キャリートレードの取引戦略をわかりやすく解説
外国為替市場では、「キャリートレード」という取引手法がよく使われます。この記事では、キャリートレードとは何か?どんな取引手法なのか?といったことを簡単に解説いたします。
キャリートレードとは
FXトレーダーがキャリートレードを行う際、まずは2つの通貨の金利差をチェックします。この金利差が利益となるからです。
キャリートレードには、「ポジティブキャリー」と「ネガティブキャリー」があります。一般的に用いられている取引手法はポジティブキャリーの方です。ポジティブキャリーでは、金利の低い通貨を借り、調達した資金で金利の高い通貨を買います。借りる通貨のことを『資金調達通貨』といいます。ポジティブキャリーで金利の高い通貨を保有し続ければ、金利差分の収益を得ることができます。なおFX取引では、金利差のことを「スワップ」と呼んでいます。
一方、金利の高い通貨を借りて、金利の低い通貨を買うネガティブキャリーという取引手法があります。ネガティブキャリーは、金利の低い通貨の金利水準が、近い将来、金利の高い通貨の水準を上回ることを予想する取引となります。しかし、ネガティブキャリーでは金利の高い通貨が資金調達通貨になることから、取引コストがかかります。また、予想通りに金利の水準が逆転しないリスクもあるため、ネガティブキャリーが行われるケースはまれです。
外国為替取引でキャリートレードが可能な理由
外国為替取引でキャリートレードが可能な理由は、ある通貨を買えば、同時にある通貨を売るという為替取引の特性にあります。例えば、あるトレーダーが「ドル円は将来上昇する」と予想する場合、米ドルを買うと同時に日本円を売ることになります。このように為替取引の世界では、通貨を “ペア” で取引します。このため、通貨ごとで異なる金利に注目して利益を獲得しようとするキャリートレードが可能なのです。
FX取引をする際、以下の基本的なルールを覚えておきましょう
・ペアの左側にある通貨:基軸通貨(ベースカレンシー)
・ペアの右側にある通貨:決済通貨(クォートカレンシー)
例えば、ドル円(USD/JPY)だと、ベースカレンシーは米ドル(USD)、クォートカレンシーは日本円(JPY)ということになります。
過去にキャリートレードがよく行われていた通貨ペア
2000年代前半は、日銀が金融緩和政策を導入する一方、アメリカを含めた各国の中央銀行は利上げ政策を実行していました。このため日本円を借りて高金利通貨を買うキャリートレードが活発に行われていました。
特にAUD/JPYとNZD/JPYは人気の通貨ペアでした。多くのトレーダーは、日本円(JPY)を資金調達通貨として利用し、当時は高金利通貨の代名詞だった豪ドル(AUD)やNZドル(NZD)を買う取引を行っていました。上で述べたポジティブキャリーでスワップ(金利差)の収益を得るためです。
キャリートレードの戦略
ここからは、キャリートレード戦略について解説します。
ポジティブキャリーの戦略
ポジティブキャリーは上でも述べたとおり、金利の低い通貨を借りて金利の高い通貨を買う取引のことです。上の例で用いたAUD/JPYの通貨ペアで具体的な戦略について解説します。なお、ここでは金利の水準は豪ドルが5%、日本円が0.5%とします。
ポジティブキャリーを考えているFXトレーダーは、低金利の日本円を借りて、高金利のオーストラリアドルを買います。ポジティブキャリーで豪ドル円(AUD/JPY)を取引し、翌日以降までポジションを保有すると、このFXトレーダーは4.5%のスワップ(金利差の収益)を受け取ることができます。
しかし、豪ドルや日本円の金利が永久に5%や0.5%で固定されるわけではありません。オーストラリアと日本の金融政策の動向次第で、受け取るスワップの額が増加したり減少したりします。よって、ポジティブキャリーでFX取引をする場合は、金利の水準と金融政策のニュースを常にチェックすることが重要となります。
ネガティブキャリーの戦略
ネガティブキャリーは金利の高い通貨を借りて、金利の低い通貨を買う取引です。この取引きは、金利の水準が将来逆転することを予想する戦略となります。
例えば、英ポンド(GBP)の金利が0.8%、米ドル(USD)の金利が1.3%とします。このケースでネガティブキャリーを仕掛ける場合、GBP/USD(英ポンド/米ドル)の通貨ペアで英ポンド買い/米ドル売りのポジションを保有します。取引の当初は、0.5%のマイナスキャリーが発生します。しかし、予想どおりに英ポンドの金利の水準が米ドルの水準を上回る場合、その金利差分の収益を得ることができます。
しかし、ネガティブキャリーはリスクの大きい戦略です。高金利通貨が資金調達通貨となるためコストがかさみます。また、予想に反してイングランド銀行(BoE)が利上げの実施を見送る場合、米連邦準備制度理事会(FRB)が設定した金利の水準を逆転することができません。これらのリスク要因から、ネガティブキャリーはめったに行われません。
IG証券でキャリートレードをするには?
- IG証券で取引口座を開設します
- 取引に必要な資金を取引口座に入金します
- 各通貨の金利の水準を確認します
- キャリートレードに適した通貨ペアを選択します
- 実際にキャリートレードを行います
- リスク管理のための対策をします
例:ノースリッページ注文やストップ注文の付加 - ポジションを保有しスワップを受け取ります
- あらかじめ決めた水準でポジションを決済し損益を確定します
キャリートレードに最適な通貨ペアとは
ポジティブキャリーでは、なるべく金利差の大きい通貨ペアを選択すると良いでしょう。金利差が大きいほど、受け取るスワップの額も大きくなります。しかし、高金利通貨は変動リスクが高く、為替差損の額がスワップ収益の額を上回るリスクがある点には注意が必要です。
一方、ネガティブキャリーでは、なるべく金利差の小さい通貨ペアを選択すると良いでしょう。金利差が小さいということは、初期の取引から金利の水準が逆転するまでの期間に発生するコストが小さくなるからです。
キャリートレードのメリットとデメリット
キャリートレードのメリット
キャリートレードのメリットは、高金利通貨を保有し続けるだけで金利差分の収益が毎日発生することです。
キャリートレードのデメリット
キャリートレードのデメリットは、高金利通貨の変動リスクにあります。金利が高いということは、通貨の信用力が低いことを意味します。このため高金利通貨の変動幅は、米ドルや日本円と比較して大きくなる傾向があります。何らかのリスクイベントが金融市場で発生し高金利通貨が急落すると、スワップで得る収益よりも為替差損の方が大きくなるリスクがあります。
為替の変動リスクを回避するために、IG証券が提供している 「ノースリッページ注文」を活用することをおすすめします。この注文は、指定したレートで100%注文が成立するため、通常のストップ注文(損切りの注文)よりも、損失額を限定することができます。
キャリートレードのまとめ
- キャリートレードには「ポジティブキャリー」と「ネガティブキャリー」の2つがあります
- キャリートレードとは一般的に、低い金利の通貨を借りて高い金利の通貨を買う「ポジティブキャリー」のことをいいます
- 低金利通貨の金利水準が、高金利の通貨の水準を上回ることを予想して行う取引きを「ネガティブキャリー」といいます
- 「ポジティブキャリー」と「ネガティブキャリー」は、いずれも金利差で収益を得る取引です
- 金利の動向は為替市場のトレンドを大きく左右します。このため為替取引(FX取引)をする場合は、各国の金融政策の方針と金利の水準を常にチェックする必要があります
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
IG証券のFXトレード
- 英国No.1 FXプロバイダー*
- 約100種類の通貨ペアをご用意
* 英国内でのCFDまたはレバレッジ・デリバティブ取引(英国でのみ提供)での取引実績において、FX各社をメイン口座、セカンダリー口座として使用している顧客の割合でIGがトップ(Investment Trends UKレバレッジ取引レポート 2022年6月)