NVO)の時価総額は、本拠地デンマークのGDPである4099億9000万ドルを超え、コペンハーゲン証券取引所の85%を占めています。
一方、米国発のイーライリリー(LLY)の市場展開はかなり遅かったものの、その業績には目を見張るものがあります。直近の12ヵ月間で、同社の株価は78%上昇しました。わずか数年前まで、同社の時価総額は1000億ドル程度にとどまっていましたが、現在は7000億ドルを超え、世界で最も価値のある製薬会社となっています。
ノボノルディスクの肥満治療薬「オゼンピック」と「ウゴービ」、イーライリリーの「マンジャロ」と「ゼップバウンド」は、「GLP-1アゴニスト療法」と呼ばれるクラスの薬で、インスリンを増加させつつ、血糖値を下げ、食欲を抑制させる効果を示します。
JPモルガンのリサーチでは、糖尿病及び肥満療法における市場が2030年までに1000億ドルを超えると予測されており、米国人口の約9%にあたる3000万人もの患者にGLP-1アゴニスト療法が浸透するとしています。同社はまた、心血管疾患、関節炎、アルコール中毒を含む他の慢性疾患を抱える多くの患者にも、GLP-1アゴニスト療法が使用される可能性を示唆しています。米国では何億人もの患者がその恩恵を受ける一方で、私立病院や医療機器、食品、接客業、飲料業界などには打撃となる恐れがあります。
ノボノルディスクとイーライリリーの独占市場に参入しようと、多くの製薬会社が研究開発に注力しています。
2024年に注目のヘルスケア関連銘柄4選
ここでは、2024年に注目のヘルスケア関連銘柄4選を紹介します。取り上げる銘柄は、時価総額に基づいて選ばれています。また、過去の値動きは将来の株価動向を示すものではありません。
アムジェン(AMGN)
アムジェンは第1四半期に赤字を計上したものの、減量ブームが追い風となり、株価が上昇しました。
同社は、ノボノルディスクの肥満治療薬「ウゴービ」やイーライリリーの「ゼップバウンド」よりも減量効果が長続きすることが期待されるGLP-1減量薬「マリタイド」を開発しています。
5月2日、ロバート・ブラッドウェイ最高経営責任者(CEO)は、初期の試験結果に「非常に勇気づけられた」と述べ、「マリタイドの他社製品にない特徴に自信を持っており、医療における未達成のニーズに応えられると確信している」との見方を示しました。翌3日、同社株は11.8%上昇した一方で、イーライリリーとノボノルディスクはともに下落しました。
しかし、さらなる臨床試験と規制当局の承認が必要なことに加え、マリタイドが患者に届くまでにはまだ数年かかることを忘れてはいけません。一方で、イーライリリーとノボノルディスクは、他の製薬会社と同様に新たな減量治療薬の開発に取り組んでおり、先手を打っています。
同分野での市場規模を考慮すると、アムジェンが新規参入する余地は十分にあります。また、小規模な競合他社とは異なり、同社は迅速に生産を拡大できるだけの製造規模を有しています。
第1四半期の売上高は前年同期比22%増の74億4700万ドルでした。前年同期に28億4000万ドルの黒字だった純利益は、1億1300万ドルの赤字に転落しています。製品別の売上高首位は9億9900万ドルの骨粗鬆症治療薬「イベニティ」でした。
5月9日、株価は前月比16%高の312.86ドルで取引を終了し、時価総額は1678億2800万ドルでした。
アストラゼネカ(AZN)
アストラゼネカは英国で最も価値ある製薬会社です。
第1四半期の売上高は前年同期比19%増の126億8000万ドルを計上しました。売上の80%は、がん領域の51億8000万ドルとバイオ医薬品の51億7800万ドルからきています。製品別での売上高上位には、18億9200万ドルの2型糖尿病治療薬「フォシーガ」、15億9500万ドルの肺がん治療薬「タグリッソ」、11億1300万ドルのがん免疫療法薬「イミフィンジ」などが並びました。
同社は中国のEccogene社と共同で1日1回経口投与の肥満治療薬を開発しています。同薬はGLP-1受容体をターゲットとしていますが、アムジェンの「マリタイド」と同様、市場導入には数年かかる見込みです。また、腸内ホルモンをターゲットとする肥満治療薬でも初期段階の試験を行っています。
同社は第1四半期の純利益として、前年同期比21%増の21億8000万ドルを計上しました。5月9日の終値は12,342ポンド、時価総額は1911億7600万ポンドでした。
イーライリリー・アンド・カンパニー(LLY)
米国発のイーライリリーは業績が一時低迷していたものの、血糖値を調整して食欲を抑制するGLP-1受容体作動薬「チルゼバチド」によって再び経営が勢いづいています。人口の40%が過体重または肥満である米国において、同治療薬は「マンジャロ」という商標名で2型糖尿病治療薬として、また「ゼップバウンド」という商標名で肥満治療薬として認可されています。
この2つの医薬品の売上は軒並み好調で、直近1年間で株価を112%押し上げています。この需要の高まりを受け、ドイツに工場を設立中です。
同社はまた、「レタトルチド」と呼ばれる実験的な食欲抑制剤を研究しており、中期の臨床試験では患者の体重を最大24%減少させることに成功しました。
第1四半期の純利益として前年同期比67%増の22億4000万ドル、売上高として同26%増の87億7000万ドルを計上しました。5月9日、株価は771.55ドルで取引を終え、年初来では32.6%上昇しています。同日の時価総額は7332億8500万ドルでした。
ノボノルディクス(NVO)
ノボノルディスクは、糖尿病と肥満の治療に特化したデンマークの製薬会社であり、「オゼンピック」と「ウゴービ」という2つの肥満治療薬で目覚ましい成功を収めています。「セマグルチド」と呼ばれるこれらの薬剤は、2型糖尿病治療と体重減少の目的で処方され、週1回注射します。「オゼンピック」は2018年2月に、「ウゴービ」は2021年6月に米国で承認・販売開始されました。
2018年に1118億3000万クローネを計上した通期売上高は、2023年には2倍を上回る2323億クローネに増加しました。純利益は2022年比51%増の836億8000万クローネと、こちらも2018年の2倍以上の伸びを示しています。
2024年第1四半期の売上高は前年比22%増の653億4900万クローネ、純利益は28%増の254億700万クローネでした。株価は5月8日に883.20クローネをつけ、過去1年間で56%、5年間では464%上昇しています。同日の時価総額は3兆9350億クローネでした。
同社は、高まる自社医薬品への需要に対応できず、議決権株式の77%を保有する親会社のノボ・ホールディングスに資金援助を要請しました。ノボ・ホールディングスは2024年2月、ノボノルディスクからの配当金を充当することで、医薬品受託製造会社のキャタレント(CTLT)を約165億ドルで買収すると発表しました。
米連邦取引委員会は、この買収が米国法の下で非競争的となりうるかどうかを審査しています。キャタレントは5月3日、ノボ・ホールディングスとの合併を2024年末に完了させる予定であると証券取引委員会に報告しました。
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