決算発表時期とは?決算発表と株取引の方法
株式を上場している企業は決算発表シーズンと呼ばれる期間に、四半期報告書を発表します。決算内容次第ではその企業やマーケット全体のボラティリティを高めることがあります。 ここでは決算発表シーズンとそれに絡んだ取引について解説します。
決算発表シーズンとは?
取引所に上場している企業が決算報告書を発表する期間のことです。決算報告書には純利益や1株当たり利益(EPS)、といった投資家にとって重要な情報が記載されています。
米国では決算報告書の発表は必須です。一方、英国では必須ではありませんが、ほとんどの企業が決算発表シーズンに決算報告書を発表しています。日本では、事業年度を3カ月以上に設定している企業は、その事業年度の四半期(3カ月)ごとにも報告書を提出することが金融商品取引法第24条によって義務付けられており、提出後は3年間開示されることとなっています。
アーニングスコールとは?
アーニングスコールとは、決算内容について企業の経営陣、アナリスト、投資家そしてメディアの間で話し合う集まりのことを言います。この場では、報告書の主な内容について質疑応答の機会が提供されます。
しかし、すべての企業がアーニングスコールを開催するわけではありません。また、決算期間中に開催しない企業もあります。
決算発表シーズンの時期は?
多くの企業は3月、6月、9月、12月毎に決算の締め日を迎えます。よって、決算発表シーズンは通常、4月、7月、10月、1月に始まります。
決算発表のスケジュールについては、経済カレンダーをご覧ください。
すべての上場企業が決算発表シーズン中に決算報告書を発表するわけではありません。また、四半期という区切りは企業によって異なります。
取引への影響や公平性を鑑み、通常、決算発表は取引所取引の時間外に行われます。つまり、報告書が発表されるのは午前中のマーケット開始前の時間帯、もしくは午後のマーケット終了後の時間帯ということになります。これにより投資家は決算内容を読み解き、どのように対応するかを判断するために十分な時間を確保できます。
尚、お客様が決算の内容を参考に柔軟な取引ができるよう、決算発表シーズン中、IG証券では米国株式の70を超える主要銘柄について米国株時間外取引のサービスを提供しています。
なぜ決算発表シーズンが重要なのか?
決算発表シーズン中、投資家は企業の業績や今後の見通しついての情報を得ることができます。その情報は取引する際、重要な判断材料となります。
決算発表は市場のセンチメントに影響を与えます。このため決算シーズン中は、株価のボラティリティが高まる可能性があります。アーニングスコールの場で、最高経営責任者(CEO)から詳細な情報が提供されると、ボラティリティはさらに拡大することがあります。
ボラティリティを活用して、恐怖指数(VIX指数)に投資することも可能です。
決算発表を株取引に活用する方法
四半期毎の決算報告書が市場のトレンドに影響を与えることがあります。このため投資の初心者であれ、プロの投資家であれ、すべての投資家はその情報を正しく把握し利用する方法を学ぶべきです。
決算発表シーズンに考慮すべきポイントを次の5つにまとめました。
注目に値する企業を選択する
決算発表シーズン中、上場するすべての企業をカバーすることは不可能です。まずは、投資する企業を絞り込むことが重要となります。絞り込む基準は-成長の期待される企業、配当の高い企業、すでに保有している株の企業-など色々あります。
投資する企業の選択が終わったら、決算発表の日程を調べましょう。発表日、予定時刻(常に正確な時刻とは限りません)、上場している証券取引所の詳細を確認できる決算発表カレンダーを利用すると便利です。
企業の決算発表日についてはIG証券の経済カレンダーをご覧ください。
選択した企業が属するセクター内には、株式市場に影響を与える主要な企業が存在します。取引する予定がなくても、このような企業の決算発表日をリストアップしてください。これら主要企業の株式は指標銘柄と呼ばれ、他社の株価や業界全体に大きな影響を及ぼす可能性があるからです。
徹底したリサーチと分析
投資する企業を選択した後、今度は収益の予想を確認することが重要です。マーケットの焦点は過去の決算内容そのものではなく、見通しに集中することがあるからです。
マーケットアナリストは企業の報告書を読み、経営陣と面会し、その企業の収益が増加するか減少するかを判断します。これらの収益予想は正式な発表日が近づくにつれ、増益または減益に修正される場合があります。実際の業績がアナリスト予想を上回れば、マーケットは上昇し、予想を下回ればマーケットは下落する傾向があります。
しかし、時には全く逆の方向に動く-アナリスト予想を下回った場合に上昇する一方、予想を上回った場合には下落にする時があります。決算内容だけでなく、マーケットの反応にも注意を払う必要があります。
発表に先立って価格が上昇した場合は、投資家が好調な報告書を期待しているシグナルとなります。つまり期待先行で株価が上昇しているわけです。このため報告書が市場予想と一致すると、先行して上昇していた株式には売り圧力が高まることがあります。一部の投資家が利益を確定するためにポジションを決済するからです。
一方、冴えない決算が予想されている株が、発表前に著しく下落した場合、発表後に持ち直すことがあります。株を空売り(売りポジションを保有)した投資家が、利益確定のため株を買戻すからです。
決算シーズン中に取引をする際は、過去の予想値と実際の収益を確認することも重要です。例えば、過去の四半期毎EPSを確認することで、事前に大まかな予想を立てることができます。発表後に株価が大幅に変動するのであれば、市場のセンチメントが発表の影響を大きく受けていることを示しています。一方、株価が決算内容にほとんど反応しない場合は、他の要因の影響が大きいと考えられます。
例えば、Apple社の株式は決算発表の内容に反応するパターンが見られます。2017年から2018年のEPSデータを見てみると、ほとんどの四半期において実際の収益がアナリスト予想とほぼ一致していることが分かります。
例外として2017年の第2四半期(Q2)が挙げられます。この四半期は予想EPSが$2.02でした。しかし、実際に発表されたEPSは予想よりも3.96%高い$2.10でした。1発表の3日後、Apple社の株価は史上最高値である$156.65まで上昇しました。
四半期 | 予想EPS | 実績EPS |
2017年Q1 | $3.21 | $3.36 |
2017年Q2 | $2.02 | $2.10 |
2017年Q3 | $1.57 | $1.67 |
2017年Q4 | $1.87 | $2.08 |
2018年Q1 | $3.86 | $3.89 |
2018年Q2 | $2.67 | $2.73 |
2018年Q3 | $2.18 | $2.34 |
2018年Q4 | $2.78 | $2.95 |
Apple社(AAPL)2017年~2018年 予想EPSと実績EPS1
決算発表シーズンに各株価がどのように反応するかを予測することは困難です。しかし、ボラティリティが拡大しやすい状況にあります。決算の発表日やその内容を常にチェックしている投資家ならば、ボラティリティを上手く利用しトレーディングで成功する可能性があります。
ブレない投資戦略
投資する企業の選択に加え、決算発表シーズンに対応した投資戦略を練ることも重要です。この投資戦略とは、ポジションの保有と清算のタイミング、目標とする利益の額(率)、取引に費やす時間およびリスク管理のことです。
企業の業績は必ずしもアナリストの予想どおりにはなりません。また、決算発表シーズン中、市場予想以下もしくは以上となる「決算サプライズ」に直面する場面も多々あります。
何が起ころうとも、ブレない投資戦略を練りそれを実行することが重要です。自分の投資戦略に忠実であれば、投資活動から感情的な影響を排除できます。そして論理的思考に基づいた判断が可能になります。厳格なルールを作りそれを忠実に守る-こうすることでどのような決算結果にも備えることができるのです。
決算発表シーズンに対する備えとして、リスク管理は非常に重要な要素です。リスク管理とは、保有するポジションに対してストップロス注文や指値注文を付加し予期せぬ事態に備えることです。ストップロス(逆指値)注文は、予想とは逆の方向へマーケットが振れた時、損失を限定する注文方法です。一方、指値注文は、予想通りマーケットが動いた場合、一定の水準で利益を確定する際に用いる注文方法です。
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ポジションを保有しマーケットを注視する
決算発表シーズンにはマーケットのボラティリティが拡大することがあります。このため、シーズン中は売買するチャンスに恵まれます。ボラティリティの拡大は投資家の頭を悩ませる要因でもありますが、CFDを含む金融派生商品(デリバティブ)を使用するトレーダーにとっては、多くの取引チャンスに恵まれることでしょう。マーケットの上昇と下落の双方を利用した取引ができるからです。
事前に決算予想や決算期の動きをリサーチしておけば、発表後にその銘柄がどちらの方向に動くか、という予測を立てることができます。ある企業の株価が上昇すると予想する場合は、株式について「買い」または「ロング」ポジションを取ります。一方、株価が下落すると予想する場合は「売り」または「ショート」ポジションを取ります。
ポジションを保有した後、他の企業の決算情報や株価指数、アーニングスコールの結果など、マーケットを変動させる情報に目を配ることが重要です。
当社のアナリストによる最新の分析情報は、ニュースおよび取引アイデアセクションからご確認いただけます。
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毎回の決算発表シーズンから学ぶ
決算シーズン中に保有したポジションを決済した後、その結果を評価することが重要です。取引がどのような結果に終わったとしても、自分が行った取引の分析は毎回するべきです。
あてずっぽうな取引では、投資の世界で成功をおさめることはできません。決算シーズン中の取引について、最善の方法を見つけるには時間がかかります。このため、次の決算発表シーズンに向けてより良い準備を整えるには、過去の取引の分析とそこから得られる教訓を活かすことが重要となります。
決算発表シーズンのまとめ
決算発表シーズンに取引する場合は、次のキーポイントを覚えておいてください。
- 決算発表シーズンは上場企業が四半期の決算報告書を発表する期間である
- 決算発表シーズンはマーケットが新情報に反応するため、ボラティリティが高まりやすい
- 決算発表シーズンは四半期の最終月の翌月の4月、7月、10月、1月にある
- 決算発表カレンダーを確認すれば決算発表の日程が確認できる
- 決算発表はマーケットの時間外に行われる
- 決算発表シーズンは投資する銘柄を絞る
- 過去の業績やアナリストの予想を確認する
- 決算発表シーズン用のブレない投資戦略を練る
- 変動の激しいマーケットでは株式CFDで取引チャンスを活かそう
- 過去の取引を毎回分析し次の決算シーズンに向けて準備を整える
最後に、決算発表シーズンに取引するかどうかの判断は、各投資家の目標やリスクを許容できる資産状況によります。ボラティリティが拡大する状況ではリスクが高いと判断される場合は、「様子を見る」という手も投資戦略のひとつです。
出典
1 Macrotrends、2018およびReuters consensus estimates、2017
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