ダウ平均が最高値更新、さらなる高みを目指すか、来週の経済指標とバリュー株に注目
7月から8月にかけての米国株は、上下に大きく振れる荒れた展開となった。この間のバリュー株とグロース株の動向を確認すると、バリュー株優勢の展開となった。ダウ平均は29日、2日ぶりに最高値を更新した。来週の重要指標で景気懸念がさらに後退すれば、ダウ平均はさらに高みを目指すことが予想される。
記事のポイント
・7~8月の米国株は、上下に大きく振れる荒れた展開となった
・この間の米国株は、バリュー株がより選好された
・市場参加者の関心は、来週の重要指標にシフトしている
・良好な経済指標は、ダウ平均をさらなる高みへ押し上げるだろう
バリュー株に注目
7月から8月にかけての米国株は、上下に大きく振れる荒れた展開となった。この間のバリュー株とグロース株の動向を確認すると、注目すべき点が2つある。
まずは、7月中旬から8月上旬の下落局面の動きである。グロース株の下落幅が拡大する一方、バリュー株のそれは限定的だった。もうひとつは、7月から8月にかけて、バリュー株優勢で推移していることである。8月の株価反発の局面では、グロース株が優勢の状況が見られた。しかし、それは一過性の動きに終わり、直近は再びバリュー株優勢の状況へ転じている。
株安の局面ではバリュー株の下落幅が限定的で、株高の局面ではグロース株より優勢にある状況は、割高感のあるグロース株(特に半導体株やマグニフィセントセブン)から、割安感があり、かつ業績が好調なバリュー株へ資金がシフトしていることを示唆している。
バリュー株とグロース株の動向:日足 今年4月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
ダウ平均はさらなる高みを目指すムード
こちらのIG米国レポートでは、ナスダック100(NDX)の短期的な見通しについて分析した。
ナスダック100はハイテク株の比率が高い。それゆえ、エヌビディア(NVDA)などの半導体株やマグニフィセントセブンに代表される主力株の影響を受けやすい。事実、昨日のパフォーマンスを確認すると、ナスダック100は下落で終えた(下のパフォーマンスチャートを参照)。
一方、構成銘柄にバリュー株が多く含まれるダウ平均(DJI)は前日比243ドル高(0.59%高)の41,335ドルと、2日ぶりに最高値を更新した。
ブルームバーグのデータによれば、ナスダック100のPERは現在31.1倍前後で推移している。一方、ダウ平均のPERは21倍である。上で述べたバリュー株優勢の状況も考えるならば、下で述べる来週の重要指標でアメリカ経済の底堅さが確認される場合は、グロース株に比べて割安感のある優良なバリュー株の買いが、ダウ平均をさらなる高みへと押し上げる展開が予想される。
アメリカ株価指数のパフォーマンス:8月29日
ブルームバーグのデータで筆者が作成
焦点は早くも来週の経済指標に
ISM製造業と非製造業の景況指数
アメリカの株式市場では現在、景気がメインテーマに浮上している。そのきっかけとなったのが、ISM製造業と非製造業の景況指数、そして雇用統計だった。来週、これら経済指標の最新データ(8月分)が発表される。
アメリカでは労働者の約8割がサービス業に従事している。ゆえにISM指数では、9月5日の非製造業景況指数に注目したい。8月は51.0と、7月の51.4から若干ながら縮小する見通しにある。予想以上にサービス企業の活動が縮小する場合、最高値圏にあるダウ平均の調整売り圧力を強めるだろう。一方、予想以上ならば米株高の要因となろう。この点は、9月3日の製造業景況感指数も同じである。
米国 ISM製造業・非製造業景況指数の動向:月次 23年8月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
雇用統計では失業率が焦点に
9月6日に8月の雇用統計が発表される。注目は失業率である。現時点では、7月の4.3%から4.2%への低下が見込まれている。予想どおりに失業率が低下する場合は、景気懸念の後退要因となろう。非農業部門雇用者数変化も労働市場の堅調さを示す場合は、米株高の展開が予想される。
一方、失業率が予想外に上昇する場合は景気の先行き懸念を市場参加者に想起させるだろう。ダウ平均(DJI)は調整売りの展開を想定しておきたい。。
ISM指数と雇用統計がともに景気懸念を高める内容となれば、ダウ平均は下で述べる節目の4万ドルの維持が焦点となろう。
米国の雇用統計 各項目の動向:月次 23年8月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
ダウ平均の見通しとチャート分析
注目の上値水準
日足チャートでダウ平均(DJI)のトレンドを確認すると、8月5日に底打ちして以降、強気相場にあることが分かる。この点はRSIとMACDも示唆している。
この状況で、来週の経済指標(ISM指数と雇用統計)がアメリカ経済の強さを示す場合は、バリュー株を中心に米株高を予想する。バリュー株の上昇は、ダウ平均の強気相場に勢いを与えるだろう。
ダウ平均の上昇局面では、29日の取引時間中に付けた最高値41,577 ドルの突破が最初の焦点となろう。この水準を完全にブレイクアウトすれば、フィボナッチ・エクステンション100%の水準41,874ドルを視野に上昇幅の拡大を想定しておきたい(下の日足チャート、赤ラインを参照)。
4万ドルの維持が焦点に
ダウ平均(DJI)は最高値圏の攻防にある。ゆえに、市場参加者に景気懸念を想起させる経済指標、または9月の連邦公開市場委員会(FOMC)での大幅利下げの思惑を後退させる発言が連邦準備制度理事会(FRB)の高官から聞かれる場合は、調整の反落を想定しておきたい。
ダウ平均の反落局面では、4万ドルの維持が焦点となろう。この節目の水準を目指すシグナルとして、10日線(29日時点41,008レベル)と21日線(29日時点40,251レベル)の攻防に注目したい。
ダウ平均:日足 今年5月以降
出所:TradingView
上で取り上げtら2つの移動平均線以外で注目したいのが、直近高安のフィボナッチ・リトレースメントの各水準である。23.6%水準(40,851)と38.2%水準(40,401)は相場をサポートした経緯がある(下の1時間足チャート、黒矢印を参照)。これら2つのサポートラインを挟んで、10日線と21日線が展開している状況を考えるならば、40,250-41,000をサポートゾーンと想定しておきたい。
なお、4万ドルのすぐ上の水準は半値戻し40,038レベルであり、サポートラインへ転換する可能性がある。テクニカルの観点からも、4万ドルを目先の下限と想定しておきたい。
1時間足チャートのストキャスティクスは買われ過ぎの水準でデッドクロスへ転じている。RSIもでデッドクロスへ転じるムードにある。これらオシレーター指標で相場のモメンタムを追い、売られ過ぎの水準でゴールデンクロスが確認される場合は、相場の反発を意識したい。上で述べたサポート水準、特に10日線や21日線をトライする局面でゴールデンクロスが確認される場合は、ダウ平均の反発を強く意識したい。
ダウ平均:1時間足 今年8月以降
出所:TradingView
ダウ平均、注目のチャート水準
上値の水準(レジスタンス)
・41,874:エクステンション100%
・41,577:8月29日高値
下値の水準(サポート)
・41,008:10日線(8/29)
・40,851:リトレースメント23.6%
・40,401:リトレースメント38.2%
・40,251:50日線(8/29)
・40,038:半値戻し
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