軟調地合いのアメリカ半導体株、PCE価格指数に身構える市場、ナスダックの見通し
今日は5月の米個人消費支出(PCE)価格指数が発表される。市場はアメリカのインフレが鈍化の傾向をたどると予想している。ゆえにリスク要因は、予想外にインフレの粘着性が示される場合である。節目の20,000ポイントを視野に反発しているナスダック100。目先注目のチャート水準は?
この記事のポイント
・今日のアメリカ株は、PCE価格指数で上下に振れる展開が予想される
・下落ムードのマイクロン、上値の重いエヌビディア、調整ムードのSOX指数
・ナスダック100の上昇局面では、節目の水準の攻防に注目したい
・ナスダック100の反落局面では、半値戻しの維持が焦点となろう
PCE価格指数に身構える市場
アメリカの主要な株価指数は25日以降、反発基調にある。この動きがさらに加速するかどうか?今日は、5月の米個人消費支出(PCE)価格指数(PCEデフレーター)がその鍵を握るだろう。
市場予想を確認すると、前月比と前年同月比でともにインフレが鈍化する見通しとなっている(下のチャートを参照)。
アメリカ 個人消費支出(PCE)価格指数の動向:23年5月以降
昨日発表された5月の耐久財受注(除輸送用機器)は前月比で0.1%減と市場予想の0.2%を下回った。また、失業保険の継続受給者数は183.9万人と2021年末以来の高水準に増加し、失業者が職を見つけるまでの期間が長期化している傾向が示された。
さえない経済指標は米金利の低下要因となった。そして短期金融市場では、9月の利下げ確率が50%台から60%台へ再び上昇している。
この状況で今晩の5月PCE価格指数が市場の予想通りにインフレの鈍化が続いてることを示せば、9月の利下げが意識されることで、アメリカの株式市場をサポートしよう。
問題は、PCE価格指数がインフレの粘着性を示唆する場合である。市場の予想がインフレの鈍化に傾いているだけに、このケースでは「9月利下げ期待の後退→米長期金利の反発」を受け、アメリカの株式市場はリスク回避相場となることが予想される。
エヌビディア、マイクロン、SOX指数はいずれも不穏なムードに
特に注目したいのが、ハイテク株比率の高いナスダック100(NDX)の反応である。
現在、アメリカの株式市場では半導体株が不穏なムードにある。個別では、26日の決算で第4四半期の売上高見通しが76億ドル(プラスマイナス2億ドル)と、投資家の期待を下回ったマイクロン・テクノロジー(MU)の株価が、6月18日の高値153.34(終値ベース)から13%超下落し、調整局面入りを警戒する状況にある。
一方、米株高のけん引役として期待されるエヌビディア(NVDA)の株価は、下落こそ一服しているが、10日線で反発が止められ上値が重い。6月18日の最高値135.58(終値ベース)から10%超下落した状況も考えるならば、調整相場を警戒する状況にある。
そしてこれら主力の半導体株の下落を受け、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)でも反落のムードが高まりつつある。
アメリカ 主力半導体株の動向:日足 24年4月以降
ナスダック100を支える主力株とセクター
半導体株とは対照的に、ナスダック100(NDX)は反発の基調にある(上のチャートを参照)。この地合いを支えているのが、コミュニケーション・サービスのセクターである。
この点を今週のS&P500種株価指数(SPX)のセクター別パフォーマンスで確認すると、コミュニケーション・サービスのセクターが最も上昇していることが分かる(下のチャートを参照)。
この上昇の主因は、ナスダック100の構成銘柄として採用されているアルファベット(GOOGL)やアマゾン(AMZN)、そしてネットフリックス(NFLX)など主力株の買いにある。つまり今のナスダック100は、半導体株以外の主力株に支えられいる。一方、半導体株の下落を受け、情報技術セクターは軟調地合いとなっている(下のチャートを参照)。
情報技術と同じくコミュニケーション・サービスのセクターも米長期金利の影響を受けやすい。ゆえに、今晩の5月PCE価格指数(PCEデフレーター)でインフレの鈍化があらためて確認される場合は、情報技術(特に半導体株)と、コミュニケーション・サービスのセクターが軸となり、ナスダック100の反発相場を支える展開が予想される。
逆に、今晩のPCEデフレーターがインフレの粘着性を示す場合は、ナスダック100の反落または下落幅の拡大を警戒したい。
S&P500種株価指数 セクタ別パフォーマンス:今週の動向
ナスダック100、今日の見通し
20,000の攻防と2つの焦点
ナスダック100(NDX)のトレンドを確認すると、現在は10日線(27日時点で19,721レベル)でサポートされている(日足チャートを参照)。今晩の5月PCE価格指数でインフレの鈍化傾向が確認される場合は、反発相場のさらなる進行を想定しておきたい。
このケースでは、節目の20,000ポイントの攻防が焦点となろう。レジスタンスの水準として意識されている19,800レベルの完全突破は、この水準をトライするシグナルとなろう(1時間足チャート、赤矢印を参照)。
ナスダック100が節目の20,000ポイントを完全にブレイクアウトするかどうか?は重要な焦点である。しかしより注目したいのが、20,000ポイント台へ上昇した後、NY市場の終了時点でこの水準を維持できるかどうか?である。
20,000前後の「サポート転換」が確認される場合は、来週以降、フィボナッチ・リトレースメント161.8%の水準20,558レベルを視野に上昇幅の拡大を想定しておきたい。
反落の局面では半値戻しの維持が焦点に
日足のMACDは上昇から低下のトレンドへ転じつつあり、デッドクロスを形成するムードにある(日足チャート、赤矢印を参照)。
地合いの強さが後退しつつあるなか、今晩の5月PCE価格指数でインフレの粘着性が確認される場合は、「9月利下げ期待の後退→米金利の反発→米株安」を予想する。ハイテク株比率の高いナスダック100(NDX)は、他の株価指数と比べて下落幅が拡大する可能性があろう。
本日、ナスダック100が下値をトライする場合は、25日に調整の反落を止めた半値戻しの水準19,473レベルの維持が焦点となろう(1時間足チャートを参照)。
この水準をトライするシグナルとして、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準19,592レベルの攻防に注目したい。
「サポート転換」のムードが漂う19,660レベルの下方ブレイクは、19,592レベルをトライするシグナルとなろう。
5月PCE価格指数の後、時間足のストキャスティクスとRSIを軸に相場の過熱感を確認し、反発と反落のタイミングを見極めたい。
半値戻しをブレイクする場合は?
PCE価格指数をきっかけに、ナスダック100(NDX)が半値戻しの水準19,473レベルを完全に下方ブレイクする場合は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準19,353レベルを視野に下落幅の拡大を警戒したい(1時間足チャートを参照)。
この水準は、6月12日の市場で「窓開け」スタートの基点となった重要なチャートポイントである。
ナスダック100のチャート:日足 今年4月以降
TradingView提供のチャートで作成
ナスダック100のチャート:1時間足 6月以降
TradingView提供のチャートで作成
ナスダック100、注目のチャート水準
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