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【IG米国株レポート】 インフレ鈍化で高まる米株高のムード、次の焦点は米銀決算

6月の物価指標でアメリカのインフレが鈍化の傾向にあることがあらためて確認された。米債市場では2年債利回りと10年債利回り(長期金利)が低下し、米国株の押し上げ要因となっている。今日から米国市場は四半期決算シーズンを迎える。目先の焦点は米銀決算となろう。ガイダンスの内容が米国株のトレンドを左右する可能性がある。

出所:ブルームバーグ 出所:ブルームバーグ

サマリー

・6月の物価指標でアメリカのインフレが鈍化の傾向にあることが確認された
・インフレリスクと米利上げの長期化に対する懸念の後退で米金利が低下している
・米金利の低下は米国株の押し上げ要因となっている
・米株高がさらに加速するかどうか?目先は大手銀行の決算が焦点となろう


鈍化の傾向をたどるアメリカのインフレ

米労働省は12日に6月の消費者物価指数(CPI)を発表した。連邦準備制度理事会(FRB)が注視する食品とエネルギーを除いたコア指数が前月比と前年同月比でともに大幅に低下し、アメリカのインフレが鈍化の傾向にあることがあらためて確認された。

そして13日に発表された同月の生産者物価指数(PPI)でもインフレの鈍化が確認された。

アメリカのインフレ率:消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)の推移

アメリカインフレ率:消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)の推移 米労働省のデータをもとに作成 / 月次:2022年以降

短期金融市場では、年内にあと1回の利上げを行った後、FRBが今回の利上げサイクルが終了することを想定し始めている。一方、米債市場では、金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りが4.6%台まで低下している。10年債利回り(長期金利)は一時3.75%まで低下する局面が見られた。

これらの動向は、インフレ指標の鈍化を受けて投資家が抱く米利上げ政策の長期化懸念が後退していることを示唆している。

米金利のチャート

米金利のチャート ブルームバーグのデータをもとに作成 / 日足:年初来

目先の焦点は長期の期待インフレ率と米銀の決算

長期の期待インフレ率(ミシガン大学)

今日は7月のミシガン大学消費者態度指数(速報値)が発表される。市場予想は64.4(6月)から65.5に改善する見通しとなっている。先行景況感も6月の61.5から62.0へ小幅に改善する見通しである。

市場参加者の関心は、期待インフレ率に向いている。1年先の予想は3.3%(6月)から3.1%へ低下する見通しである一方、連邦準備制度理事会(FRB)が注目する5-10年先(長期)のそれは、6月の3.0%から横ばい推移の予想となっている。

6月のCPIとPPIでともにインフレの鈍化傾向が確認されたタイミングで長期の期待インフレ率が予想外に低下する場合は、「米金利の低下→米株高」の要因となろう。

ミシガン大学消費者信頼感指数と期待インフレ率の推移

ミシガン大学消費者信頼感指数と期待インフレ率の推移 ミシガン大学のデータをもとに作成 / 月次:22年以降

大手米銀行の決算

今日から米国の株式市場は、四半期の企業決算シーズンに突入する。まずは、大手米銀の決算が米国株の変動要因となろう。

今日はJPモルガン・チェース(JPM)、ウェルズ・ファーゴ(WFC)そしてシティグループ(C)がそれぞれ第2四半期(Q2)の決算を発表する。

今年3月に金融システム不安が発生した。しかし、S&P500種株価指数(SPX)は同月の13日に底打ちした(日足ローソク足で長い下ヒゲが示現)。それ以降、調整の反落を挟みながら上昇トレンドを形成している。

そして現在はテクニカルの面で、22年1月の高値4,817レベルと22年10月の安値3,490レベルのリトレースメント76.4%の水準4,504レベルをトライする状況にある。

S&P500種株価指数のチャート:週足

S&P500種株価指数のチャート IGチャート:22年10月以降

今日決算を発表する大手銀行の株価パフォーマンスを確認すると、S&P500種株価指数が上昇トレンドを形成して以降、いずれもプラス圏で推移している。

特にウェルズ・ファーゴとJPモルガン・チェースは13%超と二桁の上昇率となっている。

米銀行株のパフォーマンス

米銀行株のパフォーマンス ブルームバーグのデータをもとに作成 / 基準日:3月12日、7月13日終値時点の騰落率

今回の米銀決算の注目ポイントは

今年3月に発生した金融システム不安は、連邦準備制度理事会(FRB)の素早い対応やJPモルガン・チェースの救済策が功を奏し沈静化している。

しかし第2四半期の決算では、各行の純利息マージンが低下する見通しとなっている。そしてその傾向は続くと予想されている(チャートの赤ラインを参照)。

各行の受取利息の純額と純利息マージンの予想推移

各行の受取リスクの純額と純利息マージンの予想推移 ブルームバーグのデータをもとに作成/ 23年Q2以降はアナリスト予想


これから米国経済は、FRBによる急速な利上げ政策の影響が実体経済に波及することで景気が悪化する可能性が高い。また、各銀行(地方銀行も含む)保有している商業用不動産の価格が下落するリスクもくすぶる。このため今回の米銀決算では、各行がどのようなガイダンス(見通し)を示すのか?この点が焦点となろう。

Q2決算がアナリストのコンセンサス予想を上回っても、各行が景気懸念とそれに伴う収益の悪化を警戒する見通し(ガイダンス)を示す場合は、銀行株や景気敏感株を中心に調整の売り圧力が高まることが予想される。さえないガイダンスに加えて、上で述べた長期の期待インフレ率(ミシガン大学)でインフレ圧力の根強さが確認される場合は、米株高を調整する動きが強まる展開を警戒しておきたい。

一方、Q2決算が予想を上回り、かつ各行が収益について強気の見通し(ガイダンス)を示す場合は、インフレの鈍化を好感した米株高のトレンドをさらに加速させる展開が予想される。


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