最高値を更新し続けるS&P500とナスダック、その裏で細る株高のすそ野、不意打ちの急落を警戒
5月以降米国株は、グロース株の上昇が鮮明となっている。グロース株の買いに支えられ、S&P500種株価指数(SPX)は17日、最高値を更新した。一方、ハイテク株の比率が高いナスダック100(NDX)も連日で最高値を更新する状況にある。米国株は底堅さを維持しているが、その裏では不穏な動きも見られる。その動きとは?次に注目したいナスダック100の上値水準は?
この記事のポイント
・現在の米株高は、グロース株の買いに支えられている
・ナスダック100は連日で最高値を更新、節目の20,000ポイントが視野に
・一方、中小型の指数ラッセル2000はじりじりと株価の水準を切り下げる状況にある
・今週の小売売上高やPMI速報値が予想以下となる場合は、不意打ちの急落を警戒したい
グロース株の上昇に支えられS&P500は最高値を更新
17日の米国株は、主要な株価指数が上昇した。多くの機関投資家が運用のベンチマークとするS&P500種株価指数(SPX)は前週末比41.63ポイント(0.76%)高の5473.23で終え、2営業日ぶりに最高値を更新した。
株価を下支えしているのが、ハイテク株や半導体株に代表されるグロース株である。下のチャートを見ると、今年に入りS&P500グロース指数のパフォーマンスがバリュー指数のそれを常に上回っていることが分かる。
注目したいのが、5月以降の動きである。グロース指数の上昇幅が拡大する一方、バリュー指数の低迷が鮮明となっている。その結果、グロース指数とバリュー指数の比率が拡大している(下のチャート、赤ラインを参照)。
S&P500 グロース指数とバリュー指数の動向:年初来
ナスダック100、次の上値水準は?
グロース株上昇の恩恵を受けやすいのが、ハイテク株比率の高いナスダック100(NDX)である。
日足チャートでトレンドを確認すると、節目の20,000ポイントを視野に上昇トレンドを維持している。
しかし、米金利の上昇が抑制されている状況も考えるならば、ナスダック100は20,000ポイント台へ上昇し、フィボナッチ・エクステンション161.8%の水準「20,588ポイント」を視野に上昇幅の拡大を意識する状況にある。
ナスダック100のチャート:日足 昨年12月以降
反落局面での焦点は?
ナスダック100(NDX)が20,588ポイントをトライするシグナルとして、まずはフィボナッチ・エクステンション100%(N計算値)の水準20,124レベルの攻防に注目したい。
一方、下で述べる今週の重要経済指標が総じて予想以下となれば、景気の先行き懸念が株式市場で意識される展開が予想される。ナスダック100は連日で最高値を更新する状況にある。ゆえに、さえない経済指標は調整売りの要因と捉えられる展開を想定しておきたい。
ナスダック100の反落局面では、5日線(17日時点19,562レベル)と10日線(17日時点19,260レベル)の攻防が目先の焦点となろう。
時間足のストキャスティクスとRSIで相場の短期的な過熱感を追い、これらが買われ過ぎ(売られ過ぎ)の水準でデッドクロス(ゴールデンクロス)の状況にある時、ナスダック100が上で述べたチャートの水準をトライする場合は、反落(反発)へ転じる可能性を意識したい。
ナスダック100のチャート:4時間足 4月以降
じりじりと下値を目指すラッセル2000
S&P500種株価指数(SPX)とナスダック100(NDX)が最高値を更新する裏では、不穏な動きが見られる。それは、ラッセル2000(RUT)の下落である。
日足チャートで直近のトレンドを確認すると、5月15日を境にして反落相場へ転じていることが分かる。注目すべきは「2,120」の手前で反落し、この水準が重要なレジスタンスのポイントとして市場参加者に意識させたことである。
さらに注目すべきことが2つある。ひとつは、下落基調のトレンドチャネルを形成しつつあるということである。もうひとつは、50日線を完全に下方ブレイクしている状況である(下のチャート、青ラインを参照)。
ラッセル2000は中小型で構成されている。それゆえ、他の株価指数と比べて市場の変調を先取りする特性がある。ラッセル2000の下落幅がさらに拡大する場合は、近い将来S&P500やナスダック100が売りの圧力に直面するシグナルとして警戒したい。
ラッセル2000のチャート:日足 23年12月以降
細る株高のすそ野
また、ラッセル2000(RUT)の下落は中小型株から資金が流出し始めていることを示唆している。ゆえに今の反落相場は、株高のすそ野が細っている状況も示唆している。
この点は、S&P500種株価指数(SPX)のセクター別パフォーマンスも示唆している。年初来からの動向を確認すると、エヌビディア(NVDA)などの半導体株が属するInformation Tech(情報技術セクター)とアルファベット(GOOGL)が属するCommunication Services(コミュニケーション・サービスセクター)の上昇が突出している。一方、残りのセクターは横ばい、もしくは下落基調へ転じている。
ラッセル2000の反落相場に加え、セクター別パフォーマンスが歪な状況に陥っていることからも、現在のS&P500とナスダック100の上昇は、一部のセクターと銘柄で構成された不安定な土台の上で成り立っていることを意識しておきたい。
S&P500種株価指数のセクター別パフォーマンス:年初来
経済指標次第では不意打ちの急落を警戒
5月の小売売上高
今週、米国株の下落要因として注目したいのが、景気動向を考える上で重要となる経済指標である。
18日に5月の小売売上高が発表される。4月はガソリン価格の高騰で他の商品への支出が減少し、個人消費が鈍化した。しかし、5月は回復する見込みである(下のチャートを参照)。個人消費の回復が確認される場合は、株高の要因となろう。
問題は、4月に続き個人消費の鈍化が確認される場合である。このケースでは、景気の先行き懸念の方が強く意識される展開を想定しておきたい。ナスダック100(NDX)は上で述べたサポート水準を視野に反落する展開を予想する。
米国 小売売上高の動向:23年5月以降
6月の購買担当者景気指数(PMI)速報値
21日の6月購買担当者景気指数(PMI)速報値も米国株の変動要因となろう。現時点での市場予想は、製造業とサービス業の景況感が5月から若干ながら落ち込む見通しとなっている。
小売売上高と同じく市場の予想を下回る場合は、景気リスクを意識した米株安を警戒したい。
小売売上高とPMI速報値がともに市場予想を下回る場合は「不意打ちの急落」を警戒したい。
米国 購買担当者景気指数(PMI)の動向:23年5月以降
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