米国株の強気相場に潜む下落要因、試練の米PCE、S&P500の見通し
米国株は強気相場にある。ダウ平均に追随し、S&P500も最高値の更新が視野に入る。しかし強気相場の水面下には下落要因が潜んでいる。PCE価格指数でインフレの粘着性が示される場合は、その要因が意識される可能性がある。今週は突然の反落を警戒したい。
株高のすそ野が広がり強気相場を維持する米国株
米国株が強気相場を維持している。11日~15日の週は、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言を受け利下げパスの不透明感が高まり米株安となった。しかし、先週は一転して主要な株価指数が上昇した。
特に中小型株の指数ラッセル2000の上昇率は4.46%と、アメリカ大統領選挙が行われた週の8.57%高の時と同じく、他の株価指数の上昇率を圧倒した。ラッセル2000の上昇は、米株高のすそ野が広がる状況を示している。
アメリカ株価指数の週間騰落率:18日~22日の週
ブルームバーグのデータで筆者が作成
水面下に潜むS&P500の下落要因
アメリカ株式市場の時価総額のうち約80%をカバーしているS&P500は、今月11日に付けた最高値6001.35(終値ベース)を視野に続伸している。しかし、強気相場の水面下にはS&P500の下落要因が潜んでいる。
・アメリカのトランプ次期大統領は、新たな財務長官にヘッジファンド経営者のスコット・ベッセント氏を指名すると述べた。週明けの米債市場では利回りが低下した。しかし、米金利の方向性は経済と米連邦準備制度理事会(FRB)の政策に左右されよう
・パウエルFRB議長は14日の講演で経済の強さに言及し、利下げを慎重に進めていく姿勢を強調した。CMEのFEDウォッチツールでは、12月の利下げ確率が五分五分の状況にある
・一方、短期金融市場ではその確率が30%台まで低下している。そして来年の緩和ペースも緩慢になる思惑が強まっている。下で述べるPCE価格指数や来週以降の重要指標で12月以降の利下げ期待がさらに後退すれば、米国株の調整売りを警戒したい
米政策金利の予想推移
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 25日午前8時時点
・経済の強さとそれに伴う利下げ期待の後退は米長期金利の高止まり、または上昇の要因となろう。同時に、S&P500の割高感を市場参加者に意識させるだろう。この点をS&P500の株式益回り、米10年債利回りそしてイールドスプレッド(株式益回りー長期金利)で確認すると、米金利に対してS&P500が割高にある状況を示している。米金利がさらに上昇すれば、S&P500の割高感に対する市場の警戒心も高まろう
イールドスプレッド:週足 21年以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
試練のPCE価格指数、内容次第ではS&P500の売り要因に
今週、米長期金利の変動要因として注目したいのが、27日の10月個人消費支出価格指数(PCEデフレーター、以下PCE価格指数)である。焦点を以下にまとめた。
・今週28日は感謝祭で米国市場は休場、翌29日は短縮取引となる。今週の米国株は27日までの動向を注視したい
・27日に10月の米PCE価格指数が発表される。トレンドを示す前年同月比のインフレ率が、9月から伸びる見通しにある
・アメリカの大統領選挙と議会選挙で「トリプルレッド」が実現した。トランプ政策によるインフレ再燃の可能性が早くも意識されるなか、米FRBが注視するPCE価格指数でインフレの粘着性が確認される場合は、12月の利下げ期待だけでなく、来年の利下げパスの不透明感も高める可能性がある
・利下げパスの不透明感は、米長期金利の高止まり要因となろう。同時にS&P500の割高感を意識させる要因にもなろう
アメリカ個人消費支出(PCE)価格指数:23年10月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:10月の市場予想
S&P500 今週注目のテクニカルライン
レジスタンスライン
S&P500は現在、今月11日に付けた最高値6001.35(終値ベース)を視野に続伸している。短期の21日線、中期の50日線、そして長期の200日線が上から順に並び、かつ上昇基調の「パーフェクトオーダー」にある。PCE価格指数や他の経済指標を無難に消化する場合は、以下で取り上げるレジスタンスラインの攻防に注目したい。
・5,978ポイント
この水準は、直近高安のフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準にあたる(1時間足チャートを参照)
・6001.35ポイント(最高値)
76.4%水準の突破は、今月11日につけた過去最高値6001.35ポイントをトライするサインと捉えたい
・6,056ポイント
S&P500が過去最高値を更新する場合は、フィボナッチ・エクステンション76.4%の水準、6,056ポイントのトライが視野に入ろう(日足チャートを参照)
・6,100ポイント
エクステンション76.4%をも突破すれば、6,100ポイント台の上昇を想定しておきたい(日足チャートを参照)
サポートライン
一方、PCE価格指数で米FRBの利下げ期待がさらに後退する場合は、米長期金利の上昇要因となろう。米金利の上昇は、S&P500の割高感を市場参加者に意識させる要因になり得る。S&P500の反落局面では、以下のサポートラインの攻防に注目したい。
・5,940ポイント
この水準はサポートラインへ転換する可能性がある
・5,920ポイント
5,940と同じくこの水準もサポートラインへ転換する可能性がある。5,940とサポートゾーンを形成し相場の下落を止める場合は、地合いの強さを市場参加者に印象付けよう。一方、5,920の下方ブレイクは21日線をトライするサインと捉えたい
・5,883ポイント(21日線、22日時点)
9月以降、21日線がサポートラインとして意識されている。直近では、15日から20日にかけて相場を下支えした。すぐ下の水準5,870がサポートラインへ転換していることも考えるならば、5,870-80をサポートゾーンと想定しておきたい
S&P500のチャート
S&P500のチャート:日足 24年7月以降
出所:TradingView
S&P500のチャート:15分足 11月6日以降
出所:TradingView
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